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2019年09月22日06:48

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1985年 ジャマイカ旅ー6

誰かが食後のガンジャを始めた。香ばしい香りが流れてくる。深夜のサウンドシステムからの帰り道、ガンジャ売りにしつこくからまれた挙句、ナイフで脅され、同行のジャマイカンがやはりナイフで応戦している間に逃げた話。同じく夜間に警察のジープに止められた際、マシンガンを突きつけられてホールドアップした話。また白昼のキングストン市内で、突然車から降りてきた刑事たちにピストルを突きつけられて、やはりバンザイをした話。こんな怖い体験を、毎日のように同宿の日本人,S君から聞いていた。だから、ラスタマンとの旅が無事に済む訳が無い、という嫌な予感がした。だから、とりあえず、一番無難そうな温泉行きに決めた。(こんな暑い国で、温泉なんかに興味は無かったが)

シャブロック・レコードのジープでキングストンの街を出発したのは昼頃だった。大昔のランドローバーで、緑のボデイに派手な絵が描かれて、乗るのが恥ずかしいような車だ。ボンネットにはセミ・ヌードのエロティックな美女、フロント・グリルにはウインク目玉、その上あちこちにラスタ・メッセージや会社のロゴが自己主張している。(これでは、「お巡さん、寄っといで」と挑発してるようなもんだ)と内心青くなった。マジ、先が思いやられる。

用も無いのに乗り込んだ連中(多分、ボディガードなんだろう。とにかく彼等はどこに行くにも満員状態で走り回る。夕方、ホテルに送ってくれた時も彼等がいた)も含め、運転席に3人、後部座席に6人(日本人3人、オーストリア人1人を含めて)乗り込んだのはいいが、セルを回してもエンジンが掛からず、とうとうバッテリーが上がってしまう。荷台の連中が降りる。通りの人々も集まってくる。みんなで気合をこめて押した。一回目、全然駄目。二回目、パン!パン!とマフラーが叫んだが駄目。10人以上で必死に押した。掛かりそうだが、掛からない。やっとエンジンが回り始めた時には、最初の場所から、随分離れてしまった。(その後、ドライバーがドアを開けてハンドルをつかみながら、一人で押し掛けしている光景に何度か出会った。バイクじゃあるまいし、と呆れたが、一人でも結構エンジンが掛かるようだった。恐るべし、ジャマイカン・パワー!)

車が走り始めると、穴の開いたエキゾースト・パイプから「バリ!バリ!」と凄まじい爆音がした。ペインティングがど派手で、おまけに騒々しい車だった。ドライバーはさっきまで派手にガンジャをスパスパ吸っていた長身の若い男だ。岩に当たりジープがジャンプして、荷台の連中が転げ落ちそうになっても、気にしないで飛ばしまくる。エンジンが止まるのを恐れてでもいるように、とにかく回転を上げっぱなしだ。カーブでも下り坂でも、猛スピードで突進する。哀れなのは、屋根が無い後部座席の連中だった。鉄枠に必死につかまって、振り落とされないよう頑張っている。前の席の僕が心配して言った。「S君、T君、大丈夫?顔が青いよ」「いやー、ジャマイカ風のドライブは最高!」と痩せ我慢の声が返ってきた。

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