文春オンライン 2018年5月
アメリカの犬豚野郎
(3)チェ・ウンシル(55歳・女性)
「私は主婦です。夫は自動車の運転手です」
──核実験やミサイル発射をどう思うか。
「テレビで見ましたけど、とても嬉しくて素晴らしいことですよ。私たちは、金正恩元首様のお言葉通りに従います」
──核開発の費用で食糧配給をしてくれたほうがいいとは?
「家で家事をする者は、そんなことまで考えていません」
──アメリカと北朝鮮の間で、緊張が高まっているが……(ここまで話すと、まだ質問が終わっていないのに、彼女は声のトーンを高めて興奮しながら、アメリカの悪口を言い始めた)。
「アメリカは本当に悪いヤツです。私の前にいたら、ズンと踏んで殺したいです。おばさん同士で『アメリカの犬豚野郎ども』と話します。戦争したって、我々はびくともしませんよ。金正恩元首様がいますから、心配ありません。だから私たちは、市場に出て商売して食べていくことだけに神経を使っています」
北朝鮮政府の「我々が困窮するのは、すべてアメリカの経済制裁のせいだ」という宣伝が、浸透しているようだった。
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