解放人民政府の樹立により、各地で活動していたゲリラ達や、連邦軍に不満を持つデロイア人達が続々と集結。第８軍を凌ぐ兵力までに膨れ上がる。
それに対して連邦軍はゲリラ戦法を選択。決戦地であるカルナック山脈に主力部隊を温存し、選抜した少数の精鋭部隊で遊撃戦を展開。一撃離脱に徹し、できるだけ損害を与えてゲリラ側の兵力を削り、最後の決戦で殲滅するって作戦。
正面からまともにぶつかっても勝ち目が無い強大な相手と対峙する時の戦法で、第二次大戦での日本海軍も『漸減(ぜんげん)戦術』と言う同様の戦術プランがあった。
一方で、人民解放政府を樹立し、勢いに乗って北極ポートに進撃中の解放軍は絶好調に見える。が、内部に微妙な温度差が生じつつあった。
幹部の１人であるカルメルは、フォンシュタインとの和睦をサマリンに提案する。
北極ポートの守備にはメドール州の精鋭である第６軍が配備されており、苦戦は必至。
北極ポートはデロイアと地球を結ぶ最重要戦略地域故、そこへ侵攻し、占領などしようものなら地球との全面戦争にまで拡大する危険がある。その上で更に地球から援軍が派遣されたらひとたまりもない。
しかしサマリンは、北極ポート占領は地球政府との対立の為ではなく、交渉の際の『切り札』として必要だと力説する。
デスタンが店に立ち寄り『いつもの』と注文すると、少しくたびれた雰囲気の女主人が
『解ってるわよ』と応じる。デスタンはこの店の馴染みの常連客で、女主人とは良い感じの様だ。ここの描写は映画みたいに味わいがあり実に良い。女主人が
『お金があれば田舎に引っ込んで、牧場でもやってのんびり過ごしたい』とこぼすとデスタンが
『俺でも良いのかい？』と食い付く。
『お金を持ってるならね』と女。
店にドヤドヤと入って来たゲリラの兵士達の会話から、サマリンとカルメルによる意見の不一致を知ったデスタン。眼を光らせて
『君の借金は僕に任せてくれ』との台詞が決まる。
ゲリラ首脳部は意見が真っ二つに割れている。こういうのは大きな、特に急成長した組織によく起きる現象だ。当初は目標を目指して団結、一心不乱に突き進むのだが、目処が立って来ると、その目標を達成した後どうするか？その際、『なるべく自分が主導権を握りたい』と考え始めるのが人間だ。それまで味方だった仲間が、状況が進むにつれてライバル、或いは敵にすらなる。
カルメルは『デロイア人もやる時はやるんだって所を見せれば、地球も対応の仕方を変えてくる』との考え。それまではイジメられっ子でやられ放題だったが、今回一発カマした事で、今後は地球もおいそれと横暴な事はできなくなるだろう。目的自体は達成できたのだからこれ以上血を流す必要は無いし、寧ろ地球を本気で怒らせて全面戦争にでも発展したら元も子もない。せっかくここまで作り上げて来た組織も成果も全て消滅してしまう。
ところがサマリン派は相変わらず強硬路線を突き進む。その１人、ジョークは
『そのへっぴり腰で150年間も惨めな目に遭って来たんだ』と反論。２人共に同じ事を言ってるのだが、『ここまで来ればもう安心』と考えるカルメルと、『これじゃまだ足りない。もう一歩』と考えるサマリン。これは幾ら話しても平行線だ。カルメルのセリフ
『デロイアにとってそれが得策かどうか。長期的見地に立ってみて、全面戦争なんて誰も望みはしない』も、全員が思っている事だ。が、そこまで行く方法が違うのである。
デスタンが久し振りにラコックに連絡。
前回の仕事を最後に足を洗おうとしたデスタンだったが、リタが絡んで来て有耶無耶になった感があった。しかし今度こそ最後だとばかり、『サマリンとカルメルの仲違い』という飛びっ切りのネタでラコックに連絡を入れる。大金を要求し、心に決めた女性と一緒にトンズラ。人生のリセットを目論む。
