1週間前のハナキンは関東地方だけ雨降りのやけに寒い日だった。
その晩、僕はコートを着てった方がいいわよというカミさんの忠告を無視したことを後悔しながら、待ち合わせ場所の高田馬場の駅に降り立った。
この5月に台湾旅行を共にした前の会社の同期連中と約束してたんでね。
僕らは三人とも関東地方で二番目にハイブランドなのだ、これでいいのだと認定された学校とはまったく縁がなかったけど。
それでも都の西北に集結した。
駅近に隠れ家的な個室のある居酒屋がある、けっこう安いってんでね。
で、マップがいい加減で店に辿り着くまで行ったり来たり彷徨ったので、雨に濡れて芯まで冷えてしまい、熱燗を呑みながらだべったわけだけど。
その中の一人、還暦になったのを機にサラリーマンを引退して、家事手伝いを本業にしているやつがさ。
来月、大連に旅行に行ってくるという。
大連?あの中国の?大東亜共栄圏っぽい大時代なネームだけど
なんか、最近はビッグアップルなシティになってるらしいね。
で、僕らは聞いた。「カミさんも一緒に行くのか?」
そいつが首を振った。「いや、あんただけで行ってと言われたので男一人旅だ」
僕らは大きく頷いた。「うむ、いっつも家にいるうざいのと旅行まで一緒に行くわけがない、人として当然だ」
それはそれとしてさ、と僕が熱燗をぐい飲みしながら言った。
「あの国は怖い。お前、拘束されるなよ」
「なに言ってんだよ、軍事施設を撮影でもしない限り大丈夫だよ」
「いや、港にスマホを向けただけで逮捕ってありえんだろ」
そういうことで、僕は香港の人たちを応援する。
やっぱさあ、中華人民共和国は香港の民を圧殺にかかってるのがありありだからねえ。
あるいは台湾の総統選だ。僕は別に艦娘(カンムス)の霧島に激似っていうウワサだからひいきするわけじゃないけど。
やっぱりこの人の言うことがセイロン諸島だと思う。
そんなことで、あの国の体制はまったくいただけない。
内政に干渉するなって、どの口がいうかあ!だよ
まあ、都合の悪いことをもみ消しまくりの政権を選んでる国の民が言うことじゃないかもしれないけどね。
それに中国に住む個々の人らは別だ。
そういうのはさ、新聞やネット記事を見るんじゃなくて、実際にその個々の人に接しないとわからないと思う。
僕の場合はそういう機会があった。
中国のJD(女子大生)がうちにホームステイしてくれたことがあってさ。 いろいろダベッたことがあるんでね。
チャイナJDは日本のアニメと村上春樹が大好きないい感じの女子だったよ。
なんで彼女らがクールジャパンを知ってるかというと、かの国の若者はこのサイトを友にしているからだ。なので、京アニの悲劇にもビビッドな反応があったそうだ。
なので、アニメもかなり進歩してるよ。
去年の夏にテアトル新宿で見たこれなんか、なかなかのものだった。
新海誠を真似っこしてるのは見え見えだったけど、それはまあね。 芸術は模倣から始まるのは古今東西のことだから。
そんなことで、香港の人らが中国にノー!を突きつけた選挙結果が一面トップを飾った日
僕らはこの夏に本家新海誠の新作を見た街、池袋に再び赴いた。
池袋はねえ、すごいよ。
なにがすごいって、若者ばっかり。 若いのの波、波、波。 そして、響き渡る嬌声。
僕はそれまで若者の街と言えば渋谷だと思い込んでいたけど、今どきは池袋なことを実感させられた。
一緒に歩いていた巨乳派曰く 「渋谷が年寄りの街に思える」
そうやって僕らが若者の群れの中をかきわけるようにして辿り着いたのはこの映画館だった。
これはかなりユニークな映画館だよ。
例えばマスコットガール一つとっても。
TOHOシネマズがこの娘なのに対して
ヒューマックスは夜子・バーバンクというオッドアイのナゾのキャラクターなのだ。
そのヒューマックスがこれを上映してくれたのだ。
いや、違った、その隣のポスターだった。
これだ。
去年、新宿で見た新海誠似の「詩季織々」が日中合作だったのに対して、こっちは純粋なメイドインチャイナ。
で、これが上出来だった。
ポスターから想像していたような単なるかわいい黒猫の話ではなくて、古来森を棲家にしてきた妖精族対その森を切り開いて都市を作る人間族の物語でね。
勧善懲悪的ではなくて、妖精側にも人間側にも徹底抗戦派と共存の途を探る派がいて、錯綜した構成をとっている。
やるじゃん、中国って感じなんだよ。
ただし、こないだ見たフランス映画のようにまったく異質なものに接したカルチャーショックはなかった。
これまた巨乳派曰く 「年下の従兄弟みたいだ」
つまり日本のアニメをあちこちから持ってきてるんだよ。
この仙術の激突なんかは
僕ら三人ともドラゴンボールだ
と思ったし
総帥はラストに登場するブラックホール的な世界をアキラとみて
巨乳派と僕はディラックの海を想起した。
