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2020年01月18日08:17

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キリシタン紀行 森本季子ー17

 再び山間の道を通って田の浦へ引き返した。船着き場近くの丘に立派な教会がある。特徴ある塔はスペインあたりで見かけたものに似ている。昭和初期の建築で、完成当時は白亜の美しく目立った教会だった。が、戦争中に迷彩をほどこして汚してしまった。その跡が今に残っている。四十年の風雨がかえって建物に古めかしさと重味を加え、渋く納まっている。戦前は久賀島のあちこちの入江や近くの島々から小舟を漕ぎ寄せ、日曜のミサには千人ほどの信者が集合していたという。

 私たちはこの浜脇教会で”日本聖殉教者”の賛歌を歌った。

 雄々しくもいさぎよき
 強者(つわもの)は主のため
 その生命(いのち)捧げたる
 いさおしぞとうとき

これこそ久賀島で声張り上げて歌う賛歌である。古風な歌詞も格調高く、この教会に調和している。皆の胸にはつい先ほど巡礼したばかりの「牢屋の窄」が生々しく息づいている。

 帰りがけ、教会の庭に穂を立てていたパンパスグラスを一つ抜いて記念に少しずつ皆で分け合った。この穂先の一部が、今も本棚の間から久賀島巡礼の思い出を語りかけている。(中略)

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