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2020年01月29日08:57

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キリシタン紀行 森本季子ー28 聖母の騎士社

●青砂ヶ浦教会

 奈摩湾の彼方に矢堅目埼の灯台を眺めながら湾に沿って青砂ヶ浦に出た。教会に到着したのは十二時過ぎ。赤レンガの高い屋根の下に「天主堂」と白い文字が掲げられている。カトリック教会が天主公教教会と呼称された時代を思い出させる建物だ。ちなみに、五島の観光地図には教会所在地が堂崎天主堂、大曾天主堂というように記載されているものが多い。五島こそ、教会というより、天主堂という時代の貫禄を持っている。

 青砂ヶ浦教会は明治40年(1907)の着工、同43年には落成している。着工時の信徒戸数約50戸に比べて非常に早い竣工である。この中通島最大の教会は青く静かな奈摩湾に面した丘にそびえている。五島には高い山は無いが、山地が多く、丘陵は海岸に迫っている。漁業で生計を立てる信徒は狭い海辺や丘のすそに住む。従って、教会は丘の中腹に建つ。五島の海岸はどこも美しい。白亜や赤レンガのゴシック教会はその中にあって一幅の絵をなしている。

 青砂ヶ浦のキリシタンが自らを現したのは明治5,6年で、上五島の迫害が終わる頃である。それでも彼らは捕縛、拷問を逃れることは出来なかった。

 この教会で私たちは非常に美しいものを見た。午後の強い陽射しはステンドグラスを通して堂内を五色に染めていた。深緑色のじゅうたんの床に、ステンドグラスの絵模様がそのまま映し出されている。この聖堂で唱えたロザリオの声は色ガラスの光に吸い込まれてゆくかのようだった。

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