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2017年02月25日19:11

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男だけと女だけの世界

1週間前の日曜日、ヲタ仲間の巨乳派とまたしても映画館に繰り出した。

TOHOシネマズ梅田で待望のこれが掛かってたんでね。

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言わずと知れた伊藤計劃の代表作の映画化作品だ。 といっても、この夭折した作家をご存じない方もいると思う。

「虐殺器官」の凄みを知ってもらうには、文庫本の帯にある錚々たるメンツ、伊坂幸太郎や宮部みゆきの寸評を読んでもらうのが手っ取り早い。 これね。

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僕も彼が没してからこの文庫本を読んで衝撃を受けた。2011年6月のことだ。

なんでそんな年月までわかるかというと、例によってmixi日記を書いたから。

ちょっとだけ抜粋すると、こんな感じだった。

2011年6月の日記 「凄い作家、伊藤計劃」より
伊藤計劃(けいかく)という作家をご存知ですか。
1974年生、2009年没。 享年34歳。 小説執筆活動は晩年の2年だけ。 
その2年の間に凄い小説を2作世に送り出した。 
正確には3作かな。 オリジナルの2作の他にゲームのノベライズ「METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS」を上梓している。 僕はゲーム関係は疎くて、メタルギアも門外漢だけど。 今週、オリジナルの長編小説2作を読んだ。これが二つとも凄かった。
「虐殺器官」    早川文庫   2007年6月単行本として刊行
「ハーモニー」   早川文庫   2008年12月単行本として刊行

虐殺器官そのものも同じ日記をうんときりつめて紹介するとこんな感じ。

舞台は近未来。 主人公は米国人クラヴィス・シェパード大尉。 シェパードはデルタフォースっぽい軍の凄腕。 彼のターゲットは”ジョン・ポール”と名乗る人物。 ジョン・ポールは世界中の発展途上国を渡り歩く米国人。 彼が現れた国では必ず内戦が起こり、自国民の虐殺が始まる。 果たして、ジョン・ポールとはいかなる人物なのか。 何故、彼が訪れた国では大量虐殺が起きるのか。

まあ、こんな話です。 これだけだと、なんかねえ、ふうん、そおっていなされちゃいそうだけど。 ちょっと待って。そもそも、この種の国際謀略小説をきちんと書けた作家がかつて日本にいただろうか。いないね、僕が知る限りは。落合信彦辺りにもうちっとだけでも文才があればねえ。
 
「虐殺器官」の凄いところをいくつかあげると。
まずはその世界観と構成力。 この小説はSF小説に分類されているけど。 あくまで今の現実の延長線上の世界をフィクションとして描いている。 で、その構成がやけに緻密なんだ。 こういうのって、漫画やアニメの世界ではときおり見かけるけど、小説界では希有な例だと思う。

それと表現力。 この作品は一人称の小説。 主人公のシェパード大尉はなんと”ぼく”という一人称で語っちゃうんだよ。 で、”ぼく”という一人称が表わす通りの繊細な感情の持ち主なんだ。 一方で、舞台は”虐殺器官”のタイトル通りの凄惨な世界。 しかも、”ぼく”はその道のエキスパート。 この”ぼく”というナイーブな世界と”虐殺器官”のハードな世界を破綻なく両立させる表現力は半端じゃないと思うよ。

ちなみに、本作に日本人は登場しない。 普通はね、なんか必ず出てくるじゃないですか、日系人とかなにか。 この手の世界をまたにかけた話を日本人が書くと。 ”虐殺器官”にはそういうとってつけたような”日本人”は一切出てこない。 すっきりしてる。


