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2020年10月19日20:38

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「星の子」

原作は今村夏子で芥川賞、本屋大賞にもノミネートされているが、芦田愛菜の演技を観る映画であった。

ちひろ(芦田愛菜)は生まれた時、全身に湿疹ができるなど体が弱い子であった。
母(原田知世)はどうしていいかわからず、日記にも苦悩を書き綴っていた。
そんな時父(永瀬正敏)が同僚から、水を変えるといい、教えてもらう。
同僚が教えてくれた水を使うとちひろの体調はみるみる良くなり、そこから両親はその水を扱う宗教にハマっていくようになる。

ちひろが中3になったとき、新任の数学教師の南(岡田将生)が赴任してきた。
端正な顔立ちの南は女生徒に大人気で、ちひろも一目惚れしてしまう。
そんなちひろを、小学生からの親友なべちゃんこと渡辺(新音)がからかったりしていた。
なべちゃんが新しい彼にちひろの写真を見せると気に入り、友達に紹介したいから今度4人で会おうと誘ってくるのだが、「この子のうち、宗教にハマってどんどん貧乏になって行くからやめた方がいいよ、って言っておいたよ」などと言う。
それが本当かどうかはわからないが、ちひろもその言葉をそれほど意に介していない、二人はそんな仲だった。

ちひろには姉のまさみ(蒔田彩珠)がいたが、今は家にいない。
宗教にハマる両親を嫌って家を出ていた。
ある日まさみが、突然家に帰ってきた。
ちひろはまさみととても仲が良かったが、まさみから生ごみの匂いがするのが気になった。
それでもちひろはまさみが好きで、夜中に二人でいろいろと話をした。
もう遅いから続きは明日とまさみが言ったためその晩は寝たのだが、翌朝起きると「もう帰らない、バイバイ」と言う書置きを残してまさみは家を出て行った後だった。

母には兄(大友康平)、つまりちひろの叔父がいた。
ちひろが小学生だったある日、この叔父が母とちひろたち姉妹を案じ、使用している水が偽物だと証明する。
叔父は母と姉妹を自分の家に連れ帰ろうとするが、両親は半狂乱になり抵抗、ちひろも両親と一緒に抵抗し、叔父に協力していたはずのまさみも叔父を追い返してしまった。
まさみが家を出たのはその後だった。

ある日、ちひろとなべちゃんは卒業文集委員の作業で遅くまで学校に残っていた。
そこになべちゃんの元カレで、まだなべちゃんに未練がある新村も合流した。
3人が教室にいると、見回りで南がやってきて、3人は南に車で送ってもらうことになった。
なべちゃんと南は気を利かせて後部座席に乗り、ちひろを助手席に座らせる。
そして一番最初にちひろの家の近くに到着するのだが、そこでは両親が水を使って宗教の儀式をしていた。
車を降りようとするちひろを、南は他意なく「変なことをしている不審者がいるからちょっと待て」と制止する。
南が言う不審者は、もちろんちひろの両親だ。
頭から水を掛け合う両親を見て南は、「なんだあいつら、完全にイカれてるな」と言う。
ちひろの両眼からは涙があふれそうになった。

ストーリーは、淡々と流れていく。
ちひろは両親が新興宗教に入っているが、なべちゃんが仲良くしてくれ、さらに同級生にもう一人同じ宗教に入っている春ちゃんがいるため、孤立するという事はない。
学校では普通の中学生の生活を送るのだが、家では両親が奇異な行動をする。
どんどん貧しくなる家庭の状況を含め、自分が置かれている環境が通常ではないことがだんだんわかってきているが、ちひろはそれを認めようとしない。
両親から逃げた姉を批判することなく、自分は両親から逃げず、最低限の宗教活動を一緒に行いつつも、必要以上の活動はせず普通の中学生としての生活を行う事で、自分のアイデンティティ、精神的バランスを保っているようにも見える。
その、アンバランスな状況を必死でこらえようとする、芦田愛菜のちひろの演技が素晴らしい。
思えば「MOTHER」、「マルモのおきて」も、決して恵まれた環境ではないが、自分の状況を受け入れる役だった。
そういう役の演技は、一番得意としているのかもしれない。

監督は「さよなら渓谷」「日日是好日」の大森立嗣だ。
「日日是好日」も淡々と流れる映画だったが、深く心に残る作品だった。
そういう見せ方が巧い監督なのだろう。

目立たない作品であるが、個人的にはかなり好きな作品である。


102.星の子


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