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2020年07月09日12:20

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「テルアビブ・オン・ファイア」

復活はしたものの、客席はソーシャルディスタンスで1人置きのうえ、平日はそれでも満席にならないギンレイホール。
なんとか危機はクラウドファンディングで乗り越えたようだ。

今回は2本立てのうち時間の関係で「テルアビブ・オン・ファイア」のみを観る。
タイトルを見てスリリングなアクション作品かと勘違いしていたが、「テルアビブ・オン・ファイア」は劇中内に登場するTVドラマのタイトルで、内容はシニカルなコメディ映画だった。

パレスチナ人のサラームは、TVドラマプロデューサーの叔父バッサムの伝手で、ドラマのヘブライ語監修の仕事をしていた。
しかし監修と言ってもその実態は現場の雑用係で、サラームがセリフを直そうとすると女性脚本家がヒステリックに怒りまくった。
だが叔父と女優がサラームの修正に同意、すると脚本家は不機嫌に撮影所を出て行ってしまう。

ある日サラームは、パレスチナの撮影所からエルサレムの自宅に戻る際に、検問所で捕まってしまった。
検問所の司令官アッシの取り調べ中、サラームがTVドラマの「脚本関係」の仕事をしていると告げると、アッシは勝手にサラームを脚本家だと勘違いをする。
そのドラマはアッシの妻と母親が夢中で、かつエルサレムでも人気の「テルアビブ・オン・ファイア」だった。
アッシは妻と母親に自慢するために、サラームから無理やりドラマの展開を聞き出し、さらに自分なりに考えた脚本をサラームに押し付ける。
サラームがその脚本を叔父に見せると、叔父も演出家も気に入って採用されることになる。
しかし本来の脚本家は当然激怒し、そのまま脚本を降りてしまった。
結果的に、サラームが脚本家に昇格することとなる。

しかし急に脚本家になっても、サラームはうまくストーリーを展開することができない。
しかたなく、検問所のアッシにドラマの展開を相談に行く。
するとアッシは、妻と母親が言っていたことを思い出し、パレスチナの女スパイとユダヤ人将校を結婚させるんだと言い出す。
だがさすがにこの突飛なアイディアは、叔父にも受け入れられなかった。
そして本来の脚本家がいなくなったため、ドラマの制作チームはストーリーの展開を巡ってバラバラになってしまう。
演出家が考えた「女スパイがガンに罹り、抗がん剤で髪の毛が抜ける」という設定に怒った主演女優が、クライマックス直前で降板し、パリに帰るといい出したのだ。
さらに、「スパイと将校は結婚する」と妻と母親に言い切ってしまったアッシが、サラームを拉致して脅し、自分の言うとおりにしろとIDカードを取り上げてしまった。
その後サラームが主演女優を説得しに行くと、主演女優はサラームに一緒にパリに行こうと誘ってきた。
サラーム自身も乗り気になるものの、「テルアビブ・オン・ファイア」は完成しなければならない。
主演女優は、明日自分が飛行機に乗るまでに納得できる脚本ができれば、撮影完了までエルサレムに残るという。
サラームは恋人との大事な約束をキャンセルし、朝まで脚本を書くためにパソコンに向かった。

途中まで、誰がユダヤ人で誰がパレスチナ人かがよくわからない。
だが、登場人物のキャラクター設定がわかってからは、なかなか面白く展開する。
サラームはかなり弱い立場で冒頭から追い込まれていくのだが、逆ギレすることもなく黙々と目の前の問題を解決しようとする。
その演技がかなり巧い。
サラームが子供のころ収容所でトラウマを抱えたフムスという食べ物など、イスラエルの事を知っている人しかわからない部分もあるのだが、それでもかみ砕き方が巧いため日本人でも理解できた。
クライマックスまでは、サラームの追い込まれ方が切実なためあまり笑うことができなかったが、逆にその分ラストのオチはかなり笑えた。

設定を変えて、日本で三谷幸喜あたりがリメイク作品を作っても面白いかもしれない。


69.テルアビブ・オン・ファイア
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