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2019年07月16日09:33

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ソロ2(インドネシア8)

 18.000以上の島々で成り立っているインドネシア、当然のことながら、各地に各王朝が建っては滅び建っては滅びの歴史があります。
 ジャワ島は特に、(比較的)大きい、島内の移動が容易、港も平野も山もある。で、歴史的に、栄えると同時に政権交代の激しい場所でした。そこに中国やらオランダやらイギリスやらの利権も絡んだから大混乱。王家の権力を牽制したかったオランダが強引に分家を作っちゃったりな。
 現在、一番正式な王様(と言うしかない)は戴冠と同時にジョグジャカルタ特別区の知事になるそうです。共和国の中でここだけ選挙が行われないから『特別区』。
 で、分家筋の当主はジョクジャの副知事になるんですが、昔は両家ともソロに住んでいて、今も分家はこっちにいる。だから、京都ジョグジャに対する奈良ソロ(スラカルタ)な訳です。
 のんびりした地方都市で、一般公開されてる王宮が2つあって、バティックの名産地です。

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 一番最後が大事なんだ!和服を趣味にしてるとどうしても布フェチになる、そして布フェチにとっては夢のような所。安物のプリント地から何十万円もするシフォン手染めまで、ありとあらゆる布が見られる。そして売ってる。制作過程まで見れちゃう。
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 とんでもない量の布の洪水で、「この中から1枚選べ」と言われても、困り果てるしかありません。そもそも、布の塊を持って帰ったとしても、それを服に仕立ててもらうのが日本では大変だしな。
 アテにならない助言ですが、サロン用1枚が幅1m×長さ3mくらいです。これだけあけばワンピース1着は作れます。いっそのこと、まず予算を決めて、「○○Rp前後のサロン1枚」と言って店の人に適当にイチオシを選んでもらいましょう。その中にピンとくるものがなかったら次の店へ。そうでもしないと、何日居ても埒があきません。

 バティックの良し悪しを見分ける目を養うには、『ダナル・ハディ邸宅』に行くのが早い。それまで取っ散らかってたバティックを収集し、様式を整理し、制作し、王家にも作品を収めていたショップオーナーのコレクション(の中の1/10‥‥)が展示してある博物館です。
 布フェチは何時間でも居れてしまうので注意。自国民は「バティックなんて今更」で、外国人観光客は「うん、いいよねバイテック」程度な訳で、平日昼間ならほぼ独占です。幸い?入場料に含まれているガイドさんが次へ次へと促してくるので、「あああまだ見てない布が〜」と後ろ髪引かれながらも、なんとか2時間に納められました。
 最後にショップが来るので、今でも品質に定評のあるブランド“Danar Hadi”(空港免税店にも入ってるよ)でお買い物するのもいいかと。私はもう色々見過ぎて何がなんだかよく分からなくなっていて、ここで安価な「プリント染め」と高価な「本式ろうけつ染め」の二反を購入しました。片方はインドネシア内で簡単なサロン風のスカートに仕立て、片方は日本で服を作ってもらう予定。
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 残念ながら内部は写真撮影不可なので、王家の人達だけが着用を許されたバティックとかの精密さ、伝えることができません。
 「同じモチーフの三枚の布がありますね。布も染料も同じです。この中でどれが一番高価か分かりますか?」と言われて、そら手間暇を考えるなら一番荒っぽく見えるコレだろ?と指さしたら正解。
 布の全部が直径3mmくらいの円で埋め尽くされて、それで柄も描かれてる。要は、アナログ漫画で、トーン貼るか点描で描くかと同じ理屈だ。意外な知識が意外な所で役に立つものです。

 正式な伝統によるバティックは三色しか使わないそうです。ブラフマーを現す黄(綿布の元の色)、ヴィシュヌを現す茶(木の皮を染色に使う)、シヴァを現す藍。黒に見えてたの、濃藍なんですねー。
 他にも、土地によって水が違うから茶や藍の色が濃くなったり薄くなったり、それを重ね染めしたり、触媒を使うとまた色が変わったり、で無数のバリエーションが。色だけでこれなんだから、模様に至っては複雑すぎてガイドさんの説明(英語)はほとんど理解できませんでした‥‥
 あ、保護した様々な種類の蝋が割れて、クラックが入るのを楽しむようになったのはごく近代とのこと。磁器の釉薬のヒビを愛でるような感覚らしい。味があるよね、ろうけつ染めの割れ部分。

 ちょっと面白かったのが、とある昔の求婚方法。男性が女性に矢のモチーフのバティックを贈り、女性は了承したら弓のモチーフのバティックを贈り返すそうなんですが‥‥
 矢モチーフにはアルジュナが描いてあるの(笑)
 うんうん、分かる分かる。本気でその女性が好きなのよね。でも「あなた一人です」とは言ってないのよね、あのモテ男は!実に都合のいい求婚方法だよ!!

