北極ポートに進軍する解放軍と、それを阻止すべく連邦軍はカルナック山脈に防衛線を構築。ここに雌雄を決する最後の決戦が起きる。
どうしても急がなければならない解放軍主力は、最短ルートとなる中央のＶ字谷の突破を試みる。しかし連邦軍指揮官もその点を見抜き、寒冷地用CBアーマーを配置。Ｖ字谷の防備を固め、解放軍を跳ね返す。
遂にラコックが牙を剥く。ドナン不在の間の暗躍が、これから徐々にバレて問い詰められて行くのは明らか。ドナンの命も長くはあるまい、との読みもあったかもしれないが、それまで溜まりに溜まった鬱憤が一気に爆発。
『今や我々若者達の時代であり、閣下やフォンシュタインの時代はもう終わったのだ』とまくし立てた。
気分良く喋っていたラコックだが、ここで元大学ラグビー部キャプテン、レークにしこたまに殴られる。
またかよw ザルツェフに続き２人目。スタッフの中でも『そろそろまた１発殴っときましょうよ』みたいな意見が出るのかな。
しかしこの後のラコックがまたカッコ良い。
『今回だけは見逃しましょう。しかし、次はいいですね？』と凄むのだ。
因みにラコック、ザルツェフに殴られた時は口元の血を拭いながら
『私に赤いモノを着けましたね』だった。
中央突破を断念した解放軍は別ルートに迂回して連邦軍を撃破。山頂まで快進撃。反比例するかの如くカルメルの心配はウナギ登りだ。
『このまま行けば地球連邦軍としてもそれなりの対応しなくてはならなくなるでしょう。私としても最悪の事態は避けたい』なるラコックの言葉が脳裏をかすめる。
ブリザードガンナーが初登場。雪すさぶ薄暗い森の奥に蠢めく、巨大な蜘蛛の様な不気味な影。インパクトの強い演出だ。やはり新兵器のお披露目はこうじゃないとね。
４つ足による低い接地圧で雪上を自在に移動するブリザード・ガンナー。多脚型の利点此処に在り！と言いたい所だが、普通にダグラムに倒される。しかも２対１で。(相手は主役メカだから仕方が無いが)
病状が安定してるタイミングでドナンを地球に移送しようと試みるが、北極ポートまで移送途した所で容態が悪化。逆に地球から家族を呼び寄せる事になる。
因みに、地球とデロイアの間はワームホールを使って簡単に往き来できる様だが、そんなに素早く移動できるのだろうか。
せめてデロイアの玄関口まで閣下を見送りたいと同行したフォンシュタインは、
『解って欲しい。閣下のそばにいたいのだ』と心情を曝け出す。そして、眠っているドナンと２人きりになった時、自分自身に語りかけ、確認するかの様に心の内を語り出す。
『私は、私のやり方でこのデロイアを治めます。私はこのデロイアで生まれ、そして育ったデロイア人です』代表の独白の最中に目を覚ますドナン。彼の決意を聞いて安心したかの様にそのまま黙って目を閉じる。信念を持つ男同士の心の繋がりみたいな名シーンだ。
第６軍司令官ブレナーの元へ出向いたフォンシュタインは『我々の意地を通させてくれ』と自分達第８軍への援助を断る。ブレナーは承諾しつつも『ラコックはデロイア人同士を戦わせて共倒れさせ、その隙に自分達若者が古い体制に取って変わろうと画策してる』と忠告。それを聞いた代表は腹を決めた。ラコックの部屋に怒鳴り込んで１発お見舞い。お〜、ラコックまた殴られたわw ところがここでもラコックの返しが光る。
『代表は節度のあるお方だ。これ以上事を荒立てる事は無い』と言って、止めに入ろうとした兵士達を制するのだ。アニメのキャラで３回も殴られるってあまり見た事が無い。しかも殴る方も殴られる方も立派な大人の男。それでいて毎回妙にカッコ良く返すのも不思議な凄さ。
『８軍が壊滅状態に陥っている事を知りながら、しかもあれだけの補給物資と地球連邦軍が到着している事を知っていながらなぜ前線に支援部隊を送らなかった？』と問い詰めるフォン大佐に対し
