原作は、医師資格を持ち、3年連続で作品が本屋大賞にノミネートされている知念実希人の作品である。
予告編を観た限りでは、閉ざされた病院と言うテーマだけで押し切る強引な作品かと思っていたが、予想よりはるかにきちんとまとめられた作品であった。
速水（坂口健太郎）は先輩の小堺（大谷亮平）に頼まれ、彼の代わりに一晩だけある病院の当直をすることになった。
その病院は田所病院と言い、100弱の病床を持っており、入院患者のほとんどは痴ほう症をわずらう老人だった。
小堺に連れられ病院に来た速水は、ちょうど仕事を終えた3人の理学療法士とすれ違う。
3人のうちの1人は小堺に、「何も知らない後輩に当直お願いするなんて無責任ですね」と気になる事を言った。
病院には二人の当直のナースがいた。
ベテランの東野（江口のりこ）と若い佐々木（内田理央）だ。
佐々木は結婚退職のため今夜が最後の当直だという。
東野の説明よると、患者が時折奇声を発したり徘徊することはあるものの、それは自分たちナースが対応するので当直と言ってもやることはほとんどない、との事だった。
速水は東野に当直室に案内され、そこでウトウトしてしまう。
速水には数カ月前まで恋人がいた。
恋人は小堺の妹で、プロポーズまでしていたのだが、ある晩速水の運転する車が事故にあい、助手席に乗っていた恋人は瀕死の重傷を負う。
その時、事故から一番近かった病院が、その晩小堺が当直していた田所病院だった。
しかし院長の田所（�眦萓�伸）が搬送を拒否し、恋人は別の病院で息を引き取った。
速水は東野からの連絡で目を覚ました。
速水が駆け付けるとそこには近拳銃を持った、ピエロの仮面を被った男がいた。
ピエロの男はニュースで放送していたコンビニ強盗で、店先で撃った若い女を治療をしろと要求した。
若い女は川崎瞳と（永野芽郁）名乗った。
瞳のケガは、銃弾が腹部の皮膚をかする程度で重症ではなかった。
瞳の治療は閉鎖されているはずの手術室で行われたのだが、小堺が何年も使われていないといったはずの手術室は手入れが行き届いており、何年も使っていないとは思えなかった。
東野は、老人が時折ケガをすることもあるので、その時だけ使用していると言ったが、速水は強い違和感を感じた。
そして瞳の治療がちょうど終わったとき、院長の田所が手術室に入り込んできた。
ピエロを撃退しようとしたが、ピエロに気づかれて逆に抑え込まれてしまう。
田所はカネを渡して出て行ってもらおうとするが、ピエロは外には警官がいるから立てこもると主張した。
そして一つだけの階段に鍵をかけ、速水たちと入院患者を上階に閉じ込め、ピエロ自身は1階でエレベータの動きだけを見張りだした。
田所たちは、朝になれば職員がやってきて通報してくれるからそれまでおとなしく待つと言い、最上階の院長室に行った。
速水と瞳は2階にいたが、突然3階の病室から悲鳴が聞こえる。
駆け付けると、腹部の縫合痕を切られて出血した患者が倒れていた。
ストーリー全体は、なかなかよく作られたミステリーである。
病院自体に秘密があるという、映像の雰囲気作りも上手かった。
中盤まで、ピエロが上階に上がった隙をついて、いくらでも逃げられるんじゃないかと言う疑問もわくのだが、終盤、裏口の扉が針金で固定されていることがわかる。
そのあたりのバランスがちょっと悪く、扉が固定されていることがもっと早いうちにわかっていれば、逃げられない密室感がより高まったんじゃないかと言う気もする。
ピエロが拳銃をどうやって手に入れたのか、など、やや強引な部分は残るものの、それでも見ごたえのある作品で、特にクライマックスの坂口健太郎の犯人への説得と、決意を固めた永野芽郁の表情は良かったと思う。
50.仮面病棟
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