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2019年08月24日10:21

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『孫子』巻第十地形篇

孫子言う。戦場における地形には、道が四方に通じていて、敵も味方も共に往来することができる通形、草や木の遮蔽物が多く、行けばそれに捉われて戻れない挂形、容易に進むことができず、両軍相対峙するような支形、山に挟まれた細い道が一本あるだけの隘形、山や川などの険しい所の険形、遠くまで見渡せる平たい地の遠形の六種類がある。我が軍がどこを通っても敵を撃つことができ、敵軍もどこを通っても我を撃つことができる開けた地形を通形と言う。通形では、敵より先に南に向いた高所を占め、糧道を確保して戦えば、有利に戦いを進めることができる。木や草などに阻まれて何とか進むことは出来ても、退くには困難が多い地形を挂形と言う。挂形では、敵が油断して備えがなければ、攻めて勝つことができるが、備えがあれば攻めても勝つことができず、退くにも困難な地形なので窮地に陥る。我が軍も敵軍も共に出撃しても利にならないような地形を支形と言う。支形では、敵が我が軍の方が有利であるように見せかけても出て攻めてはいけない。軍を引いて去る方がよい。そうして敵が追いかけて来たら、半分出撃してきたところを撃てば我が軍は有利である。山に挟まれた細い道が一本だけあるような隘形では、先に到着すれば其の口を塞いで敵を迎え撃ち、敵が先に到着して其の口を塞いでいれば、敵の行動に合わせて攻撃してはいけない。険しい山などが存在する険形では、南に向いた高所に居り、そこで敵を迎え撃つ。もし敵が先にこの地に居れば、兵を引いて立ち去れ。敵の動きに合わせて行動するな。遠くまで見渡せる平地の遠形では、勢力が等しければ戦いを挑むのは困難である。戦っても不利になる。およそ以上六つの地形は地の利の法則である。それを知ることは将の最大の任務である。よく考察すべきである。更に軍が敗北に至る道は、走・弛・陥・崩・亂・北の六つがある。この六つの軍が敗れる原因は天によるものでなく将軍の過ちによるものである。両軍の兵力が同じであるのに、その十分の一の兵力で十倍の敵を撃ちかなわず逃げるのを走と曰う。士卒が強く荒々しく、部隊長が弱ければ、内部が緩み統御することができない。これを弛と曰う。反対に部隊長が強く、士卒が弱ければ、強いて戦わせても死地に陥る、これを陥と曰う。将軍が武将の能力を理解せず理不尽に叱責することにより、武将は敵に遇えば将軍の命を聞かずに独断で戰う、これを崩と言う。将軍が軟弱で威厳がなく、軍に教え導くことも明らかでなく、部下は規則を守らず、陣形もまともに整えられない、これを乱と言う。将軍が敵の勢力を分析する能力に欠けており、少数で多数の敵と戦い、弱兵で強兵を撃ち、精鋭を選ぶことも出来ない、これを北と曰う。およそこの六つのものが軍に敗北をもたらすものである。これらを知ることは将軍の最大の任務である。よく知っておくべきである。地形というものは戦いを助けるものであるから、敵情を知り勝ちを制する計をたて、その地形が険しく狭いか、遠いか近いかということを明らかにすることは、最高指導者である将軍が必ず守らなければならない道である。この事を知って戦う者は必ず勝ち、知らないで戦う者は必ず敗れる。だから戦争の道は必ず勝てる情勢であれば、主君が戦うなと命令しても戦ってもよい。逆に勝てない情勢であれば、主君が戦えと命令しても戦わなくてよい。だから戦争の道を知っている将軍は進撃して戦いに勝っても名誉を求めないし、退却しても罪を免れようとはしない。その思いは人民の安らかな生活を保ち国に利益をもたらすことである。このような将軍はまさに国の宝である。将軍が兵士を赤子のように慈しみ、危険な深い谷間でも俱に下りていき、兵士を愛する我が子のように見るので、兵士たちは死をも厭わずに将軍に従う。しかし将軍が兵士を厚遇するだけで彼らを使い用いることができず、兵を愛するだけで彼らに命令することができず、隊内が乱れて秩序を保つことができない。このような兵はたとえて言うなら父母の言う事を聞かないわがままな子のようなもので、用いることはできない。我が兵が敵に打ち勝つ能力があることを知っていても、敵の戦力が備わっていて破ることが困難であることを知らなければ勝敗は五分五分である。敵を撃ち破ることができることを知っていても、我が兵が敵に撃つ勝つ能力がないことを知らなければ勝敗は五分五分である。敵を撃ち破ることを知っていて、我が兵も敵を破る能力があることを知っていても、地形が我が軍に不利であることを知らなければ勝敗は五分五分である。それゆえ戦争の上手な者は彼我の実情を知り地形の利便を知ることに務め、しかる後に行動を起こすので迷いはなく、事を挙げても窮することはない。だから敵を知り己を知れば危なげなく勝つことができ、天の時を知り地の利を得れば、勝は完全なものになる。

