文春オンライン 2018年5月
(13)チョ・ミヨン(42歳・女性)
国境近くに住む男性から、平壌の工場で働く親戚の女性への電話。
──最近、暮らしはどう?
「どうやってよくなるの? 大変よ。制裁のせいで物価が上がるし。ガソリンが上がったから、3台あった工場の通勤バスが1台に減ったのよ。燃料の心配、食べ物の心配。10日分の配給で、ひと月暮らさなきゃいけないんだから。最近は、地方のほうが暮らしやすいんじゃない?」
地方は配給が途絶えて久しいが、平壌ではまだ出ているようだ。
──核やミサイル実験をどう思う?
「国防にたくさん投資するから、こんな生活になっているのが現実じゃない?」
──金正恩同志をどう思う? おじいさんやお父さんと比べたら?
「なぜ急にそんなこと聞くの? これ、盗聴されてない? 勝手なことしゃべると、追放される心配があるの。平壌は怖いのよ」
──金正男氏暗殺を聞いた?
「知らない。報道しないから。殺されたの?」
チョさんはこの後、金正男氏殺害事件に関心を持ち、逆に質問を重ねてきた。こうしたニュースは、地方に住む人のほうが詳しいのだ。
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