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2020年01月20日20:57

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【アニメ】ダグラム《弐》

第6話〜10話
この第6話『暁の救出作戦』は特筆すべき傑作回だ(題名からしてカッコ良いしね)。
デロイア独立に対する地球連邦評議会議員の議論で始まるのだが、議長のドナン・カシムはデロイアの独立に1人反対の立場で、独立を支持する他の議員とのやりとりがおもしろい。
ドナン『1人なら出来ないケンカも2人ならできる。デロイアが独立したら必ず利害が生じ戦争になる』
他の議員『だからこそ今のうちに手を打ち友好関係を作っておくべき。彼等が独立を願うなら認める。それこそが友好関係を作る第1歩』
ドナン『独立したデロイアが地球に対して国交を断絶したらどうなる?(地球はデロイアに食料資源の40%を依存しており、デロイアとの通商が消滅したら地球は立ち行かなくなる)』
他の議員『そんなバカな事はしないでしょう』
ドナン『しないとどうして言える?理性じゃない。デロイア人達が地球に対して抱いてる感情だよ。感情がしばしば歴史を変えるのだ』
確かにそうなんだよな。独立したら、デロイア政府が何をどうするかは彼等の自由だ。自分達の資源の供給が無ければ地球は破滅するしか無いとなれば、今度は立場が逆転する。地球はデロイアの言いなりにならざるを得なくなる。『そんな事しないでしょ』ってのはあくまでも希望的な意見に過ぎず、しないとは言い切れない。それと『感情が歴史を変える』ってのも名言だ。

これまで、成り行きでCAアーマーに乗って戦ってたクリンだが、戦時下の特例法で正式なパイロットとなり、初めて作戦に参加する事となる。その出撃シーンが最高だ。
クリンが自分の機体のコクピットを点検しようとすると、傍らで寝転がっていた古参のパイロット達に
『整備兵の仕事にケチつける様な真似をするな』とたしなめられる。隊長の
『その辺でコーヒーでも飲んでろ』と続ける隊長の言葉に別の隊員からも
『ミルクの方がいいんじゃないか』とチャチャが入り笑いを誘う。
一見、下っ端をアゴで使い、自分達は高みの見物とも見えなくもない彼等の態度だが、実は違うのだ。各自がそれぞれの持ち場で全力を尽くしている。それぞれに誇りもある。お互いがお互いを信頼しているからこそ、相手の領分には口出ししない。汗を流して作業する整備兵を尻目に、寝転がって悠然とタバコをふかしてるのはそんな信頼関係の証である。
この回の脚本を書いた人は、最前線の空気を実に上手く表現してると思う。
その後は、警戒態勢を強める相手側と、隠密行動でそこに潜入して行く特殊部隊。紛糾するデロイア独立に関する会議… と場面が切り替わって行くが、その間、背後に流れる時計の秒針の音が緊迫感を盛り上げて、観てるこちらもいつのまにか固唾を飲んで画面に釘付けとなる。

特殊部隊の精鋭10人はクルマの往来の合間を縫って川に到達。それぞれが背負う背嚢も何種類か描き分けられているのも芸が細かい。分厚い毛布をグルグル巻きにした様な背嚢を下ろして広げるとゴムボートになり、他のメンバーはそれぞれの背嚢をそこに載せ、人間は川に浸かった状態で川を遡上する。この辺もしっかり描かれているなぁ。
暗い水面は定期的に探照灯の光で明るく照らされ、その度に身を潜める。やがて行く手に1本のワイヤーを発見。辿って行くとブービートラップだ。ペンチで切断しようとする隊長。引きつった顔のアップ。力の入る指先。『バチン』と音がした瞬間、画面はホワイトアウト。『爆発したのかexclamation & question』と慌てるが、ここで画面が切り替わっており、真っ白な光は探照灯のそれで、まだ相手側は特殊部隊に気付いてない。つまりブービートラップは爆発せず、処理された事を示す。
この回の演出は神懸かっているね。

ソルティック隊ではパイロット達がコクピットで待機中。家族の写真を眺める者、タバコをくゆらす者、それぞれだ。クリンはヘルメットを被り直したりシートベルトをいじったり、しまいにはベルトを外して
『やっぱもう一回トイレ行っとこ!』
って、確かにな。初出撃ともなれば当然そうなるか。ここの描写も秀逸だよ。彼の緊張感が手に取る様に伝わって来て、まるで子供の試合に親の方が緊張するみたいな感じ。そしてここのシーンではバックに虫の音が静かに鳴り響いてる。虫の音が聞こえるって事は静まり返ってるって事でもあり、まさに『嵐の前の静けさ』という演出に抜群の効果を発揮している。クリンの心臓の高鳴りまでもが聞こえて来るかの様だ。

遂に作戦開始時刻が来た。
『お前の受け持ちは東の橋だ。間違えるな』
『間違っても俺たちを撃つなよ』
『ま、気楽に行こうや』
パイロット達はそれぞれクリンに一声かけるとキャノピーを閉じ出撃して行く。短いながらもルーキーに対する思いやりや気遣いが見て取れる。キャノピーを閉じたクリンもソルティックを前進させ、みんなの後を追う。
初出撃がハングライダー装備のソルティックで空を飛ぶってのは有り得ないだろう。CBアーマーの操縦自体にまだ不慣れなのに、なおかつハングライダーを操る、なんて芸当は相当な技量が要求されるだろうから。しかしそうした細かい矛盾などどうでもいい程に、この回の緊迫感溢れる演出は突出している。
崖から飛び出すクリン。そのまま墜落かと一瞬焦るものの、浮力を得た機体はフワリと浮き上がり、カーディナルの漆黒の夜空に舞う。先行する3機の仲間と合流。
ハングライダーを装着して空を飛ぶってアイディアも素晴らしいよね。最先端技術の機械の塊に『布』って組み合わせは、当時誰も思い付かなかったんじゃなかろうか。あの時代だとジェットパックみたいのとかね。『より強力に、より速く』って時代に逆行する灯台下暗し的なアイテムに、俺は拍手を贈りたい。

