体験者のこうした言葉から、「漢」なのか「蔵」なのかという点こそが身分証チェックの目的だと分かる。ただ「蔵」というだけでラサはとても不便な場所になる。「漢」であればラサは楽しい遊園地になる。「蔵」と「漢」、軍警の関係からも分かるのは、チベット人はこれを避けようがなく、嫌悪感で胸がいっぱいだということだ。一方、漢人は安全だと感じ、武装警察に誘われて警備車両でドライブもできるし、治安維持の軍警とともに火鍋を食べ、酒を飲み、カラオケで歌い踊ることもできる。
「蔵」と「漢」の区別はラサの地理にまで現れている。基本的にラサの東部と西部はそれぞれチベット人居住地と漢人居住地の代名詞になっている。建築から商業、言語などで明らかな区別があり、特に軍警の密度や権利の損なわれる程度に大きな違いがある。
国連安保理は1970年代の決議で、アパルトヘイトについて「人類の良心と尊厳に対する犯罪」だと述べている。しかし、この世界はチベット全土の状況を目にし、チベットの中心都市ラサの状況を目にしているというのに、アパルトヘイトを採用していた国家と政府にかつて見せた抵抗を忘れてしまっているのではないか?
当局はアパルトヘイト方式でチベット人を徹底的に調べ上げ、排除することにより、焼身抗議を撲滅できるだろうか?今年3月30日にバルカム(四川省アバ州マルカム県)で焼身抗議した僧侶チメ・パルデンは昨年ラサを巡礼した。だが、携帯電話に尊者ダライ・ラマの写真データを保存していたため、軍警に1カ月以上拘束されたのだった。
2012年6月13日 (RFA特約評論)
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