mixiユーザー(id:17180778)

2020年05月31日10:33

68 view

『呉子』圖國第一 第四章

                 第四章
呉子は言う。およそ戦争が引き起こされる原因は五つある。第一は天下の王者・覇者になろうとして名声を争う場合、第二は他国に侵略して利益を得ようとして争う場合、第三は両国がお互いに憎しみを積み重ねて争う場合、第四は国内が乱れて争う場合、第五は飢饉などにより民が苦しんでいるのに兵を起こして争う場合である。軍はその特徴から五つの名称がある。第一は義兵、第二は彊兵、第三は剛兵、第四は暴兵、第五は逆兵と言う。暴政を禁じ世の乱れを救う軍を義兵と言う。強大な兵力に頼って隣国を侵す軍を彊兵と言う。積み重ねた憎しみにより戦争を引き起こして互いに争う軍を剛兵と言う。他国に対する礼儀を捨て、その国の乱れに乗じて利益のために侵略する軍を暴兵と言う。飢饉などにより民が飢え、国が疲弊しているにもかかわらず戦争を起こして戦う軍を逆兵と言う。以上五つの軍に対してはそれぞれ斥ける方法がある。義兵に対しては、名分が義であるので、それを成し遂げればこちらも礼儀を以て対応すれば、相手もそれ以上の行為は名を穢すことになるので自然と退却する。彊兵に対しては、へりくだって逆らわず相手を驕らせて、こちらを軽んじて隙が出来たときを狙って斥ける。剛兵に対しては、ひたすらへりくだって相手の怒りを和らげて退却させる。暴兵に対しては敵を欺く計略を用いて斥ける。逆兵に対しては、相手国の乱れや疲れを利用して種々の計略を用いて退却させる。

呉子曰、凡兵之所起者有五。一曰爭名。二曰爭利。三曰積惡。四曰內亂。五曰因饑。其名又有五。一曰義兵。二曰彊兵。三曰剛兵。四曰暴兵。五曰逆兵。禁暴救亂曰義、恃衆以伐曰彊、因怒興師曰剛、棄禮貪利曰暴、國亂人疲舉事動衆曰逆。五者之服、各有其道。義必以禮服、彊必以謙服、剛必以辭服、暴必以詐服、逆必以權服。

吳子曰く、「凡そ兵の起こる所の者五有り。一に曰く、名を爭う。二に曰く、利を爭う。三に曰く、惡みを積む(注1)。四に曰く、內亂る。五に曰く、饑に因る。其の名又五有り。一に曰く、義兵。二に曰く、彊兵。三に曰く、剛兵。四に曰く、暴兵。五に曰く、逆兵。暴を禁じ亂を救うを義と曰い、衆を恃みて以て伐つを彊と曰い、怒に因りて師を興すを剛と曰い、禮を棄て利を貪るを暴と曰い、國亂れ人疲れたるに事を舉げ衆を動かすを逆と曰う(注2)。五者の服に、各々其の道有り。義は必ず禮を以て服し(注3)、彊は必ず謙を以て服し(注4)、剛は必ず辭を以て服し(注5)、暴は必ず詐を以て服し(注6)、逆は必ず權を以て服す(注7)。」

<語釈>
○注1、直解:其の兩國の君臣惡みを積み、兵を起こして之を征する者なり。○注2、直解:國中自ら亂れ、人民疲困するに、又事を舉げ衆を動かして、征伐すること已まず、是を名づけて逆と曰う。国を他国に解する説もある。直解の説がよいと思う。○注3、直解:若し彼既に能く暴を禁じて亂を救い、以て其の義を行わば、必ず敢て非禮に動かず、我は則ち典禮を修飾し、其れをして之を聞かしめば、自然に罷め去らん、是れ禮を以て之を服すと謂う。○注4、直解:彼既に其の強盛に恃めば、我は則ち示すに謙卑を以てす、即ち卑にして之を驕らすの謂なり、彼必ず我を輕んぜん、然る後以て隙に乘じて之を破る可し、是れ謙を以て強を服するなり。○注5、服部宇之吉氏云う、「怒りに因って我を伐つ者には我も亦た巧みに辭を以て其の怒りを和ぐる時は、彼自ら退くべし。」直解は、相手が怒りに因ってやってくるので、更に悪言を投げかけて怒りをあおり、守りを固めて、相手が怠帰する時を狙って奇襲攻撃をする、という意味に解している。「剛必以辭服」から直解の解釈は少し飛躍しすぎる感があるので、服部宇之吉氏の説を採用する。○注6、直解:禮を棄て利を貪る凶暴の兵は、必ず深謀無くして、利を争うを惟う、我は則ち詭詐の法を以て服するなり。○注7、直解:彼既に國亂れ民疲れたるに、復た兵革の事を舉げ、大衆を動かし起こして來り戰えば、我は則ち其の變勢に因りて其の權謀を制し、以て之を服するなり。

<解説>
戦争が引き起こされる原因を挙げ、その対応策を述べている。乃ちこの章は攻撃について述べるのでなく、守備の立場について述べており、その対抗手段は外交により戦争を避けるものである。

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する