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2020年11月24日08:57

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キリシタン紀行 森本季子ー289 聖母の騎士社刊

紀州の秘境 龍神と教会ー2

紀伊田辺の教会でホーガン師と落ち合い、龍神村(和歌山県日高郡)へ向かったのは午後二時に近かった。師はこの道路を十年間、週に何回となく走っている。田辺〜龍神、一時間余を龍神小教区についていろいろ聞かせていただいた。
 龍神と言えば、終戦直後、「集団洗礼の村」として話題になった和歌山県の山村である。
 「十年前、私が龍神教会へ赴任した頃は七千人ほどあった人口が、現在五千人に減少している。青年たちの都会志向が年々多くなってゆく。したがって、信者数も減り、高齢化している」
 これは龍神に限らず、日本の僻地が直面している深刻な問題だ。都会に就職し、そこで結婚した青年たちが再び村に帰って定住することが殆どない。
 「村内での就職と言えば、役場や村営の施設ほかわずかで、南部や田辺への通勤者が増えている。また道路建設、架橋工事の作業員となっている。主婦は農業のほかにパートで働く」
 「でも、これだけの山に木があるのですから林業が盛んなのではないでしょうか」
 「それがね、外国から安価な輸入材が入ってくるため、良質で高価な龍神材の需要が少なくなってゆく」
 杉や檜に覆われた豊かな山の重なりを見回しながら、私は田辺湾の一角を思い出していた。そこは輸入材の貯木場で、ひと抱えもある丸太が長々と浮かんでいた。戦前には紀州奥地の良材が筏に組まれて、熊野川、日高川、有田川などの河川を下って、河口に集積されたものである。それが今では、東南アジアあたりから積み出される木材に場所を譲っている。
 入り組んだ山脚に阻まれて蛇行する川に沿い、道もまた曲折しながら奥へ奥へと続いている。道ばたの崖に卯の花がそよぎ、山藤が垂れ下がり、谷には桐の花も見える。いつの間にか、南部川が姿を消していた。
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