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2020年05月31日00:22

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初めて落語を聞きに行ったときの話

はい、こちらYouTubeで脱毛の広告が流れてきたので見ていたら「脱毛サロンに通ったら憧れのYouTuberの彼の目に留まり、恋も仕事も順調に♪」という進研ゼミのような展開になり驚いた葉桜です。あの流れ、どこか懐かしくもあった。


YouTubeではもっぱらお笑いを見ているのだが、私には好きな落語家が1人だけいる。
柳家喬太郎師匠という落語家だ。
2010年、私がまだ大学生だったときに『笑・神・降・臨』という番組で一度みたのだが、初見でその魅力にはまった。
私もお笑い好きとして落語を趣味とするのもいいなと思い、他の落語家さんを探してみたりもしたが、もちろんどの落語家さんも面白いのだが喬太郎師匠より好きになれる人は現れず、私は「落語ファン」になることを諦め、「柳家喬太郎ファン」を名乗るようになった。

今回は、柳家喬太郎の落語を初めて生で見たときの話を書いていきたいと思う。



2019年2月。
私は『柳家喬太郎独演会 岡山公演』のチケットを握り、岡山駅の前に立っていた。


11月にチケットを取り、それからずっと楽しみにしていた独演会。


そんな期待に胸をふくらませる私の心にある言葉は、ただひとつ。





「会場の場所がよぉ分からん!!!」



今回、独演会が行われる場所は『岡山市立市民文化ホール』

行ったことのない場所な上に、『岡山市民会館』『岡山文化プラザ』など似たような名前の場所が複数ある。
人に聞いてみても、たいてい一番有名な『岡山市民会館』の場所を教えられる。

困った私は「少し早く行って場所を確認し、万が一違ったらタクシー拾ってかっ飛ばしてもらう」という決断とも呼べぬほどベタな決断をした。


岡山駅から、歩いて約30分。
少々遠いが、天気も良かったので歩くことにした。
グーグルマップを見ながら目的地へ向かう。
のだが、ちょうどその日、職場の先輩であるモモコさんが歯周病研究会の講演会に出かけており「セミナー面白いよ!」「歯周病治療のノウハウがうんぬん」とセミナー実況をLINEでスタッフ全員に送ってきており、しばしば中断されるグーグルマップ。


車に轢かれそうになること3回、川に落ちそうになること1回、(やめよう、歩きスマホ)ようやく目的地に到着。

入り口のところにデカデカと柳家喬太郎のポスターが貼られている。
よかった、場所はここでいいようだ。

早めに着いてしまったので、近くで待つことに。
喫茶店でもないかと思ったが、まわりには営業時間外の銀行くらいしかない。
ものすごく辺鄙な場所にあるため、2月の寒空の下、開場を待つ。

開演30分前に開場となり、入室。

途中ロビーでCDやDVDの販売をしていたので、DVDも購入して席で待つ。

購入したDVDを眺めたりパンフレットを眺めたりして「うへへ」と怪しい笑みを浮かべながら過ごしていた。

徐々に席も埋まってきた、その頃。


ここで事件発生。


私の左隣に男性2人組が座ったのだが、この2人がとてつもなく恰幅がよい。

私、身長150cmと小柄なので今まで気がつかなかったのだが、会場の椅子が狭い。
一般女性でぴったり、男性でややきつめ、それを越えるとパッツパツといった狭さ。

しかも季節は真冬の2月だというのに、夏の更衣室のようなにおいがする。

たまたま隣の席に座っただけの人のことをここまで悪く言うのは本当に心苦しくはあるのだが、するものはするのだ。

そして喫煙者特有のにおいもする。
体全体が「数年にわたりタバコを吸い続け、そしてつい先ほども一服かまして参りました」と語っている。
完全に酸化した油汚れと、ニコチン・タールの抽出エキスを足して2で割らないようなにおいがする。

かくして葉桜は「狭い」と「くさい」のダブルパンチがふりかかることになった。
マジか。結構楽しみにしていた日だったのに。
そう思い、ふと前方を見る。

すると、5列ほど前の席に、全盛期の安田大サーカスHIROを彷彿させるような体型の男性と、その隣に標準体型の男性が後ろから見ても分かるほど、それはそれは苦しそうに座っているのが見えた。
その姿は反発しあう磁石のようであり、なんとか文字でその様子を伝えようとすると『くじらの潮吹きのマーク』という言葉が浮かんだのだが伝わるだろうか?


自分より辛い状況の人をみると、心は救われるものである。

少し心が軽くなった私の耳に、左の席の男性の声が届く。


男性A「この会場、前にも来たことあるけど、相変わらず狭いなぁ」

男性B「狭いっすねー」

男性A「おー、でも俺も狭いけどさー、隣の人、もっと狭いと思うわー」


私は先ほどまで彼らを罵倒した自分を恥じた。
自分が辛いとき「この席狭い」という感情だけで終わらせず、隣の人のことを考えられる人間が何人いるだろうか。
自分が辛いときに他人を思いやれる人間が一番凄いと思う。

席が狭いのが何だ。
私なんぞ、もともと身体が小さいのだから、少々身体を縮こませ、折りたたみ葉桜となればよい。

においが何だ。
反対方向を向き、浅めに呼吸をすればよい。


少し人間的に成長できたような気持ちになったところで、開演。

初めての落語公演は、とても楽しかった。
ちょくちょく岡山ネタを入れてくれたり、確実にテレビではできない話をしてくれたり。
あっという間の2時間。
とても充実した1日だった。

終演後、とても満足して席を立った私の目に、先ほどの『くじらの潮吹き』コンビが互いに背伸びをしているのが見えた。
心の中で思う。
「お疲れ様でした」「そしてありがとう」「あなた方のおかげで楽しめました」と。

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