◆マンスプレイングって言葉は、苦手で、嫌い . . .
もうひとつ、うれしい偶然。
「9月11日によせて」で、ユダヤ教徒の男性に命を救われたイスラム教徒の青年の手記について書いた。
そのときに以前読んだ『災害ユートピア』という本を思い出した。
そして発見。
『災害ユートピア』の著者、レベッカ・ソルニットは、「マンスプレイング」(man+explain)という、最近わたしが苦手とする言葉と関係の深い人だったのだ。
そんな偶然をうれしいって形容するのは変かな? でも、なにかが不思議に繋がって、苦手の理由をあらためて考えたり、嫌いだって表明する機会を持てるのは、やっぱりすてきだ。
さて、その日のツイート、4つ。
わわ、レベッカ・ソルニットって「#マンスプレイング」という言葉の生みの親なんだ? 彼女の書いた「Men who explain things」(解説してくる男たち)という寄稿記事(ロサンゼルス・タイムズ)が、この かばん語 が誕生する "きっかけ” になったって。エッセイ集も出ているらしい。
あらら、エッセイ集、日本語になってる。『説教したがる男たち』( ハーン小路 恭子訳、左右社)2018/9/7 って、出たばっかり? わわわ、すてきな偶然。
https://www.amazon.co.jp/dp/4865282084
『災害ユートピア』のソルニット、すごい人だったんだ。
ああ、だけどわたし、「#マンスプレイング」という言葉は好きじゃない。たしかにマン(男)にありがちかな . . . ? でも、女の人たちだって、めっちゃお説教してくる。わたしが頼りなくて物知らなそうで、つい教えたくなっちゃうんだろうけど。
ほとんどは親切心から。けど、あんまり偉そうにされると、うげげ。でも、そんな行いは、誰がしてもNGだから、性別要素を抜いた言葉もほしい。
っていうか、度を超した「解説好き」「教えたがり」でいいか? それに、わたしもちゃんと嫌な顔して、断ればいいんじゃん、ね。
以上が、「マンスプレイング」って言葉に対する、わたしの率直な感想だ。
さて。左右社の『説教したがる男たち』を見てみよう。
内容紹介のはじまりは、次のよう。
「相手が女性と見るや、講釈を垂れたがる男たち。そんなオヤジたちがどこにでもいること自体が、女性たちが強いられている沈黙、世界の圧倒的な不公正そのものだ。」
相手が女性と見るや、って、たしかにある。わたしも数え切れないほど経験している。だけど、前にも書いたように、それは、相手が年下と見るや、高卒と見るや、水商売やサービス業と見るや、自分よりも弱いと見るや、などなど、みんな当てはまるし、加害者もけっしてオヤジに限ったことじゃない。
だいたい、「オヤジ」ってどんな人たちのことさしているんだろう?
もちろん、著者のレベッカ・ソルニットは、フェミニズムを、男性をも解放し、生きやすく変えていくものと考えているだろう。この本を最後まで読めば、暴力やレイプや虐待・搾取を生む文化や構造自体を批判し、よりよい未来への提言をしているとわかるに違いない。
それでも、日本語版の『説教したがる男たち』には、胸がざわざわする。
原題は、”Men Explain Things to Me”
このExplain(説明する)を、”説教したがる” と強めに訳し、その上、帯には「殺人犯の90%は男性。」と書かれているのだ。
売りたい気持はわかる。表紙、とくに帯は、キャッチーでなくちゃ。
だけど、表紙に「殺人犯の90%は男性。」だなんて . . .
呪いの言葉だ。男の子にも、女の子にも。
ついでに、90%というのは、いつのどこの数字だろう? アメリカ?
法務省の「殺人事件の動向」によれば、殺人による検挙人員について、「男女別では,男子が多いものの,女子の比率も平成23年において24.5%に及んでいる」とある。
http://www.moj.go.jp/content/000112398.pdf
おそらく最近でも、日本では、男性の割合は8割弱のはず。
本のこととは別に、マンスプレイングという言葉が、適用範囲を広げながら一人歩きしているのも、心配だ。
すでに、「ヘイト」や「セクハラ」と同じように、本来の意味と離れて、ただ相手方を攻撃したり、くさして嘲笑うためだけに、使われはじめている。
そういうの不毛だ。ううん、実りが望めないどころか、ますます溝を深めるだけ。
言葉のひとつひとつが、断罪や復讐のためじゃなく、理解し合うために、人を救い、守るために使われますように。
◆『説教したがる男たち』( レベッカ・ソルニット著、ハーン小路 恭子訳、左右社)2018/9/7
https://www.amazon.co.jp/dp/4865282084
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