CMや番宣で紹介されるのは、軍勢との戦闘や大洪水のシーンといった、CGを使った壮大なシーンばかり。娯楽色の強いスペクタクル巨編と思っていた。
しかし派手なシーンは全て前半で終了。後半は「方舟という密室 精神的におかしくなった父親 暴力に怯える家族」と、完全にサイコスリラーだった。
ノア役は「グラディエーター」のラッセル・クロウ。筋肉モリモリのラッセル・クロウが、病んだ目で家族を監視する姿は、下手なモンスターなんかよりも恐ろしいわけで、ラッセル・クロウのアクションでスカッとしたくて見た人は、さぞや困惑しただろうと。
「清らかな世界を作るために人類は滅ぶべき」
ゲームやアニメのラスボスが言い出しそうな厨二理論なわけで、そんなことを言い出すノアには、最初の内はまるで共感できなかった。
しかし、「息子が可哀想だと思わないのか」「孫が可愛くないのか』と、まるで身内のことしか頭にない妻から、一方的に責められるノアの姿を見ているうちに、なんとなく同情めいた気持ちにはなった。飲んだくれたくなる気持ちもわかる。
最初は「あなたの苦しみは理解しているわ」とか言っていたのに、「私が悪かったのよ(半ギレ)」「お前が罰せられろ。苦しめ(全ギレ)」で、最後の最後にノアを抱きしめて「愛してるわ」の手のひら返し。あまりに等身大過ぎるノアの妻、ドン引き。
何かあるたびに「嫁が欲しい」ばかりの次男も、ずいぶんと頭のなかがピンク色だと思うけれど、行方不明になった次男を探しに行ったはずなのに、次男そっちのけで森の中でセックスに励んでいた長男夫婦も大概だと思うよ、
何かあるたびに「野いちご食べたい」の、ノアの祖父。ドリフターズのハンニバルかよと。
特に何も問題行動を起こしたりしてないのに、ノアから身勝手扱いされる三男の不遇。
というか、作中でノアは心優しい人と言われているけれど、その割には映画冒頭で命乞する野盗を殺しているという事実。
とにかくノア一家が色々とアレ過ぎて、敵役のトバルカインの方がマトモに思えてしまうあたりが厳しい作品。さぞや教会からクレームが来ただろうなと思ったが、ウィキペディアを見る限りでは、評価する教会も結構あったらしい。わりと懐広いなキリスト教。
まぁスペクタクル方向に過大に期待しなければ、ちょっと長いけれど(本編二時間超え)普通におもしろい作品。借りようと思っていた「オール・ユー・ニード・イズ・キル」がなかった時とか、新作4本で800円で最後の1本をどうするか悩んだ時とかにオススメ。
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