文春オンライン 2018年5月
(6)パク・スジョン(16歳・女性・高校生)
電話をかけると、「ヨボセヨ!」とあどけない声が聞こえてきた。方言もアクセントも、北朝鮮の住民にしてはひどくない。
──核実験とミサイル発射について学校の先生はどんな話をする?
「我が国の誇りだと自慢気におっしゃっています。私自身も、かなり誇りに思っています」
──核開発にかかるお金で北朝鮮の住民1年分の食糧を配給できると言われているけど、食糧事情もよくないのに核実験するのが望ましい?
「私たちの国は弱いから、核を保有していれば強くなるんじゃないでしょうか」
──アメリカとの間でかなりの緊張状態だが、どの程度危機感を感じているのか。
「私たちは怯えないし、戦争が起これば無条件に勝つと思っています。我が国は、軍事力が強いと思うんですけど……」
外の世界の情報に接することのできない北朝鮮の高校生としては、普通の認識かもしれない。
──金正恩委員長について、親しい友達とどのように話すのか。
「父のような存在だと思います」
──悪く言う人はいない?
「なぜ悪く思うのですか?」
質問の意味が理解できないようだった。
──金正男氏が海外で暗殺されたことは知っている?
「いま初めて聞きました」
──(事件の概略を簡単に説明し)どう思う?
「過ちをしたら、罰を受けなければならないでしょう。何かが間違っていたから、元首様からそのような命令が下ったのではないでしょうか」
驚く気配もないのは、公開処刑がよくあるせいかもしれない。
──流行の物や欲しい物は?
「携帯電話です。クラスは30人ですが、5人ほどが持っています」
この通話は、知人の携帯を借りているのだそうだ。
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