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2020年10月09日20:27

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「フェアウェル」

アメリカでは評価が高く、予告編も悪くなかったのでかなり期待して観に行ったが、思っていたほどの作品ではなかった。

25年前、幼かったビリーは両親とともに中国からN.Y.に移住、現在は学芸員を目指していた。
しかし現実は厳しく、一人暮らしの家賃も滞りがちで、しばしば実家に戻って食事をしていた。
ある日いつものように実家に行くと、両親は中国のナイナイ(中国語で父方の祖母)のところに行くという。
日本で暮らす従兄弟のハオ・ハオが結婚するというのだ。
たった一人の従兄弟の結婚式だから自分も出席すべきなのでは、とビリーが問いかけると、母親は渋々、結婚式は口実で、本当はナイナイが肺ガンで余命いくばくもなく、みんなで最後に会いに行くのだと言った。
ビリーは、それならばなおさら自分も行くと言うが、母はビリーが病気の事を黙っていられず、ナイナイに知られてしまうだろう、だから今回は行かない方がいいと言う。
納得が行かないビリーは、両親とは別便で単身中国に渡った。

いきなり戻ってきたビリーに、両親や叔父の家族は戸惑う。
しかしナイナイだけは暖かく迎えてくれた。
ビリーの父と叔父は、ビリーを実家には泊めずに近くのホテルを案内した。
そして父と叔父はビリーに、絶対にナイナイに病気の事を知られないようにと強く言い、ビリーも承諾する。
しかしビリーは、余命が少ない祖母に幸せそうに笑って接することが本当に正しい事なのか、疑問を捨て去ることができなかった。

東洋と西洋の人生に対する価値観、そして家族に対する価値観を表現した作品だ。
幼いころにアメリカに移住したビリーはあまり中国語が得意ではなく、叔父一家もやはり日本に移住しており、従兄弟のハオ・ハオも中国語はあまり得意ではない、そして結婚相手は日本人である。
ナイナイは孫の結婚式を自分で準備し、招待客もナイナイの知人が多い。
結婚式前にはナイナイの夫の墓参りに、一族全員で訪れる。
中国系移民と結婚するのだから、中国の風習を学ぶのは当たり前かもしれないが、ハオ・ハオの結婚相手の日本人は、これらの風習に特に疑問を持たずニコニコしながら従う。
しかしアメリカ生活が長いビリーには、馴染めない事ばかりだ。
このビリーの違和感の描写は、西洋文化のアメリカ人にはかなり共感できるのだろう。
だが東洋文化の日本人には、東洋と西洋の文化の違いは仕方ないよね、と思えてしまい、ビリーの違和感にあまり共感できない。
エピソードの一つの墓参りが日本とほぼ同じという事もあり、ハオ・ハオの結婚相手のように、中国の風習は比較的日本人には受け入れやすいのだろう。
作品のキモである、本人に余命の告知をしないというのも、日本でも特に珍しい事ではない。

さらにネタバレになってしまうが、作品中に大きな事件は起こらない。
ビリーが東洋文化に違和感を感じるものの、ストーリーはラストまで淡々と進んで行く。
監督のルル・ワンの実体験をベースにしているらしいので、その体験をほぼ忠実に再現したのだろう。
ただ映画作品としては、もう一捻り、二捻りが必要だったと思う。

どうでもいい事だが、エンディングロールで映し出された主役のオークワフィナの漢字名が「林家珍」だったのには、少し笑ってしまった。


97.フェアウェル


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