孫子曰、地形有通者、有挂者、有支者、有隘者、有險者、有遠者。我可以往、彼可以來曰通。通形者、先居高陽、利糧道以戰、則利。可以往、難以返曰挂。挂形者、敵無備、出而勝之。敵若有備、出而不勝。難以返不利。我出而不利、彼出而不利曰支。支形者、敵雖利我、我無出也。引而去之、令敵半出而撃之利。隘形者、我先居之、必盈之以待敵。若敵先居之、盈而勿從、不盈而從之。險形者、我先居之、必居高陽以待敵。若敵先居之、引而去之、勿從也。遠形者、勢均,難以挑戰。戰而不利。凡此六者、地之道也。將之至任、不可不察也。故兵有走者、有弛者、有陷者、有崩者、有亂者、有北者。凡此六者、非天之災、將之過也。夫勢均、以一撃十曰走。卒強吏弱曰弛。吏強卒弱曰陷。大吏怒而不服、遇敵懟而自戰、將不知其能曰崩。將弱不嚴、教道不明、吏卒無常、陳兵縱壑亂。將不能料敵、以少合衆、以弱撃強、兵無選鋒曰北。凡此六者、敗之道也。將之至任、不可不察也。夫地形者、兵之助也。料敵制勝、計險阨遠近、上將之道也。知此而用戰者必勝。不知此而用戰者必敗。故戰道必勝、主曰無戰、必戰可也。戰道不勝、主曰必戰、無戰可也。故進不求名、退不避罪、唯民是保、而利合於主、國之寶也。視卒如嬰兒、故可與之赴深谿。視卒如愛子、故可與之俱死。厚而不能使、愛而不能令、亂而不能治、譬若驕子、不可用也。知吾卒之可以撃、而不知敵之不可撃、勝之半也。知敵之可撃、而不知吾卒之不可撃、勝之半也。知敵之可撃、知吾卒之可以撃、而不知地形之不可以戰、勝之半也。故知兵者、動而不迷、舉而不窮。故曰、知彼知己、勝乃不殆。知天知地、勝乃可全。

孫子曰く、地形に通なる者有り(注1)、挂(カイ)なる者有り(注2)、支なる者有り(注3)、隘なる者有り(注4)、險なる者有り(注5)、遠なる者有り(注6)。我以て往く可く、彼以て來る可きを通と曰う。通形は、先づ高陽に居り、糧道を利にして以て戰えば、則ち利あり。以て往く可くして、以て返り難きを挂と曰う。挂形は、敵備え無ければ、出でて之に勝つ。敵若し備え有れば、出でて勝たざらん。以て返り難くして不利なり。我出でて利あらず、彼出でて利あらざるを支と曰う。支形は、敵、我を利すと雖も、我出づること無かれ。引きて之を去り、敵をして半ば出でしめて之をを撃たば利あり(注7)。隘形は、我先づ之に居らば、必ず之を盈たして以て敵を待つ。若し敵先づ之に居り、盈つれば從うこと勿れ、盈たざれば之に從う(注8)。險形は、我先づ之に居らば、必ず高陽に居りて以て敵を待つ。若し敵先づ之に居らば、引きて之を去り、從うこと勿れ。遠形は、勢均しければ、以て戰いを挑み難し。戰いて利あらず。凡そ此の六者は、地の道なり。將の至任、察せざる可からざるなり。故に兵に走る者有り、弛む者有り、陷る者有り、崩るる者有り、亂るる者有り、北ぐる者有り。凡そ此の六者は、天の災に非ず、將の過なり。夫れ勢均しくして、一を以て十を撃つを走と曰う。卒強く吏弱きを弛と曰う(注9)。吏強く卒弱きを陷と曰う(注10)。大吏怒りて服せず、敵に遇えば懟(うらむ)みて自ら戰い、將其の能を知らざるを崩と曰う(注11)。將弱くして嚴ならず、教道明らかならず、吏卒常無く、兵を陳ぬるに縱圓覆襪鯰と曰う。將敵を料る能わず、少を以て衆に合わせ、弱を以て強を撃ち、兵に選鋒無きを北と曰う(注12)。凡そ此の六者は、敗の道なり。將の至任、察せざる可からざるなり。夫れ地形は兵の助けなり。適を料り勝を制し、險阨遠近を計るは、上將の道なり。此を知りて戰に用うれば必ず勝つ。此を知らずして戰に用うれば必ず敗る。故に戰道必ず勝たば、主、戰う無かれと曰うも、必ず戰いて可なり。戰道勝たずんば、主、必す戰えと曰うも、戰うこと無くしても可なり。故に進みて名を求めず、退きて罪を避けず、唯だ民を是れ保ちて、利、主に合うは、國の寶なり。卒を視ること嬰兒の如し、故に之と深谿に赴く可し。卒を視ること愛子の如し、故に之と俱に死す可し(注13)。厚くして使う能わず、愛して令する能わず、亂れて治むる能わず。譬えば驕子の若し、用う可からず。吾が卒の以て撃つ可きを知りて、敵の撃つ可からざるを知らざるは、勝の半ばなり。敵の撃つ可きを知りて、吾が卒の撃つ可からざるを知らざるは、勝の半ばなり。敵の撃つ可きを知り、吾が卒の以て撃つ可きを知りて、地形の以て戰う可からざるを知らざるは、勝の半ばなり。故に兵を知る者は、動きて迷わず、舉げて窮せず(注14)。故に曰く、彼を知り己を知らば、勝ちは乃ち殆うからず。天を知り地を知らば、勝ちは乃ち全かる可し(注15)。

