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2020年01月23日07:30

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「リチャード・ジュエル」

今年90歳を迎えるクリント・イーストウッドが監督、老いるどころかむしろ年を重ねるごとに切れ味が増している感もある。
この作品もなかなかの見ごたえでであった。

リチャード・ジュエルは正義感の強い男で、警官などの法執行官になる夢があった。
法律事務所の用具係として働いているとき、たまたま弁護士ワトソン・ブライアントと知り合う。
リチャードの気遣いに気づいたワトソンは彼を気に入ったが、リチャードは群の副保安官の職を得て弁護士事務所を離れた。
だが副保安官となったリチャードは、大学の学生寮の警備で飲酒した学生に暴力をふるったり、ハイウェイを通行中の車を止めて飲酒運転を取り締まるなど、やり方が少々強引で批判を浴びていた。
そして雇い主であった大学の学長から辞職勧告を受けてしまう。

その後リチャードは、アトランタオリンピックが開催される年、記念で開催されるコンサートの音響設備を管理する警備員の職に就いた。
夜間コンサート中に酔っ払った若者の集団を注意したとき、彼らがベンチの下の荷物に触っていたことに気づく。
その頃911には、コンサート会場に爆弾を仕掛けたという匿名の通報が入っていた。
リチャードがマニュアル通り、警備の警官に不審な荷物の報告をすると、荷物は本物のパイプ爆弾だった。
リチャードと警備員はコンサート会場がパニックにならないよう観客を誘導、爆発物処理班を待っていたが、爆弾は爆発して2人の死者と多数の負傷者を出してしまう。
それでも爆発物に気づいたリチャードは称賛され、一躍時の人となった。
そして出版契約の話を持ち掛けられたため、久しぶりにワトソンに連絡を取る。

偶然コンサート会場に妻と来ていたFBIのトム・ショー捜査官は、この事件の担当となった。
そしてプロファイリングから、警官に憧れていたリチャードが、自作自演で爆弾事件を作り上げたと推測し、そのことを地元の新聞記者キャシー・スクラッグスにリークした。
キャシーはスクープを取ることに夢中で、いい記事を取るためには目立たなければならない、そのために豊胸手術をしようか、などと言うような人間であった。
そして記事掲載に及び腰の上司を説得し、スクープ記事としてFBIがリチャード・ジュエルを捜査対象として考えていると、記事にした。
その記事が口火を切る形となり、メディアは一斉にリチャードを容疑者扱いし始める。
英雄から一転、容疑者扱いされ戸惑うリチャード。
しかもFBIは、違法捜査でリチャードを容疑者に仕立てあげようとしている。
リチャードは慌ててワトソンに助けを求めた。

実際に起こった事件を基にした作品だ。
どこまで事実に忠実なのかはわからないが、リチャード、ワトソン、FBI捜査官、そしてリチャードの母ボビのキャラ設定が巧みだ。
リチャードは真面目で正義感が強くいい人間なのだが、少々間が抜けたところがあり隙も多い。
ワトソンは弁護士らしく、リチャードの人間性を信じて彼を助けようとするが、リチャードの想定外の行動のため事がうまく進まず、イライラしたりもする。
リチャードの母ボビは、息子が突然英雄になったのもつかの間、わずか3日間で罪人扱いになってしまった事に戸惑う。
そしてFBI捜査官のトムだ。
盗聴したり、違法な誘導捜査で証拠を捏造しようとするなど、この映画の中では捜査官を解任されてもおかしくないレベルのかなりの悪人だ。
このFBI捜査官の悪役の設定がうまくハマっているので、捜査に振り回されるリチャード、ワトソン、ボビのキャラがうまく機能しているように見える。

おそらく、起こった事象は事実にかなり忠実に作られているのだろう。
そこに登場人物のキャラまをうまくハメ込むことで、エンターテイメントとしてのハラハラ感が演出されている。
老練クリント・イーストウッドの技ありの作品と言えるだろう。


21.リチャード・ジュエル
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