『ですから、貴方のご意向に従ったまでです』とカエルの面に小便のラコック。
(いや、それはラコックの言う通りでは…？)
『とぼけるな。貴様は地球人の中でも最も卑劣な地球人だ』と噛み付くと
『それは嬉しくない表現ですね』と流石に顔を曇らせる。
『貴様は第８軍と解放軍を戦わせ、お互いを弱体化させようとしている。デロイア人同士を戦わせ、このデロイアを牛耳ろうとしているのだ』とまくし立てるが、ラコックは不敵に笑うばかり。
『笑ったな？今頃気付いても遅いとワシを笑ったか。ワシを見くびるなよ。このワシにデロイアの血が流れてる事を忘れるな。貴様の如き地球人の意のままにはさせん。
ドナン・カシムの威を借る狐か。小賢しくも閣下を裏切ってカルメルと手を組むか。自分の事しか考えない奴にデロイアの明日を任せはせん』とまくし立てる大佐。
『代表、時代と言うものは動いているのですよ。今はもうドナン・カシムやサマリンや貴方の時代ではないのですよ』と上から目線の25歳。
『私利私欲に走る貴様の如き若僧など叩き潰してやるわ』と鼻息を荒げるが、
『崩壊寸前の８軍の１指揮官である貴方に何ができますかね』と冷酷なラコック。ところが彼の涼しい顔もここまでだ。フォンシュタイン起死回生の一言が飛び出す。
『例えワシがドナン・カシムの傀儡と言われようとデロイア州政府の代表であることは事実だ。このワシが独立推進派のサマリン政権を認めたらどうなるかな？
みすみす貴様の手には委ねはせん。私はデロイア州政府代表としてサマリン達と話し合いの場を作る。
デロイアの今後を、デロイア人同士で語り合う為にな』
これは大逆転の１発。いやマジで。小者臭著しいフォンシュタインにして、まさかこんな隠し玉を用意していたとは…
こういうのがあるからダグラムはおもしろい。そして、『作品』ってのは少なからずこうしたプロットの積み重ねである。こうした小ネタを作り出して組み合わせる努力を放棄すると、ただ単純に『凄く強い敵』が現れるが『味方の大活躍』でやっつけた、みたいな大味な話となってしまう。北斗のナントカなんてマンガとか、それを延々と繰り返してるだけだった。
フォン大佐がヘリに乗り込もうとすると、ラコックは血相を変えて追い掛けて来て、それを止めようとする。先程までの高飛車な態度は何処へやら、必死に頼み込むが、
『今更そのような情けない声を出さんで欲しい。君らしくもない。ハハハ…』バッサリと斬って捨てるフォンシュタインの高笑い。日本中のダグラムファンの溜飲が下がった瞬間だろう。
ここの脚本は抜群だ。この一連の独立騒動を一番最初からおさらいすると、まずドナンが絵を描き、フォンシュタインが主役となって独立運動を仕掛ける。それに呼応した独立推進派が水面下から続々現れる。
しかし独立運動は実はフェイクで、フォン大佐は直ぐに連邦側に戻る。一方で、釣られて飛び出してしまった独立派は摘発される。(コレがドナン達の狙いだった)
サマリンを中心とした独立推進派(ゲリラ)と、フォンシュタインを中心とした独立阻止派(連邦軍)の図式で内乱状態となる。
ゲリラの内部でも徹底抗戦を主張する強硬派と、適当な所で手を打ちたい穏健派に徐々に分離。連邦軍は後ろ盾のドナンが倒れて正規軍のフォンシュタインが覚束なくなると、それを転覆させ自身が実権を握りたいラコックが内側から揺さ振りをかける。サマリンとフォン大佐が戦ってる裏で、秘密裏に穏健派のカルメルと手を結ぼうと画策。(今ココ)
そこでフォンシュタインは、サマリンと和睦して事態を一気に収束させようとジョーカーを切ったのだ。これやっちゃったら無敵だよね。幾らラコックだ、カルメルだと言っても所詮は『脇役』。『主役』であるフォンシュタインとサマリンが『右』と言ったら全て『右』になってしまうんだから。
