mixiユーザー(id:1762426)

2019年08月25日10:17

166 view

蟻の街の子供たち 北原怜子(きたはらさとこ)−101

聖母文庫 聖母の騎士社刊

 その翌日の二十八日には、蟻の会の子供たちは、浅草教会から贈られたクリスマス・プレゼントを、何一つ自分たちのものとせずに、上野の葵町にいる靴磨きなどをしている可哀そうな孤児たちを慰めるために、慰問に出かけました。
 二十九日にはメルセス女子修道院から贈られた数々の慰問品を受け取りに、わざわざ高円寺まで出かけて行きました。やがて子供たちは、外地からの引き揚げのように背中に、頭が見えなくなる程、うず高い荷を積み上げて帰って来ました。しかし、どの子供もその品物を自分たちがもらうという気持ちはなく、より困っている人たちに贈ることに夢中になって、その晩はその整理に遅くまで余念なく従事しておりました。
 越えて正月の二日になると、隅田公園の中で野宿している気の毒な浮浪者を助けるために、「蟻の街」の子供会はクリスマスやお正月に贈られたお年玉やクリスマス・プレゼントをすべてお雑煮にかえて、一人一人配って歩きました。子供たちが嬉しそうに茶碗を洗い、お餅を焼き、各自が持ち場持ち場の仕事に専心している姿を、私もそっと群衆の後ろから見学しました。
 その月の三十日には、救ライ運動を応援するために蟻の会の子供たちは、自分たちが拾い集めたわらの売り上げ金五千円を、安井東京都知事の手元に届けました。
 私はわずか一年の間に、よくもこれだけ成長してくれたとほんとうに嬉しくなりました。それと同時にもうこの蟻の会の子供たちは、私などに頼る必要がなく、立派にひとり歩きができるようになってきたことが、はっきり感じられました。

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する