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 と、いつまでも布にしがみつく自分を振り切って、二つある王宮へ。
 ソロの王宮は、17c〜王家の分裂を企んだオランダのテコ入れがあるので、随所にヨーロッパが入り込んでいて逆に面白いです。床に敷いた大理石タイルはイタリアから輸入したとか。それが川の洪水で一度泥が積もってしまって、茶色く変色してるとか。
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 四枚目は日本語ガイドさん。
「私、日本語と英語でガイドしてます。でも最近、日本人来ないね。久しぶりだからちょっと日本語下手です、ゴメンナサイ」
 いいえ、若い人たちが旅行する余裕すら失ってる、今の日本の経済低迷が悪いんです!あなたのせいじゃないです、こっちこそごめんなさい!!

 ここ、面白いのが、貴重な王家の調度品の中にさらりと「男性用貞操帯」とか(えーと、筒の先端にごついトゲトゲがあります。それで使用不可になる訳です)、「割礼した後に布にこすれないようにサロンを遠ざけるベルト」とか、妙に秘宝館ぽい展示品があること(笑)
 女性用貞操帯はヨーロッパでも見たけどね、男性用ってのは目から鱗だわ。平等でよろし。

 ただしここも、高価な展示品部分は写真撮影不可でなー。王族が神々への奉納に舞を捧げる時に使う黄金の装飾品、これで長年の謎が解けたのに、証拠写真がねぇだよ。
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 ワヤン人形の、男性のこの髪型。
 長い髪をうなじで一つに束ねて、テール部分を入れて、束ねた部分と頭上を噛み合わせ式の金具で留める。という24金の髪飾りが、実在したんだよ。女性には「バンスクリップの巨大変形バージョン」と言えば通じる?
 あと、バカでかい耳飾りは、実際にはイヤーフックとイヤークリップとピアスの合わせ技だそうだ。そうだよねー、このデカいのを耳朶の穴だけで支えるとか無理がある。

 ‥‥と思った所で、久は急に理解しました。ワヤン版で、カルナが父である太陽神から送られた不死を約束するアイテムが、黄金の鎧から黄金の耳飾りに変更された理由。名前(カルナ=耳。母親の体内から耳を通してとり上げられたことに由来)と併せて、このすっごい耳飾りが素地として存在したからだ。しかもこれが身体と一体化してたなら、毟り取ってバラモン僧(に化けたインドラ神)に喜捨した時に、充分痛々しいからだ。
 うわー、実物を見ないと理解できない事ってあるんだなぁ。
 伝統的な芸術を理解するのには伝統的な文化への知識が必要なんだなぁ。

 面白いなぁ。

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 ところで、インドネシアでは、私が困った時に英語で聞いても「インドネシア語は話せないのか?」と言うだけなのに、タクシーや土産物屋はガンガン英語や日本語で売り込んできます。なのにちょっと突っ込んだ質問をすると途端にまた「インドネシア語は話せないのか?」。
 この落差にちょいイライラしていまして(いや、言葉さえ通じればいくらでも助けてくれそうなのに、それができない自分へのイライラでもあるんだけど)。この古都にある有名な骨董市で、ワヤン関係を探していた時にもさんざっぱらかまされて、つい鬱憤が爆発してしまいました。

「カルナ持ってこい!言い値で払ったるわ!!(日本語)」

 「カルナ?」「カルナ‥‥」ざざっと在庫を探し出す商人たち。ふん、無いよ、私がさっき全部探したよ。無いんだよ畜生。
「これ!」
「それはビーマ」
「これ‥‥」
「それはクリシュナ」
「これこれ!!」
「シータじゃねえか!物語も性別も違うわ!!」
 正直、とっても素敵な銀細工のクリシュナのブローチがあったのですが、この人、ドリョさんと並んで『祟る』ことで有名でして。ドリョさんに祟られる覚えは全くないが(大好きだもーん)、この人は‥‥私が内心でどう思ってるのか知られたら怖い‥‥元々神様だし。
 なおも売り込もうとする人達に、にっこり笑って英語でもう一度。
「カ・ル・ナ。それ以外は絶対に買いません」
 なんとも良い虫よけになってくれました。ありがとうありがとう、まさかあなたに助けられる日が来るとは思ってもいなかった。
 30年来の片思い、「虫よけ」の一言で片付けるのは、なんとも切ないもんがありますが(笑)
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