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2020年10月08日21:59

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「浅田家!」

木村伊兵衛写真賞を受賞し、ユニークな家族写真で有名な浅田政志の写真家活動をベースにした作品だ。
監督は「湯を沸かすほどの熱い愛」で鮮烈な商業映画デビューを飾った中野量太。
「長いお別れ」も家族をテーマにした良作であったが、本作品はデビュー作に勝るとも劣らない出来栄えだった。

浅田家の父の章(平田満)は家事を担当している。
ある日子供たちのおやつのケーキを作ろうとして、足に包丁を落としてしまう。
ちょうど帰宅した次男の政志に母親を呼びに行かせようとするが、政志は玄関を出たところで激しく転倒、慌てて2階にいる兄幸宏を呼び出すが、幸宏は階段で転倒してしまう。
親子3人は母の順子(風吹ジュン)が婦長を務める病院に運び込まれ、章が12針、幸宏が4針、政志が3針縫うことになった。
そして政志の写真家としての原点は、この病院に運び込まれた日から始まっていた。

政志(二宮和也)は高校を卒業後、地元の津市から大阪の写真専門学校に入学する。
専門学校時代はまったく実家に戻らず、卒業間近に戻ってきた時には腕にカラフルな刺青を入れていた。
卒業が危ない政志は、学校から卒業制作の作品が優秀だったら卒業させると言われる。
そこで政志が選んだのは、父子3人が病院に運び込まれた時を再現した家族写真だった。
そしてその作品が、見事学長に輝いてしまう。

首尾よく学校を卒業した政志だが、自分のこれからを見出すことができずダラダラと無為な日々を過ごしていた。
そんなある日、かつて父親が消防士を夢見ていたと聞き、その夢を写真にする事を思いつく。
兄(妻夫木聡)に尽力してもらい、家族で消防士のコスプレ写真を撮り、そこから母の夢、兄の夢など、次々と家族のコスプレ写真を撮影する。
家族写真に手ごたえを掴んだ政志は、撮り貯めた家族の写真を持って、恋人の若菜(黒木華)を頼り上京する。
だが出版社に持ち込みを重ねるものの、政志の写真はなかなか認められない。
数年が経ったある日、若菜が用意してくれたギャラリーで個展をしていると、写真集出版社社長の姫野(池谷のぶえ)が訪れる。
政志の写真を気に入った姫野は写真集を出版してくれるのだが、最初は売り上げはサッパリだった。
だが政志の写真は写真界の芥川賞と呼ばれる木村伊兵衛写真賞を受賞する。

写真集の最後に「家族の写真を撮ります」と入れたところ、日本全国から家族写真撮影の依頼が舞い込んだ。
最初の依頼は岩手の家族、その後も政志は車にカメラを積んで日本中を飛び回った。
だが2011年3月11日、富山で個展の打ち合わせをしていた政志は、東日本を激しい地震が襲ったことを知る。
最初に依頼してくれた家族を探すため、政志は単身岩手に乗り込んだ。

前半は、政志の無茶苦茶振りを笑う展開になっている。
破天荒な政志に対して両親は寛容で、兄や恋人の若菜も最初は渋い顔をするものの結局政志のワガママを受け入れる。
そして賞を受賞して政志の人生も軌道に乗るかと思った瞬間、東日本大震災が起こり、政志の記念となる最初の家族写真の家族が行方不明となる。
政志が出会う被災した人々のバックボーンがリアルで、後半はストーリーのトーンがガラッと変わる。
だが前後半を通して、浅田家の家族愛の深さだけは一貫している。
このあたりの見せ方の巧さが、この監督ならではだ。
そして政志役の二宮和也をはじめ、役者陣が実力者ばかりなので、ストーリーにどんどん引き込まれてしまう。
クライマックスを子役の演技で泣かせにかかるという部分はやや卑怯な感じもするが、それでもその子役の演技が素晴らしいため、本当に涙がこぼれそうになってしまった。

老若男女、誰にでもおススメできる映画で、今のところ2020年オレ的ランキングでは、「ラストレター」と1、2位を争う作品である。


96.浅田家!


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