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2020年01月20日09:04

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キリシタン紀行 森本季子ー19

●奥浦・慈恵院

 ミサ後、予定には入っていなかったが、近くなので奥浦の慈恵院に立ち寄った。近くなので奥浦の慈恵院に立ち寄った。お告げのマリア会シスター方による養護施設である。

 パリ外国宣教会のマルマン神父は間引きを防ぐため、明治十二年奥浦で養護施設をはじめた。嬰児殺しを罪悪とも感じなかった当時、日本の最果てとも言える五島で、生命を大切にする福祉事業が芽生えたのだった。これを受け継いだのが「女部屋」の「姉(あね)さん」たちであった。現在のお告げのマリア会の前身である。

 M師から連絡があったものと見え、こちらのシスター方は蒸しパンを作って待っていた。十二時近くだったので一同感謝していただいた。シスターの一人が「大変おいしいのでもう一切れいただきます」と、手を伸ばした。「私も」「私も」という声があちこちにあがった。
 「さあ どうぞ どうぞ」
 もてなし側もニコニコである。

 この慈恵院は奥浦湾を眼下に見下ろす小高い丘の上に建っている。この湾は先ほど美しいと眺めながら渡ってきた。が、この慈恵院からの絶景は息をのむばかりである。昭和四十四年十月、天皇、皇后両陛下ご来島の際、慈恵院にお立ち寄りになった。
 「陛下が『ほんとうにきれいな眺めだ』とおっしゃってご覧になっていらっしゃいました。その場所も丁度ここの窓からです」

 という説明があった。この海の輝く青さ、その中に浮かぶ遠近の島、岬や入江にじっとお目を注いでおられる陛下のお姿が想像される。日本の西の果てにこのような美しい自然があるのを満足に思われたことだろう。

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