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2020年03月13日09:00

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キリシタン紀行 森本季子ー66 聖母の騎士社刊

私の奄美紀行ー30

●或る葬儀
 「お昼は私どものところで」
 ということで、シスター川岡の車は福音の光修道院に到着した。大熊教会敷地内にある木造二階建の質素な家である。大熊の信者が、これも信者である大工さんの指揮のもとに、寄ってたかって建てたのだという。
 「修道会では材料費を提供しただけで済みました。ユイワクの協力ですね」
 と言われたが、ユイワクとは何のことか私にはさっぱり分からなかった。これが奄美の美習であることを知るのは、しばらくしてからである。
 泥付きの野菜が入口にあるのを見付けて、
 「あら、また信者さんが置いていらした」
 と、シスターが片付けた。これは殆ど毎日のことだそうだ。信者は野菜畑から何でも運び込む。留守に冷蔵庫を開けて鮮魚を押し入れてゆくこともある。時には彼らの持ちこむ季節野菜が食べ切れない。シスターズはそれをまた畑の無い人や老人たちに分配して歩く。入口の鍵は夜以外は掛けない。
 或る日大きなキャベツが届いていた。三人には大き過ぎるので、家族の多い家へ配達に出かけた。途中でジャンボなキャベツを持った信者に出会った。
 「シスター、そのキャベツは小さいですね。これを持っていきなさい」
 いきなり押し付けて行ってしまった。
 「説明も出来ず、笑うに笑えず、持って出た倍もあるようなキャベツをかかえて戻って来ました」
 こんなほのぼのした話を、お茶漬けをすすりこみながら聞かせてもらった。

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