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mixiユーザー(id:168303)

2020年02月19日01:58

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パラサイト 半地下の家族

カンヌ映画祭のパルムドールをとっただけではなく、アカデミー賞4部門をも受賞したポン・ジュノ監督の韓国映画。もちろん韓国初アジア初の快挙だろう。

格差社会や構造的貧困や不条理を描いている映画だが、同じようなテーマでパルムドールをとった「万引き家族」と違うのは、スリル、サスペンス、ホラー、コメディ、すべての要素があり見ていて楽しめるところだろう。たとえるなら「韓国版タランティーノ」か。

脚本も実によく練られていて、インディアンごっこやボーイスカウト、アマチュア無線、豪雨災害、石(山水景石)など、象徴的な事象をうまく絡めてストーリーが展開されていく。

キム家は半地下家屋に暮らす4人家族。当然日当たりは悪く下水が逆流しないように家の一番高いところにトイレが設置されているという特殊な造り。両親は失業中だがキム家の兄妹はたいへん優秀だ(上の階に住む隣人のWi−Fiを盗用してネットの豊富な知識を得ている)。貧しいため進学もできない彼らだが、自分がおかれている環境を嘆きくすぶっているわけではない。いかにして這い上がるか。チャンスを得たら決してそれを逃さないで自分のものにする行動力。物おじしない大胆不敵なパワー。それがなければ過酷な競争社会で生き残っていけない。このような「生きぬく力」では、日本人は韓国人に大きく劣っていると思う。

が、貧困家庭に生まれた子どもたちがその有能ぶりを発揮できるのはいわゆる詐欺の世界で、彼らの能力が正当に評価されるべき場はいまの社会にはない悲しい現実。彼らがやっていることは、許しがたい反社会的な行為だ。が、我々は彼らをなぜか憎めない。キム一家がなみなみならぬ絆と結束力で上流社会に入り込んでいく展開には思わずエールを送ってしまう。たてまえでは人を騙すことは悪いことだ、と思いながら、この世はまさに「正直者がバカを見る」「まじめに生きている人が救われない社会」とわかっているからだ。そしてキム一家に寄生(パラサイト)されてしまう裕福なパク一家を気の毒に思うことで、我々は自分の立ち位置の(格差社会においての)バランスをとっていることに気づく。

どこの国にもカーストは存在するだろうが、それを象徴しているのが生活レベルの違うパク家とキム家の居住場所と水の流れである。
下流(半地下)と上流(富裕層)の対比。上流は高台に大きな家を建てて住み、下流は低い土地の狭い家に住む。大雨が降ると、高台の家は影響ないが、汚い水はすべて下流へ流れていく。
ベッドの上の上流家庭の娘パク・ダヘとベッドの下に潜り込んで息を殺す彼女の家庭教師キム・ギウ。変わることのないカーストを象徴している。
それでも半地下の生活者はまだ地上に出ることができるし、チャンスをつかんで成功すれば高台に住むこともできる。しかし、衝撃的なのは半地下どころか完全なる地下の奥深く隠れ住む人間がいたこと。自分たちの生活レベルはひどいものだと思っていたが下には下がいるものだ。全地下の人間は上層の人間が留守のとき以外外へ出ることすらできない。そんな環境でよく生きていられるなと思うがその閉鎖空間を自分なりに改造しそれなりに暮らしている。住めば都という言葉があるように、人間は工夫次第でどんな環境にも適応して生きるものだなぁと感心させられる。

今まで上流への寄生(パラサイト)しか考えてなかったキム家が、やがて自分たちより下の人間を意識するようになっていく。差別というのは意図的に上から目線で下の奴らを蔑む行為だけではない、もっと原初的なこと=つまり違いを意識することから生まれていくのだ。たとえば、パク家の主人(IT企業社長)ドンイクが彼ら特有のにおいを意識して「耐え難いにおい」と言う。社長は彼らの正体を知らないから故意に差別発言したわけではないがこういう無意識な差別が澱のようにたまっていった結果悲劇が起こるのだ。ドンイクは殺される理由などなかったはずなのに・・・

ラストで、多くの人が死に、天罰が下って終わりか・・と思ったら、そこからの展開がまたおもしろい。どん底からの再生の光明が少しみえるのだ。そして最後に「だったらいいな」と思わせる結末になろうとするが、あぁこれはやっぱり映画の世界なんだなとも気づかせられる。
映画はフィクションだ、という基本に立ち返って終わる。エンディングも完璧だ。

さすが韓国版タランティーノ!

キム家の父親役のソン・ガンホ。彼はポン・デジュン監督作品によく出ているそうだが、いい味だしていた。とくに彼の「におい」にまつわる演技は、そのにおい(半地下特有の生活臭)が実際に想像できたくらいだ。
母親役のチャン・ヘジン(藤山直美似)も最高だ。元砲丸投げの韓国代表選手でおばちゃん感がすごいが、腕の良い家政婦にもなりきる。ちなみに息子ギウ役のチェ・ウシクは加瀬亮似。娘ギジョン役のパク・ソダムはさぁ若いころの田中裕子・・か?
ほんとにこの半地下の家族は仲良しで普通なら思春期の子は親と口もきかないのに、息子が親の演技指導をしたり緊急時の連携プレー(パク家留守宅のらんちき騒ぎの痕跡を一瞬で消す)も息が合っていてすごい。狭い半地下でプライバシーもなく一緒に暮らしていたらお互いをさらけだして仲良くするしかないのかもしれない。一つの目的に向かっていく(同じ秘密を共有する)ときはこんなにも家族はイキイキと結束できるものかとも思うし、貧しいことは家族の距離を縮め豊かなことは逆に家族の距離をはなしてしまうのだとも知る。人間関係がギスギスし家族がバラバラになっている現代社会は豊かさの裏がえしなので、この家族の絆がいわゆる事件後もつづくことは私たちにとって一種の希望でもある。
エンディングで流れていたフォーク調の曲(韓国語)がボブ・ディラン風で、「誰の曲だろう?」と思ったが、歌詞を書いたのはポン・デジュン監督、歌っているのはチェ・ウシクだそうだ。
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コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年02月20日 06:48
    未見なので、ネタバレするとマズイと思い、ざっと斜め読みさせていただきました。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年02月21日 01:21
    デコっ八さん。私も予備知識入れずいきなり映画を観ました。次に何が起こるか知らない方が絶対楽しめます。

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