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2020年12月12日07:58

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住宅弱者を支える

住宅弱者を支える:4 路上から心安らぐホームへ
北九州市にある東八幡キリスト教会の牧師、奥田知志(ともし)(57)は、生活困窮者を支援するNPO法人「抱樸(ほうぼく)」の理事長でもある。この32年間に約3500人を路上生活から自立へと導いた。
 その奥田がよく口にするのが「ホームレスとは家がないのではなく、人との絆が切れた状態」という言葉だ。「路上からアパートに入っても、孤立したのでは意味がない。心安らぐHOME(ホーム)をつくるには、人との関係性を築く支援が必要だ」。奥田の信念だ。
 原点は30年前のひとりのホームレスとの出会いだ。保証人になってアパートを借り、生活保護もとった。だが半年もたたないうちに大家から「異臭がする」と呼び出された。行ってみると水道、電気などのライフラインは止まり、男性はごみに埋もれるように暮らしていた。
 なぜ? 考えるうち、自分も含めて誰も会いに行っていなかったことに気づく。「それまでホームレス支援とは、お金と家を何とかすることだと思っていました。あれからです。本当のホームレス支援が始まったのは」
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 2017年10月、そんな奥田が注目する「住宅弱者」への国の支援制度がスタートした。高齢者や低所得者、障害者、子育て世帯などを「住宅確保要配慮者」と位置づけ、一般にも貸せるが要配慮者を拒まない賃貸住宅を募って登録。入居時やその後の見守りなどの生活支援を行う団体を「居住支援法人」として都道府県が指定、国が運営費を補助する制度だ。
 それは、住宅という「ハコ」だけでなく、「生活支援」をセットで提供するという奥田たちの実践そのものだった。
 だが支援法人数は伸び悩んだ。2年目に入ってもゼロの県がいくつもあった。奥田は何とかしようと各地の法人に呼びかけ、昨年6月に「全国居住支援法人協議会」を立ち上げた。
 共同代表にと声をかけた1人が、生活困窮者支援で知り合った元厚生労働事務次官の村木厚子(64)だ。
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 声をかけられた村木は、20年前を思い出した。精神科病院に入院した人が長期にわたり病院にとどまる「社会的入院」が問題になる中、病院を出た人たちが普通に暮らすアパートがあると聞いて、山陰のある市を訪ねた時のことを。
 精神科で勤務していた医療スタッフが社会福祉法人をつくり支援していた。「よく大家さんが貸してくれましたね」と聞くと、スタッフは笑ってこんな話をした。
 「責任持って私たちが見守って近隣とのトラブルもないので、『もう一軒建てましょうか』って言われているんです」
 冤罪(えんざい)事件で164日間も勾留された経験があるからこそ、「普通に自分の住まいで暮らす幸せがわかる気がする」と村木は言う。
 「住宅弱者には、重度の障害者、児童養護施設を出た若者や刑務所を出た人もいて幅広い。地域に十分な支援をする法人があれば救われる人は大勢います」
 国土交通省によると、9月末の支援法人数は350。協議会はさらに支援法人のすそ野を広げるために採算のとれるモデルを構築しようとしている。当面の目標は1千法人だ。=敬称略(おわり)
 (朝日新聞11 月6日 神田誠司)


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