mixiユーザー(id:1742111)

2022年04月26日20:50

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昔から人が絵を描いているところを見るのが好きなのだ。絵が描かれていく過程が面白い。

先日とある個展を銀座の某所に観に行ったら、絵を描く過程を映したビデオ上映をやってて、思わずじっと見入ってしまった。森の中に大きなキャンバスを置き、絵を描いていく過程を映していったもの。その個展でいちばん面白かったのは絵ではなくてそのビデオの方だった。

で、その場合、仕上がりなんてどうでもいいのだ。描いているその行為というか、作り手の意志によってその人自身のやり方で絵が出来上がっていく様が面白いので、完成したものについては結構どうでもいい。

昔、「ボブの絵画教室」という番組があって、たまに見てたのだが、ボブ・ロスが30分足らずの短い時間にリアルな写実絵画を仕上げていくのが面白かった。出来上がった絵画は観光地のポストカードみたいでいつも退屈なものだったが、白いキャンバスに絵具がどんどん塗られて形になっていくのを見るのは楽しい。

手塚治虫や石森章太郎が漫画を描く場面というのを昔何かのテレビで見たことがあるのだが、両者とも素早い筆さばきでガンガン描いていく様がとにかく凄かった。一切の躊躇なくカブラペンやGペンで下書きも無視するような形で大胆にそして正確に線を描いていくのだ。他にもいろんな漫画家のペン入れのビデオを見たことがあるけど、この二人が圧倒的に筆が速い印象がある。また逆に、物凄く遅い筆致で描く漫画家もいて、それはそれで一瞬の真剣勝負という感じが伝わってきて凄いものだ。

セツ・モードセミナーに行ってた頃、10分単位でどんどんデッサン(エスキース)を仕上げていく授業があったのだが、そのときに長沢節先生のうしろから先生の華麗な筆さばきをよく眺めていた。一体どうやってあんな線が出せるのかと不思議だったのだが、よく見たところで手品にしかみえない。ただ、たまに消しゴムを使う所がなんだかリアルに感じた。今思えばあんなに近くでセツ先生の絵を描くところが見れたのは貴重な体験だった。

70年代の石立鉄男のドラマに「気になる嫁さん」というのがあるけど、このオープニングはキャンバスにどんどん色がついていって最後に絵が完成するというものだった。これもとても面白い。完成した絵はともかく、絵が徐々に出来ていくそのプロセスがすごく面白いのだ。

ピカソが上半身裸になって絵を描く姿や、棟方志功がエネルギッシュに版画を掘ったり絵を描いたりする姿は結構よく知られているだろう。あの映像は絵と同じくらいに魅力がある。水森亜土がガラス越しに右手と左手の両方を使って絵を描いていく番組が昔あったけどあれも凄かった。ガラス越しに反転してるのに何の迷いも無く文字などもちゃんと書いてしまうのだ。

ところで、ライブペインティングというのも絵を描く過程を見せるものだが、というか絵を描く過程をパフォーマンスと捉えたものだが、こうなるとちょっとニュアンスが違う。どういうわけだかライブペインティングのほとんどはつまらない。絵の画面そのものよりも製作者のパフォーマンスに焦点を当てているようで、画面に現れる制作過程の面白さはそれほどでもない。やはり、普段の絵の制作方法を見たい。それは観客を前にしてのパフォーマンスとは別物だ。

絵というのは基本的にひとりで描くものだ。そしてその過程は自分だけしか体験することが出来ないし、自分だけしか見ることが出来ない。絵を描くたのしさはその過程にある。完成してしまったらそこで終了。完成品を楽しむのは、また別の次元のことだ。
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