ちっと長かったかもしれないけど、以上が伊藤計劃を初めて読んで興奮した当時の僕の感想です。

それがアニメ化されるという。 見ねば!でしょう。

で、アニメを愛する仲間に付き合ってもらって映画館に赴いたわけだ。

上映館はTOHO本体でなく、わきっちょにある別館だった。 なんか虐げられてるなという感否めずだったけど、狭い館内は熱心なファン、若者たちで満員だったよ。

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見終わった感想は。。。

巨乳派は満足。 僕もそれなりに満足はしたんだけど、それでもこうパンチ力が今一つとゆう感じだった。

それは伊藤計劃の原作を読んだことのない彼とゾッコンの僕の違いに起因すると思う。

僕の場合、原作にベタ惚れな分、期待がでかかったんでねえ。 せっかく映像化してくれたスタッフの皆さんには申し訳ないけど。


あと、もう一つはもしかしたらアニメファン特有の心理が作用したかもしれない。

なにかというと、女性キャラがイマイチだった。

いや、虐殺器官にはこういう美女が大事な役回りで登場するんだけど。

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一言でいうと、萌えなかったんだよ。

この萌えという要素はアニメにとっては極めて重要なんだ。

巨乳派はそのニックネームの通り、女子キャラに対する感性が豊かで、たとえその部位が大きくなくとも萌え力が強いので満足できたのかもしれないけど。

僕はどうも彼女ルツィア・シュクロウポヴァが平板なキャラに映っちゃってねえ。

その点、同じ伊藤計劃の作品でも、「ハーモニー」はなにしろ女子の世界を描いていたので、アニメ化に適していたと思う。

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実際、アニメの世界は他のジャンルに比べて圧倒的に女子の魅力が成否を左右する。

それどころか、女子だけしか登場しない作品を臆面もなく作る。

今期放映中のものでも、スクストはやけに似たようなタイプの女子をわんさか出してくるのに男は影もかけらもない。

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けものフレンズも然りだ。

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ガヴリールや鎌チャリは、しょうもないワキにちょこっと男が出てくるけど、これらも基本は女子力だけでもたせてる。

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ちょっと古いところでは、朝野を揺るがせた大ヒット作のけいおん!もJKとその妹たちだけの話だった。

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こういうのは、なかなか実写映画の世界では難しいと思う。

アニメの場合はね、これは女の子だけの世界なんです、男はいらないんですという都合のよいお約束があっけらかんと成り立っちゃって、誰もそれに違和感を持たないどころか。

ファンもいいじゃん、そっちの方がいいじゃんになるというお得な世界なわけだ。


一方、洋画の世界では、舞台に出てくるのは女だけというのはまだ登場してないと思うけど。 男だけの世界というのはけっこうある。

代表的なのは「大脱走」だ。

マックイーン、コバーン、ブロンソン、ガーナー、アッテンボロー、マッカラムetc.

その他大勢も含めて見事なまでに野郎だけで成り立っていた。

それでもむさくならなかったのは、内容はけっこうシビアなんだけど、男同士でゲームに興じているスポーツライクな爽快感が流れていたからだと思う。

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潜水艦ものも、舞台の性格上男だけの物語になりやすい。

「クリムゾン・タイド」は渋かった。

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ドイツにも「Uボート」という傑作がある。

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あと、ちょっと意外なのが英国の「アラビアのロレンス」。

意外というのは、大分前に似たようなテーマの日記をアップしたとき、とあるマイミクさんから指摘されて、なるほどそういえばと思ったことがあるので。

たしかにこの長尺ものは終始男だけで構成されていたように思う。

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これに対して、邦画には僕が知る限り男だけというのは見当たらない。

戦争ものでもヤクザものでも時代劇でもなんでも、女性を出さないのはいかんという哲学があるような気がする。

別に日本の男がフェミニストだからじゃなくて、むしろ名前が通った女優を本筋には関係ない刺身のツマみたいな役で出演させてるケースが多いように思うけど。

とにかく、必ず女優を出す。

典型的なのが「日本の一番長い日」だ。 最近のでなく、岡本喜八版ね。

これには当時の東宝系人気男優のあらかたが出演した。

三船敏郎、笠智衆、宮口精二、山村聰、志村喬、黒沢年男、高橋悦史、加山雄三、神山繁、高田稔、浜村純エトセトラ、エトセトラにナレーターが仲代達矢。 さらに特撮系からも、主役級の中丸忠雄を筆頭に平田昭彦、久保明、土屋嘉男ら。

で、喜八さんがこれらを縦横無尽に使いこなして傑作に仕上げたんだけど。

ほんの数秒出てくるだけの役に新玉美千代を起用する必然性はなかったんじゃないかなあと思った。

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この終戦の話と好対照の開戦の話を描いたハリウッドの「トラ・トラ・トラ!」では、舛田利雄・深作欣二が共同で仕上げた日本サイドの物語は女優抜きだったと思う。

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もちろん、ハリウッドも戦争ものみたいな特殊な物語でない限り女優を出すけどね。

ヘミングウェイの「男だけの世界」の中の一遍の後日譚を描いた「殺人者たち」にも、アンジー・ディキンソンなんていうはくいブロンドグラマーを出してたし。

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この世は男と女だけで成り立ってるので、両方とも等分に出てくる物語が普通なのであって、どっちかだけというのはよほどうまく作らないとあんばいがよくなくなる。

男だけをときたま出す洋画もあるけど。

アニメは女子だけでも違和感を持たせない稀有な世界だと思う。ファンとしては。^^
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