後から冷静に考えてみれば、あの抜け目の無いラコックがどうしてコレに考えが及ばなかったのかと疑問に思わなくもないが、しかしまぁこの大逆転劇には目からウロコが落ちたわ。いやお見事。
ヘリで飛び去ろうとするフォンシュタインに対し、ラコックは半狂乱に叫ぶ。
『大佐、お戻り下さーい。裏切りだー！大佐が裏切って敵に投降するぞ、彼はデロイア人だ、地球連邦の我々を裏切った。撃て撃てー撃てー!!』迫真の名(迷)演技。声優さんが良い仕事してるんだわ。適度に棒で、如何にも演技っぽい胡散臭そうなセリフ。
兵士から奪った銃を乱射して数発が命中。さすがに軍用ヘリコプターが小銃弾数発で撃墜しないだろうが、はて、ここからどう展開するのかと思ったら、最後はなんとロケットランチャーをブッ放ちヘリを撃墜してしまう。いやぁ〜やっちまったな。ラコックもここが勝負所と見たんだろな。てかフォン大佐が最後に切ったカード。アレを見せられてはもう他に手があるまい。しかしヘリを撃墜し、デロイア第８軍の指揮官でありデロイア州代表であるフォンシュタインを殺害しておきながら、
『これは事故だった』と全軍に口裏を合わさせるなんて不可能でしょ？
回想シーンでは地球の雪山のロッジでくつろぐカシム家の面々。ドナンとフィナ、レークとサラ、オーセル財閥の夫婦。カシム家のクリンとオーセル家のデイジーは２人でスノーモービルで戯れる。青春の１コマですな。
和平交渉の会議でラコックにせっつかれたカルメルは、遂にクーデターを決行。ゲリラのリーダー達が集まっての席で、拳銃を突き付けてサマリン達を軟禁。事実上のリーダーとなって和平交渉を進める。
この時のいざこざで幹部の１人ジョークが死亡。
北極ポート直前で解放軍は進軍中止命令。
カルメルと密会するラコックは、机の上に腰掛けたりと随分ラフ。大きな仕事をやり遂げた達成感や満足感、カルメルに対する仲間意識などが微妙に表れてる。
カルメルがタバコを進めると『いえ、私はこちらを』と言ってブランデーを飲み、
『私だってギリギリのところで勝負してるんですよ』と、らしくない弱音を吐く。
『良かった、あなたも人間だった』と安堵するカルメル。実に良く『人間』が描かれている。こういう描写があるとキャラに厚み(存在感)が出る。
一方で、ドナンに最後、一目でいいからクリンと会わせてあげたい、と考えたレークがラコックに頼み込む。
地球のカシム家からはフィナとラビンが駆け付け、久し振りに家族が再会。
と言っても、ラビンはここでは浮いている。ドナンとフィナとクリンの３人はれっきとした家族だけれど、ラビンは父親のドナンとしか血の繋がりは無いし、家族全員と仲が悪い雰囲気だしな。そもそもラビンてエリート意識だけは高いけど、実力がそれに伴ってる様な描写は無く、それでいて感情的で常に怒ってるし、やや冷酷な感じもある。ハッキリ言って何の取り柄も無い。ブサイクだし。
家族が再会すると、ドナンはクリンと２人きりにしてくれと言ってラビンが目を剥く所が面白い。
クリンとドナンが最後に顔を合わせたのは随分前の事だ。それからお互い色々な事を経験し、状況も様々に変わった。ドナンはかつて『もう一度ゆっくり話してみたかった』と言ったが、遂に２人の再会が実現し、その夢が叶った訳だが、注目のクリンの最初の一言
『父さん、僕ゴメンなんて言わないよ』に対してすかさず返したドナンの言葉
『言わんでいい。お前はお前の信じた道を進んだのだ』のやり取りは良かった。この長い物語の最初の方で、ラコックがクリンの事を
