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2019年11月16日08:46

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「永遠の門 ゴッホの見た未来」

個人的にはポスト印象派、もしくはフォービズムの作品が好きなのだが、中でもゴッホは人類史上最高の画家だと考えている。
その、不遇の天才ゴッホの生涯を描いた作品だ。

パリで絵が売れずに苦労していたゴッホは、弟のテオとサロンを否定するグループに参加しようとしていた。
しかし共同でアトリエを借り展示会を実施する彼らの案は、売れたものがより賃料の負担を大きくする、という考えであった。
その考えを、これまで通りの支配者と被支配者の構図で進歩がないと、批判する男がいた。
ポール・ゴーギャンである。
ゴッホはゴーギャンの考えに賛同し、ゴーギャンもゴッホの絵を認めていた。
二人はテオの援助を受け、アルルで共同生活を始めることにする。

ひと足先にゴッホはアルルの生活を始め、色鮮やかな自然の中を駆け回り、筆を振るい続けた。
しかし、田舎町はよそ者に対して冷たかった。
ゴッホの味方になってくれたのは、黄色い家を紹介してくれたジヌー夫妻だけだった。
精神的に追いつめられるゴッホのもとに、ゴーギャンがやってくる。
二人は切磋琢磨し絵を描くのだが、ゴーギャンは素早く描くゴッホの技法を批判する。
そして自分の絵が売れ始めた事を理由に、パリに戻ってしまった。
ゴーギャンが去ったことにショックを受けたゴッホは、自分の左耳を切り落としゴーギャンに送ろうとする。

精神が不安定になったゴーギャンは、アルルの病院に入院する。
心の拠り所は最愛の弟テオだけだった。
病院内でも精神の安定を取り戻せなかったゴッホは、その後サン=レミの精神病院に転院する。
このサン=レミの病院で、ゴッホは後世に残る作品を何枚も生み出した。
精神状態は完全には安定してはいなかったが、ゴッホは病院を退院し、一度パリのテオ夫妻の元に身を寄せる。
しかしパリの喧騒はゴッホの精神に刺激が強すぎたため、精神科の医師を頼ってオーヴェルの地に移り住むことにした。
そして移り住んでから2か月後、ゴッホは腹部に銃弾を受けそのままこの世を去る。

ゴッホが画家であったのは、37年間の人生でわずか10年だ。
その10年間で、油絵約860点、水彩画約150点のほか、1000点以上のデッサンを残している。
この映画では、色彩にあふれるアルルに移り住み、自由闊達に描くゴッホの狂喜する姿、そして自分を認めてくれる人がいない事による精神の破綻がよく描かれている。
特に、ゴッホが屋外で絵筆を振るう描写が素晴らしい。
走るゴッホを手持ちカメラで追い、画面は激しく上下左右にぶれまくりである。
その画面の動きが、まさにゴッホの高揚した心情を表現している。
時折、画面の下半分のピントがボケているレンズが使用されているのだが、それもゴッホがどのように世界を見ていたかの演出なのだろう。

一方精神の破綻をきたす部分は、ややありきたりのゴッホ像になってしまっている。
ゴッホが精神破綻をしてしまうのは、画家になる前の数々の挫折、特に伝道師時代の経験が大きな要素になっていると思われるのだが、その部分には触れられていなかった。
とは言え、ゴッホ役のウィレム・デフォーの演技が素晴らしく、音楽もいい。
狂喜と落胆の間を激しく行き交うゴッホの心情の描写もわかりやすかった。

絵画、特にゴッホに興味のない人には退屈な作品だと思うが、ゴッホ好きなら必見の映画である。
近々観に行く予定のゴッホ展の前に、観ておいてよかった。


138.永遠の門 ゴッホの見た未来


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