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2020年07月31日08:28

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(転載)中国・チベット女子一人旅−9


ゲストハウスに戻ると、昨日私を客引きしたここの息子が、カンゼゴンパ(甘孜寺)に連れて行ってあげる、と言ってくれた。
彼の名はゾンボ。私と同じか、一つ年上だった。ゾンボと幼なじみのローファンユンも一緒について来た。
甘孜の中心から少し離れた高台に、甘孜寺は建っていた。
中に入ると、チューメ(ヤクバターで燃える灯明)の濃厚なにおいに満たされている。
ラマがヘンな液体を手に注いでくれる。ゾンボとローファンユンがするのを見よう見まねで、その液体を少し口で啜り、残りを頭に撫で付ける。二人とも真剣なカオで仏の前に頭をつけ、手を合わせる。日本の仏教とは手の合わせ方が少し違う。右手と左手をぴったり合わせずに、少し膨らませて指先だけがつくようにする。親指は折り曲げて少し中へ入れる。手を蓮華の形にするのだ。
高台から甘孜の町並みが一望できた。ゾンボが説明してくれた。手前に見える、茶色い四角い家々が並ぶエリアは”解放”前、つまり中国が侵攻してくる以前からあった「老甘孜」。「老」という言葉は、中国語では良い意味だ。川沿いに白い建物が続いているエリアは、「花園」という名の、中国人が作った街。・・・「花園」の事を話す時のゾンボの顔は、露骨にイヤそうだ。
思いっきり降り注ぐ太陽の光が飽和している中を、汗ばみながら一歩一歩高台を降りると、今までに無いような息切れにチョット焦る。二人のチベタンは平然と、スイスイ歩いて行く。身体の構造がまるで違うみたい。さすがチベタン。すごいよチベタン。

夕方、ゾンボと一緒に、ゲストハウスの客引きに行った。・・・一日で去るつもりだったのに、あたし一体何やってんだろ?・・・と思ったけど、まぁいいや。
今日は、中国人記者6人をゲット。恰幅が良くて眼鏡をかけたリーダーを筆頭に、何だかみんな偉そうだ。でかいカメラバッグや、三脚も持っている。彼らを見てチベット人の乞食の子が寄ってきた。私にもまとわりついてきて、困っていると、眼鏡リーダーが私の代わりに小銭をやり、手であっち行け、と追い払うしぐさをした。
彼らは、チベット自治区を含む、中国西南部の風光明媚な場所を取材しているらしいのだけど、何となく傲慢に見えてしまうのは、私がチベタンびいきになっているからなのか?・・・中国人って、みんなそうなんだけど、必ず私に、「中国はどうだ?」と訊いてくる。幸い私は中国も好きだから、「いや〜とってもいいですよ〜」と答えるのだが、彼らの決まり文句、「どうだ?いいか?悪いか?」という訊き方が、ひじょーに押し付けがましいんだよなー。
そして、彼ら中国人記者たちも、そうやって私から「とても良い所です」という答を得ると、「そうか。良い所だろう。」と自慢げに笑った。
彼らの「自慢」の中には、チベット文化圏も含まれている。というか、ここはチベット文化圏だ。
・・・自分のもののように言わないでよね。と、思ってしまう私の心が狭いのだろうか。
ゾンボの顔色を伺った。中国人記者たちのの大きな荷物を持って、さっさとゲストハウスに向かう彼の横顔は無表情だった。

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