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2019年08月19日23:17

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自然と異教と幻想と

アルジャナン・ブラックウッド『木の葉を奏でる男』を読了。

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「柳」「ウェンディゴ」「微睡みの街(いにしえの魔術)」は既読なのでスルー。「雪のきらめき」「死人の森」も既読だったけど気づかずに読んだ。というわけで、未読の未邦訳作品のみ感想を。

「転生の池」
転生と異教の生贄の儀式を扱った作品で、ブラックウッドなのだけれどマッケン的な雰囲気を濃く感じる話だった。褐色の若い娘や異教の儀式と男女が絡んでいるからかもしれない。一応ハッピーエンドだが、主人公の心情的には完全に後味が良いとは言い切れないのも特徴。
「砂漠にて」
エジプト好きな著者の推しをひしひしと感じる話。砂漠の広大無辺さと永遠を主軸に、生と死の観念、そして余命の少ない男女の相互理解と交錯が永遠へと収束する、ひっそりとしたラストが印象深い。
「オリーブの実」
最初はブラックウッドにしてはユーモアのある喜劇的な話かなと思いきや、オリーブの実と木立を味付けに、謎を秘めた若い娘が主人公を誘い、妖しく甘美な絡みで夜の幻想を過ごす。はたして顕現した存在は牧神的なものなのか。男女のいたずらな甘いムードで締めるのは珍しい。
「木の葉を奏でる男」
牧神パンを信奉する不思議な男にまつわる幻想譚。森の描写と、木の葉を奏でる男と雑種犬の寂しい空気と、その最期が胸になんともいえない余韻を残す。
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