そして森の描き方はジブリだった。
それらの日本の技が巧みに織り込まれていてね。
安心して楽しめる具合だったんだよ。
そのジブリには感謝だ。
このアニメ集団は阿佐ヶ谷に二つのミニシアターを展開している。
こないだ僕らはそのうちの一つ、ユジク阿佐ヶ谷にフレンチカルチャーショックを再見するために訪れた。
そこのロビーでこのポスターやチラシを見かけて、これよさげだなと話し合ったんだよ。
残念ながらユジクの席は完売だったんだけど、総帥が池袋で上映が始まったのを見つけて、火曜の夜に至ったわけだ。
音楽界にはこういう格言が存在するけど
今やアニメ界では西でなくて関東の片隅の阿佐ヶ谷から新しい風が吹きおこる。
マイマイ新子旋風を呼び起こしたのはユジクの兄貴分のミニシアターだったし
ユジクからはフレンチや中華の新しい風が発信されている。
火曜の朝の出がけのうちとこの夫婦の会話。
「今日は中華アニメを見に行く」
「よくそういうのを見つけてくるわねえ」
「俺たちには総帥がいるからな」
「その人に感謝しなさいよね」
で、僕らは満足して映画館を後にすると、池袋のサイゼに入った。
さすが若者の街というか、そこには妖精みたいに色とりどりの髪の毛の娘たちがわんさかだった。
で、僕らはマグナムの白でカンペイして、キャンティの赤で締めたのだった。
僕にとってはこの晩はJDのホームステイに続いて刻んだ近づくための一歩だった。
ニール・アームストロング曰くの一歩だ。
中国というのはどうも近いけど遠い存在なんでね。
台湾は大分近いんだよ。
家族と1回、友人と1回の2回、現地を訪れているし
ついこないだはDK二人にホームステイしてもらって、新海誠や村上春樹で意気投合できたしで。
中国に羅小黒(ロシャオヘイ)あらば
台湾には羅小白(ロシャオバイ)ありなことも知っている。
知ってる? 近頃話題のこのストリートドラマー娘。
【神技】中国4000年の神ドラマー【羅小白】
https://www.youtube.com/watch?v=Wkh5H7wQ8PU
まあ、神技というのはスティックを宙で回転させる辺りのことで、ストリート的にはウケるだろうけど。
ドラムの腕前そのものはこの日本娘の方が一枚上だと思うね。えっへん
ジョン・ボーナムばり。チャーも民生もびっくりだよ。
よよかの部屋 Good Times Bad Times - Live (LED ZEPPELIN Cover)
https://www.youtube.com/watch?v=rDva1QW3VCA
まことにこの世は少女の時代だ。
って、近くて遠い中国のことだった。
僕は拉麺も餃子も炒飯も好きだけど、それらは日本人好みの味付けになっていて、本場のものとは大分違うのだろうと思う。
ちょうどこれみたいなものだ。
荒井由実 チャイニーズ・スープ
https://www.youtube.com/watch?v=2XMranZCg9w
中国の国技ともいえるテーブルテニスもこの娘の応援を主目的に見ているに過ぎないし
かの国を代表する美人女優も日本のCMやハリウッドのGodzillaでしか見たことがない。
デモの合言葉を生み出した武闘家も英国領時代の香港人だったし
往年のアイドルも然りだ。
MAOの伝記も美国人の著作で読んだし
大好きな百裂脚の娘も日本のゲームメーカーの作だ。
自分が知ってる中国のことはどうも借り物が多くてねえ。
こないだ高田馬場の仲間と台湾に行ったとき世話になったこの航空会社は中国のものだけど、本国から香港デモの責任を問われて酷いことになってるそうだし。
どうもアンバイがよくない。
チャイナシンドロームで、北京の蝶が羽ばたくとニューヨークで嵐が起きて、ハクビシンを食用にするなんて信じラリルレンなのだ。
そういう中で、中国を舞台にした人間の自然破壊の愚かさを問う内容のアニメが実際に破壊しまくりの中国で制作・公開されたことには心強いものがある。
ということで、締めのナンバーだ。
この日記のタイトルはこの短編集からもらった。
その物語の冒頭にはこういうフレーズが置かれている。
中国行きの貨物船(スロウ・ボート)に
なんとかあなたを
乗せたいな、
船は貸し切り、二人きり・・・
−古い唄
その古い唄を鮮やかに蘇らせたプレイ
ピアノーケニー・ドリュー、ベースーパーシー・ヒース、ドラムーアート・ブレイキー
そしてメインのテナーサックスがソニー・ロリンズだ。
イカシてるぜ。
Sonny Rollins Quartet - On a Slow Boat to China
https://www.youtube.com/watch?v=RRCfsZWRA_U
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