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2019年03月28日07:50

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閔妃(ミンピ)暗殺(朝鮮王朝末期の国母)角田房子著 新潮文庫ー17

(※は本文より転載)

大院君(是応)、権力の頂点に

(新王奉迎の正使は、先王哲宗の時と同じく鄭元容が任命された。彼は第一級の輿(こし)行列をととのえて、慶雲洞(キョンウンドン)にある李是応の邸へ向かった。
 広い敷地に囲まれた是応の邸は、かっての王族らしい暮しをしのばせる構えではあったが、そのすべてが荒れ果てて、見るかげもない廃屋のつらなりと化していた。軒は落葉の重みに耐えかねて傾き、幾棟かの建物をつなぐ渡り廊下はごみとほこりにまみれて、長年の貧苦を露呈していた。この広大な邸で、人が住んでいるのはわずか数室にすぎなかった。
 背は低いがかっぷくのいい是応はその一室に端然と坐(すわ)って、王宮からの正使を迎えた。古ぼけた調度品のみすぼらしさも、壁一面に浮き出たしみも、使用人の余りの少なさもいっさい意に介さず、是応はすでに王の実父にふさわしい威厳を身につけていた。この日、彼の胸中には歓喜が渦巻いていたはずだが、尊大に構えたその表情はあくまで静かであった。 
 このとき命福は、庶民の子供たちと一緒に裏庭で凧(たこ)揚げに興じていた、と伝えられている。何も知らされていない彼は彼は、母に呼ばれてしぶしぶ家の中にはいった。この時を境にして命福は、子供らしく遊びたわむれることはもとより、意のままに振舞う自由のいっさいを失った。
 邸の周囲は、すでに命福が王位につくことを知った群衆にとり囲まれていた。彼らにとって好都合なことに、広い敷地を囲む塀(へい)はあちこちが崩れ落ちて、廃屋の前に粛然と並ぶ美々しい服装の廷臣たちを存分に眺(なが)めることが出来た。やがて彼らの見守る中を、命福を乗せた輿は静かにかつぎ出され、”国統入承”を祝福する沿道の人々の歓声を浴びながら進んで、やがて昌徳宮の敦化門(トンファムン)をくぐった。

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