『獅子の子はやはり獅子』と評した。また、落ち込んだフィナをフォローする様に『子供達の中でクリンが一番ワシの血を引いている』とドナン。『道は違えど、自分が信じた道を突き進むクリンはワシに似てる』みたいなセリフもあった。ダグラムという作品の中には様々な要素が散りばめられているが、その中の一番大きな柱の１つは、主人公クリンとその父ドナンとの父子の物語である事は間違い無いだろう。
ドナンは地球連邦評議会議長でありデロイア星における最高権力者という超大物政治家。
一方で息子のクリンはデロイア解放軍として地球連邦と戦う独立推進の戦士。
まるで正反対、対極の立場の２人だが、しかし人間性や考え方などは、最も近いのかもしれない。お互いの辛さを、お互い最も解り合える２人だったのかも。
話を終え、フィナを呼んでくれとドナンに頼まれたクリンは部屋を出る。長男の自分を差し置いて末弟が先に呼ばれた事に目を白黒させていたラビンは、クリンが部屋から出て来るなり噛み付く。しかしクリンはラビンの皮肉など全く耳に入らない様で、ただボンヤリと
『兄さん、父さん死んじゃうよ』だけ呟く。
そこにフィナの悲鳴が飛び込み、ドナンは昏睡状態に陥り、そのまま天に召された。
人生最後の日に、自分の真の後継者たるクリンと再会。そして最愛の妻に看取られる最後。ここのシーンは非常に興味深い。
蛇足だが、地球から遥々やって来ながらラビンだけ蚊帳の外ってのもたまらないw
解放軍首脳部ではいまだ混乱が続く。カルメルは
『和平交渉を言い出したのは連邦軍の方なのですよ。その時点で我々の勝利なのです』と主張するが、そんなすったもんだの間にまたもやラコックが仕掛ける。連邦軍に解放軍を包囲し、向こうから攻撃させるように挑発させたのだ。これは実際の戦史でも常套手段。連邦軍シュミット少佐は武装解除を要請。そして戦犯みたいな扱いでザルツェフ少佐の身柄を要求。この時サマリンが何ら不平も言わずにアッサリ承認してしまうのは大変奇異に思える。『君の事は忘れない』なんて、もうこの段階から既に諦めてると言うかな。ここは『すぐに助け出すから、少しの間だけ耐えてくれ』くらい言ってくれるかと思ったんだけど…
結局ザルツェフは、元々の連邦軍所属の時には少尉に降格、禁錮１年だったけれど、今回は何と禁錮30年。その後その事への言及は無いので、ホントに30年かよ。まぁ何処かで何かの恩赦とかなりそうだけど、ザルツェフの作戦参謀としての活躍が無ければ解放軍の勝利、つまりデロイア独立は成し遂げられなかっただろう。それだけの功労者に対して何らフォローが無いのは少し解せない。『誰かが責任を取らなければならない大人の事情』ってヤツだろうか。
武装解除に不満を漏らす面々の言動も不可思議だ。敵を殲滅する爽快感や進撃する達成感の方が強くなってしまい、独立を果たすと言う本来の目的を見失っている。目的(独立)を達成する為の戦いなのに、何時の間にか戦い自体が目的にすり替わってしまってるのだ。
普通だったら、もう殺し合いなんてウンザリしててもおかしくないのに、破壊と殺戮の血に飢えた集団になってしまったのだろうか。
『死んでいった仲間達はこんなんで満足なのか？』(ロッキー)
そりゃ最大の目的である独立が達成できたのならば満足ではなかろうか？
『独立ってこんなに呆気ないモノだったのか？』(チコ)
得てして世の中ってそんなモノじゃない？
『こんなんじゃなか〜』(ジョルジュ)
一体全体何を望んで引金を引いてたのか？
『苦労してラスボス倒したのに特にイベントも無く、普通にまた１面から繰り返し』となれば、
『アッサリし過ぎで拍子抜け』って気持ちになるのは理解できるけど、君らやってるのはゲームじゃなくホンモノの戦争だからね。
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