『守銭奴め』と蔑むラコックだが、
『だからこそこんな時は信用できる』と考え直す。意味深い言葉だ。
ここでドナン・カシムが２週間の昏睡から目を覚ます。この辺もドラマチックな話の流れ。そうとは知らずにお見舞いに訪れたラコックは、腰を抜かさんばかりに驚く。(そりゃそうだ)
ドナン不在をいい事にやりたい放題だったラコックに対し、レークやフォンシュタインは常々不満を漏らしていた。先生不在の間にイタズラした子供が、先生が帰って来て怒られるって図式が、まさかの現実となったのだ。ドナンは倒れる直前に連邦軍の介入を要請していたのだが、その連邦軍とゲリラとの戦いはどうなってるか？と訊くが、まだ交戦していない。それどころかまだ北極ポートに配備されていない。それどころかまだデロイア星に到着していない。それどころかまだ要請すらしていない…
状況を知るにつれてドナンの口調は厳しくなり、ラコックはしどろもどろに言葉尻を濁す。
ここは、それまでのラコックの横暴に対する視聴者の不満を代弁してくれるシーンとなった。しかしドナンの一言
『後手を踏むなど君らしくない』には、ラコックの政治的能力に対してドナンがどれだけ高く評価していたのかが表されている。だからこそ
『一体何を考えているのだ？』なる疑問が生まれたのだろう。
まぁさすがのドナン・カシムも、ラコックの内に秘めた野望までは見抜けなかったのか。或いは、ドナンの洞察力を持ってしても誤魔化し切るラコック狡猾さか。
『如何に非情と罵られようと、地球80億の為デロイアを独立させてはならん』というドナンの魂の叫びが病室に響き渡る。
カルナック湿原に架かる橋を突破しようとする解放軍は、上流に掛かるダムからの放水を危惧する。ダムを占拠して信号弾を撃ち上げると、連邦軍はそれを待ってから逆襲し、再占領する。ゲリラ本隊は橋を渡っている最中に放水されピンチに陥る。
こういう所もいちいち手が込んでる。本来ヤラレ役である連邦軍もあれやこれやと手を打って来て、敵役が強いからこそ主役も引き立っている。
因みにダムで連邦軍に逆襲された解放軍だが、兵士の１人がジープを奪って逃走を試みる。撃たれてジープは川に転落し、そこから漏れたガソリンが川を流れて行く。
一方下流で湿地帯の橋を渡っていた解放軍は、ナナシが跳ね飛ばした泥を川で洗ってて、川面を流れて来たガソリンに気付く。こんな山の中を走ってるクルマと言ったら解放軍か連邦軍の車輌くらいなもので、解放軍側に事故の報告は無い。と言う事は連邦軍。つまり敵の車輌が上流で行動しているって事になる。
上流のダムが連邦軍に抑えられ、放水による鉄砲水に襲われる危険に晒されていると知った解放軍は間一髪で切り抜ける。
解放軍主力は渡河に成功。一方で連邦軍第８軍はラドロック少佐指揮の下、カルナック山脈に総力を結集して待ち構える。
ゲリラ会議の時に登場した『大地の絆』のドックと再会。彼の相棒のデビットは３ヶ月前に戦死。ドックもこの回で死んでしまう。
まぁデロイア７＋クリン、ジョルジュ、ハックルの主要メンバーは死なす訳にいかなかったのかな。フェスタなんかかなりアッサリ死なせちゃったし、リタの時もキツかったけど、だからこそ戦争の無情さが際立ったと思うんだよね。キャラに感情移入し過ぎたのかな。この頃になると、どこか『もうレギュラーメンバーは死ぬ事なさそうだな』って雰囲気になって来てて、そうなると当然ひょっこり現れたキャラってのは実に判り易い死亡フラグが立つものだ。で、案の定ドックも死んでしまう。少しマンネリ感は否めない。
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