先日、この回の再放送を見たのだけれど、強烈な違和感を覚えた。
利根川と地下水脈で繋がっているこの沼は、昔はとてもきれいだったそうだ。しかし、10年前に水草が大量発生したので、水草を食べるソウギョ(中国原産)を100匹放流(何やってんだをいw)したところ、1年ほどで水草はなくなったが、植物プランクトンが大量発生する「汚い」沼になってしまったとか。
そんな沼の水を抜いてみると、ソウギョは1匹もいなくなっていたが(当たり前だw)、植物プランクトンを食べるハクレン(中国原産)が大量に確認されたほか、チャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ、北アメリカ原産)や大量のブルーギル(北アメリカ原産)も確認された。いずれも、利根川から入ってきたものと考えられるそうだ。
番組では、この沼を「外来種の巣窟」と呼び、「外来種ばかりのこんな沼はあってはあらない」という演出をしていたのだが、いやちょっと待てよと。
植物プランクトンが大量に発生するところに、植物プランクトンを食べるハクレンが集まるのは極めて「自然」だ。また、チャネルキャットフィッシュやブルーギルが、在来魚との生存競争に勝利して池に棲みつくようになったのも、これまた実に「自然」なことだ。
私に言わせれば、この沼は「外来魚の巣窟」などではない。在来の植物プランクトン、中国由来の魚、北アメリカ由来の魚の三者協働(w)によって実現した、立派な一つの生態系だ。「外来生物によって創られた生態系を認めない」という姿勢は、「棲みやすいところに棲む」という生物たちの営み、つまり「自然」の否定に他ならない。
「外来魚を駆除して在来魚だけの水辺を目指そう!」というスローガンは一見、自然を大切にしているように思える。しかし、それは全くの誤りだ。こうしたスローガンは、言い換えれば「外来生物が創った生態系は積極的に破壊すべきだ」ということだ。何のことはない。「環境保全」も、人間の思い通りに自然をねじ伏せようとする意思の現れでしかないのだ。
※このあたりの議論は、フレッド・ピアス『外来種は本当に悪者か』(草思社文庫)に詳しい。
そもそもの事の起こりは、水草を「駆除」するためのソウギョ放流にあるのだから、ソウギョを放った地元の人たちの「軽率さ」こそ批判されるべきはずだし、なぜ10年前に水草が大量発生したがを調査するのが先だろう(おそらく人為的な何かが原因だとは思うが)。もしすでに調査しているのであれば、その結果を番組で紹介すべきだ。
それをせずに外来魚を悪者に仕立て上げるのは、自然を理解する妨げにしかならない。
追記(2020.05.09)
「あれこれ情報カフェ」というブログで、この沼で確認された生物の詳細が紹介されていた。番組では明らかにされていなかった、貴重なデータだ。
あれこれ情報カフェ:【池の水ぜんぶ抜く大作戦】利根川とつながった池で巨大魚ハクレンを大捕獲! 浅草花やしきの池をピカピカに〜浜口親子・AZUMAXが参戦! [自然・生物]
https://arekore-joho-cafe.blog.ss-blog.jp/2019-02-22
確認された生物は以下の通り。
◎在来種:モツゴ 26匹
ヌマチチブ 12匹
スッポン 3匹など
11種類 140匹
◎外来種:ハクレン 12匹
アメリカナマズ
ライギョ 2匹
ブルーギル 9338匹
ブラックバス 6匹
ゲンゴロウブナ(国内外来種)
コイ 28匹
ヘラブナ
ソウギョ 3匹など
11種類 9532匹
ソウギョ、少しだけいた(笑) ってか、外来種のほとんどはブルーギル。あとは全然まともやん。それから、コイも外来種にカウントされているのに強い違和感。中国原産の体高の高いコイは、史前帰化種で在来扱いだったはずだが、基準が変わったのか?
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