52歳になりました。幾らかガタが来始めたけど取り敢えず健康にこの日を迎えられた事に感謝します。
それにしても大変な事になったな。『52歳の誕生日はコロナの真っ最中』となってしまった訳だが、『53歳の誕生日』は、何か違う事を話題にできる世界であって欲しいものだ。
誕生日ってのは老けを実感する(せざるを得ない)日ではあるが、嘆いていても始まらないので前向きに受け止めたい。忘備録の１つとして最近感じた(感じ始めた)事でも書いておく。前向きとは言えない内容ではあるが、書いておくこと自体が前向きな行為と信じて…
50歳を過ぎた頃から『死』を考える様になった。少し大袈裟な言い方をするなら、50歳になった途端、堰を切ったようかの様に、である。
自殺を考える、とか、そういう事ではなく、自分の死に様や、死ぬ瞬間の様子、状況などを想像するのである。
今までだって、そういう事を考えなかった訳では勿論ない。が、違うのは、
その回数がケタ違いに増えた。事と、
悲観的な方向でリアルに考える様になった。点だ。
回数に関しては、以前はたまぁ〜に。人との会話や映画やテレビ等でそうした話題に触れた時とか、ふとした時に思い浮かんだり、と言った程度だった。多分多くの人もそんな感じだろう。しかし50歳を過ぎてからは、ほぼ毎日考えてしまうのである。
もう１つの『悲観的かつリアル』に関してだが、俺は基本的には楽観的な人間と自覚している。以前は死について考えても、ある程度思いを巡らせると『考えても仕方がない。今を精一杯楽しむべし』と割り切る事ができた。ところが最近は『いやいや、そうは言っても気になるじゃん』と後ろ髪を引かれ、そのネガティブなループから脱出できないのだ。
映画や漫画で数限りなく人が死ぬシーンを見て来てはいるが、当たり前の話だが、そんなモノをどれだけ目にしても本人に実感は湧かないものである。
『全身を雷で打たれた様な』とか『胸を締め付けられる様な痛み』等、百花繚乱の表現が乱れ舞っても、(見てる、聞いてる、読んでる)本人がそうした体験をしてないのだから、何処か遠い世界の、自分に降り掛かる事の無い関係ない話、として実感できなかったのである。
俺もこの歳になって心身の衰えが顕著に現れて来た。自分自身、それまで経験した事の無い、身に覚えの無い突然の胸の激痛とか、完全に思考が停止して倒れる寸前だった酷い立ちくらみ、或いは周囲の家族、親戚、知人等にも病気や死が降り掛かるに至り、俺の人生も、その道幅が狭まってきた事を実感し出したのだろう。『百見は一動に如かず』(百回見るより一度自分でやってみた方が理解が早い)ということわざの通りである。
ある夜、突然心臓が痛くなった時は驚いた。そこまでの激痛ではなかったが、今まで体験した事が無かったので、ここからどの様に推移するのか判らない。放っておいてもじきに治るのか？しかしもしこのまま悪化して命に関わるのだとしたら、今の時点で救急車を呼ばなければならないだろう。冷静に意識を集中するが、痛みは胸の中央やや左側。正確に心臓の位置だ。
ペースメーカーを埋めてる同僚の『心臓は怖いよ〜。何かあったら一発(で死んじゃう)だからね』との言葉を思い出した。
心臓が止まれば脳に酸素の供給が止まる。どうなるかは、立ちくらみの酷い俺には容易に想像がつく。
その前に、もしそれが心筋梗塞だったなら？『世界三大激痛』なんてゴメンだ。そんな痛い思いなんてしたくない。
怖かった。布団の中で丸くなって恐怖に震えた。
今は新型コロナウィルスによる肺炎が流行している。肺が炎症を起こして呼吸不全となる。窒息死だ。どれだけ苦しいのだろう。
戦艦が好きで本を読んだが、沈没する描写もある。鉄の箱に閉じ込められた兵士達は、水が入って来た時に何を思うのか？天井に残った僅かな空気に、池の鯉みたいに殺到する。死期がほんの数分伸びるだけなのに、みんなだってそんな事解っているのに、それでもそう行動せざるを得ない動物の本能。
思い切り息を吸い込んで水に浸かる。
１分か、２分か、やがて息が切れる…
どれだけ苦しいのだろう。そして、どれだけ恐怖だろうか…
胸が痛かった時、様々な恐怖を感じた。その中には、救急車を呼んだけど到着する頃にはケロッと治っちゃって、バツの悪い顔で言い訳する自分や、翌日近所で噂される怖さ、なんてのもあったが…
結局、その夜の謎の胸の痛みは、気が付いたら消えていた。ホント『気が付いたら』だった。多分その時の俺は、それだけ『恐怖』に集中していたのだろう。あれだけの痛みを忘れてしまうぐらいに。
幸いな事にそれ以降謎の痛みは無い。しかしいつかまた起きるかもしれない。その時はもっと深刻な状況になるかもしれない。或いは全く別の症状が表れるかもしれない。
『かもしれない』ではない。『ほぼ間違いなく100%』だろう。そうして、その延長で人は死ぬのだろうから。
怖いな。死ぬのは怖い。
より正確に言うなら、死ぬ事自体はそこまで怖くはないが、その直前に訪れるであろう激痛や苦しみが怖い。それによって死の世界に引きずり落とされるのだ。まるでナイフを持った殺人鬼に追い回されてる様な気分である。
ってのが、先月くらいまでの心境だった。
今はほんのちょっと違う。
『いやぁ〜50歳の頃は死ぬのが怖かったよ。そんで実際死ぬ時も結構苦しくてさ。何度も蘇生しちゃったから、その分何度も死の恐怖を味わう羽目になっちゃったし。
でも、死ぬ直前、それまで一度も体験した事の無い様な感覚でさ。確かに痛かった事は痛かったんだけど、その裏で「おわぁ〜こんな感覚味わった事無ぇ〜や」って思ってた。
痛かったり苦しかったりだったけど、でも過ぎてしまえばアッと言う間だったけどね。
ところで、オヤジの時はどうだったの？』
『お〜、俺はよ、コロッと逝っちゃったから全く痛くも痒くもなかったよ。気が付いたらここだった』
天国で皆と再会し、そんな呑気な会話を交わしてる…
そんな事になるのかな。
そうなればいいね。
ま、そんなもんだろ。
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