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2020年06月26日20:31

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「エジソンズ・ゲーム」

現代は「The Current War」で、アメリカの電流戦争を描いた作品だ。
そして、セクハラが暴露され「MeToo」運動まで起きたハーヴェイ・ワインスタインが、当初プロデューサーだった作品でもある。

ジョージ・ウェスティングハウス(マイケル・シャノン)は、鉄道車両の空気ブレーキシステムの開発で得た富で、ガス供給のエネルギーシステム網を構築しようと考えていた。
だが同時期に、白熱電球を開発したエジソン(ベネディクト・カンバーバッチ)も、直流電流の送電網を利用した安価な電力供給システム網を提唱していた。
1マイル四方ごとに発電機2基を設置し、すべての都市に電気を供給するという構想だ。
ウェスティングハウスは、エジソンに直流電力ではなく交流電流による電力供給の話を持ち掛けるため食事会に招待する。
しかしホワイトハウスで兵器開発の交渉を断ったエジソンは、疲弊しきっておりウェスティングハウスの招待を連絡なくキャンセルしてしまう。
そもそもエジソンは、交流電力はパワーが大きすぎて危険であり、実用性が低いと考えていたのだ。
一方ウェスティングハウスは、広大なアメリカ合衆国において、隅々まで電力を行きわたらせるには交流電力しかないと考えていた。

ウェスティングハウスは盟友の技術者フランクリン・ポープとともに交流電力システムの開発を進めるが、ポープは実験中に事故死してしまう。
それでも遠くの発電所から送電でき、送電網も地下ではなく地上に設置できる交流電力システムは、直流電力システムと比較するとコストが1/3程度であり、多くの都市が採用を決めていた。
直流電流にこだわるエジソンは、ウェスティングハウスが白熱電球や発電機の特許を侵害していると訴えようとしたが、白熱電球はすぐに改良され、発電機はそもそも交流電流用なのでエジソンの特許とは別物である事がわかった。
追い詰められたエジソンは、動物に交流電流を流して殺傷する実験で、交流電流の危険性を訴えようとする。
その実験にある技術者が目を付け、死刑囚の死刑執行に交流電流を利用しようと考えた。
交流電流の危険性をアピールする絶好の機会でもあるが、技術で人を殺傷することに反対だったエジソンは、交流電流による死刑執行に賛成するかどうか悩む。

一方ウェスティングハウスは、その頃二コラ・テスラと出会う。
天才的な発明家であったテスラであったが、移民という事でなかなか認められず、一時期はエジソンの会社にも所属して成果をあげるものの、冷遇されたため自分で会社を立ち上げることにした。
しかしその会社も詐欺同然で乗っ取られてしまう。
その後行われたテスラのプレゼンを見たウェスティングハウスは、好待遇でテスラを採用する。
そしてエジソンとウェスティングハウスは、シカゴ万博の電力供給システムのコンペで雌雄を決することとなった。

通常、電流戦争と言えばエジソン vs ステラをイメージし、実際に開発を行ったのは両者なのだが、会社としてはエジソン・エレクトリック社とウェスティングハウス・エレクトリック・アンド・マニュファクチャリング・カンパニー社の対決である。
この映画ではステラはかなり脇役、エジソンもかなりの偏屈男として描かれており、電力を安価に広めたのはウェスティングハウスであるという図式になっていた。

日本では、直流と交流の技術的な比較のみにスポットライトが当てられ、その後ステラは天才過ぎた故に経済的に行き詰まり、最期は孤独な死を遂げた、と語られるれることが多い。
ウェスティングハウスについて語られることはほとんどない。
だが本作を観て、実際には死刑執行用の電気椅子が電力戦争に大きな影響を与えていたこととか、ステラの随分前に交流電流システムは開発されており、効率的なシステムを作ったのがステラと言う事を知ることができた。
そう意味では非常に興味深い作品であった。

エジソンが人を殺傷する技術を拒否して苦悩するという描き方も巧く、技術系を目指す学生にはぜひ観てもらいたい作品だと思った。


67.エジソンズ・ゲーム
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