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2020年02月01日20:19

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「ロマンスドール」

原作、脚本、監督をタナダユキが担当している。
一言で言って、タナダユキの上手さが出た作品だ。

美大を出てフリーターしていた哲雄(高橋一生)は、先輩に紹介されラブドールを制作する町工場に勤め始める。
町工場には相川金次(きたろう)と言う造形師がいて、哲雄は金次からいろいろな技術を教わった。
哲雄が初めて作ったラブドールはやたらと胸がデカかったが、社長の久保田(ピエール瀧)はリアリティがないと一蹴する。
元々金次は職人気質の男で、人形の肌の美しさ、質感などのリアリティにこだわっていた。
そこで二人はリアリティのある胸を作るため、直接女性から胸の型取りすることを考える。
美大時代の伝手を使い、哲雄が呼んだ胸のモデルが園子(蒼井優)だった。
二人は園子に、人工乳房の制作をしていてその型取りを行いたいと嘘を言う。
園子は誰かのために役立てるならと、型取りを請け負っていた。
その出会いをきっかけに、哲雄を園子は付き合い、結婚することになる。
だが哲雄は勤務先が、ラブドールを作る工場だとは言えないままでいた。

園子をモデルに作ったラブドールは大ヒットし、工場は毎日遅くまで残業するほど繁盛した。
哲雄の帰宅が遅くなっても、園子は毎日哲雄の帰りを待っていた。
だがある日、相川が突然死してしまう。
一人でラブドールの造形をしなければならなくなった哲雄は、社長の久保田から新素材でのラブドール作りの話を持ち掛けられる。
工場は繁盛していたが、ライバル会社が類似品を販売し始めていたのだ。
金次の代わりに新しく入社した両角(浜野謙太)と一緒に新製品を開発する哲雄だが、製品化の一歩手前までこぎつけたところで両角に裏切られ、新素材のデータを持ち逃げされてしまう。
哲雄は壁にぶつかり、帰宅もさらに遅くなり始めていた。
そんな時、園子の様子がおかしくなる。

典型的な、起承転結の作品である。
起は哲雄の入社から園子との出会いまで、承は金次の死から園子がおかしくなるまで、そして転、結と繋がっていく。
起では、漫才のような哲雄と金次の軽快な掛け合いがとにかく面白い。
その掛け合いで見ているものの心を見事につかんでいる。
まさに「つかみはOK」というヤツだ。
ベタベタにボケるきたろうに対して高橋一生がちょっとインテリ的なツッコミを入れ続け、二人の持ち味を上手く引き出していた。
その後の承では、金次の死をはじめ工場に暗雲が立ち込める中、上手く行っていたはずの哲雄と園子の関係に歪が生まれる。
この、悪い方へ転がるスピード感もいい感じだった。
そして転で、園子が秘密を打ち明け哲雄がショックを受ける。
この園子の秘密もベタで新鮮味はないのだが、高橋一生と蒼井優の演技力で惹きつけてくる。

映画を観ている間は流れるような展開でまったく気づかなかったが、映画館を出た後でかなりありきたりなストーリーであったことに気づいた。
平凡なストーリーである事に気づかせず見せるところが、タナダユキの上手さだろう。

題材がラブドールという事でなかなか激しいシーンもあるのだが、本質的にはラブストーリーでもあり、女性にも見てもらいたい作品である。
ちなみに私は平日の夕方の上映会で観たが、50人程度の観客のうちたぶん8割は女性客だった。


30.ロマンスドール
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