<語釈>
○注1、十注:梅堯臣曰く、道路交達なり。杜牧曰く、通は、四戰の地なり。道が四方に通じていて、彼我両軍が行き来できる地形。○注2、住注:梅堯臣曰く、網羅の地、往けば必ず綴に掛かる。道が網で塞がれているように、草や木の遮蔽物があり、それに捉われて戻れないような地形。○注3、十注:梅堯臣曰く、相持するの地。容易に進めず両軍相対峙するような地形。○注4、十注:梅堯臣曰く、兩山通谷の痢山に挟まれた細い道が一本あるだけの地形。○注5、十注:梅堯臣曰く、三川邱陵なり。険阻な地形。○注6、十注:梅堯臣曰く、平陸なり。遠くまで見渡せる平らな地形。○注7、十注:張預曰く、我を利すとは、佯りて我に背きて去るを謂うなり、出でて攻む可からず、我、険阻を捨てば則ち反って乘ずる所を為す、自ら引きて去るに當り、敵若し來たり追わば、其の出づるを伺いて、之を邀撃す、敵若し我を躡(おう)わば、其の半ば出づるを候いて、兵を發して之を撃たば、則ち利あり、若し敵人先づ去りて以て我を誘わば、我、出づる可からざるなり。○注8、十注:張預曰く、左右高山にして、中に平谷有り、我先づ之に至らば、必ず山の口を齊満して、以て陳を為し、敵をして進を得ざらしむるなり、我以て奇兵を出だす可し、彼以て我を撓すこの能わず、敵若し先づ此の地に居りて隘口を盈塞して陳すれば、從う可からず、○注9、十注:張預曰く、士卒豪悍にして、将吏懦弱なれば、統轄約束すること能わず、故に軍政、弛壊するなり。○注10、十注:杜牧曰く、攻取を為さんと欲するも、士卒怯弱にして、其の力を量らず、強いて之を進ましむれば、則ち死地に陥没す。○注11、十注:陳皥曰く、此れ大將理無くして小將にに怒り、之をして心内に不服を懐かしむ、怨怒に因縁して敵に遇えば、便ち戰い、能否を顧みず、大敗する所以なり。○注12、十注:梅堯臣曰く、敵情を量る能わずして、少を以て衆に當り、精鋭を選ぶ能わず、弱を以て強を撃つ、皆奔北の理なり。○注13、十注:張預曰く、将の卒を視ること子の如ければ、則ち卒の将を視ること父の如し、未だ父、危難に在りて、子、死を致さざること有らず。○注14、十注:張預曰く、妄動せず、故に動けば則ち誤らず、輕舉せず、故に舉ぐれば則ち困らず、彼我の虚實を識り、地形の便利を得て、而る後戰うなり。○注15、十注:張預曰く、天時に順い、地の利を得れば、勝を取ること極むる無し。

<解説>
解題について、十注:張預曰く、「凡そ軍は行く所有り、先の五十里の内、三川形勢、軍士をして其の伏兵を伺わしめ、将は自ら地の勢いを行きて見、因りて之を圖り、其の険易を知る、故に師を行り、境を越え、地形を審らかにして勝を立つ、故に行軍に次す。」
篇名は地形であるが、この篇の構成は、六つの地形の在り方、六つの敗北の原因、将の在り方になっており、恐らく後の人によって書き加えられたものであろう。この篇の趣旨は末分の「彼を知り己を知らば、勝ちは乃ち殆うからず。天を知り地を知らば、勝ちは乃ち全かる可し。」という言葉に表されている。

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