特殊部隊が人質が捕らわれてる建物に突入。と同時に信号弾を撃ち上げる。夜空に輝く信号弾を確認した後方の主力部隊が出撃。大型ヘリがエンジン音を響かせ、重々しく離陸する。
ここから先のストーリーが、実はイマイチ解らない。
デロイア独立推しだった評議員達。
彼等と議論していた独立反対のドナンは途中で折れ、賛成を表明。
ところが特殊部隊が部屋に突入すると、独立の騎手だったフォン・シュタイン大佐とドナンは仲良く並んで立っており、議員達は連行されてしまう。
???
ここは理解に苦しむのも無理が無い様だ。作中のキャラ達も皆困惑しており、この後も
『あれは一体どういうことだったんだ?』みたいなやり取りが暫く続く。
とにかく、デロイアは地球の8番目の州に昇格。フォン・シュタイン大佐が盟主となり、独立賛成だった議員達は反乱分子として逮捕されちゃった、って事らしい。

あ、そうそう、作戦中クリンは命令を無視して持ち場を離れ、建物の中へ突入。その現場に出くわす。相変わらずのワガママっぷりには呆れるが、主人公は現場に立ち会う宿命だから仕方がないとして、全てが終わった後で先輩パイロットの1人に案の定咎められる。
『貴様なぜ持ち場を離れた?』
すると隊長を黙って手で制し
『お父さんは喜んでくれたかい?』
その一言に言葉を失うクリン。
『さぁ、向こうでコーヒーでも飲もう』と歩き去って行く隊員。
ここのセリフも腹に響く。『世の中には知らない方が良い事があるんだ』或いは『大人の世界の話に子供が首を突っ込むもんじゃない』って事だろうか。感情的には指示を無視したクリンに対して怒鳴りつけたい所だろう。しかしそれよりも、まるで急所をえぐるかの様な鋭い一言。さすがはダーク曹長。隊長を務めるだけあって『人間力』がある。キャラが立ってるよ。

長い長い第6話が終わり、話の続き。
結局あの独立騒ぎは何だったんだ?と作中のキャラ達の中にも動揺が広がっており、話について行けてないのは俺だけじゃないと知って少し安心。
要するに、デロイアの独立派を燻り出す為にわざと『独立宣言』をブチ上げ、それに呼応した連中を反乱分子として一斉摘発するのが狙いだったのかな。デロイアの盟主の座を約束されていたフォン・シュタインは敢えて先頭に立って独立派を煽り、元から独立反対だったドナンも一計を案じ、独立派を表に誘き出す為に独立賛成の立場を表明したと。
いや〜難しいなやっぱりこのアニメ。
そして『独立できるぞ〜』と大喜びで立ち上がった独立派は『ゲリラ』の烙印を推されて摘発。デロイア各地でゲリラ狩りが起きる。
クリンは実の父親がデロイアを弾圧してる後ろめたさからゲリラの肩を持ち、連邦軍兵士と対立。危ない所をサマリン博士や新聞記者のラルターフに助けられる。そのままゲリラ側が秘密裏に開発したCBアーマー『ダグラム』を見せられる。連邦側であるドナン・カシムの息子である自分に、デロイア独立派である反政府ゲリラの秘密兵器を見せていいのかと疑問を持つクリンに言う。
『君はいずれ親とも連邦軍とも離れて、我々と行動を共にする様になる』
『君はお父さんとは違う生き方をする事になるだろう』
『今の君は落ち着き場所を求めて彷徨っている』
なんか、大人は全てお見通しって感じ。まだ少年ぽさを残すクリンが、自分の父親くらいの年齢の所謂『大人』に、しかもゲリラ組織のカリスマ的指導者にこう言われたら大きな影響を受けるだろう。更に名言が続く。
『君は君だ。ドナン・カシムではない。
私は個人を信じる。組織や肩書きを後ろ盾にする人間を軽蔑する。
個人があっての組織なのだ』
サマリン博士の達観ぶりが浮かび上がるかの様な名台詞の数々。一方でドナンもまた大局的視点の持ち主である事が、彼の台詞から感じられる。独立を認めろと主張するクリンに対して
『何故?デロイア人も地球人も同じ仲間だ。同じ地球人だ。更に付け加えれば今デロイアは連邦を構成する州として自治も認められている。なのに何故独立しなければならんのだ?』
『彼等(デロイア人達)が願うからです』というクリンの主張に対して
『何故願うのだ?彼らが全てのデロイア人の意志を代表しているわけでは無かろう』
確かにそうなんだよね。サマリン博士も言うが
『だがデロイアが独立してデロイアの政府が出来たとして、全てのデロイア人が幸せになれるかというと、これまた違う。そこにはまた必ず反対意見が出る』訳だ。だからこそ
『政治とは多数の幸せの為に少数を切り捨てる事だ』なるドナンの政治スタンスに行き着く訳でもある。2人の台詞を聞いてると、クリンの主張はただの理想論であり、苦しむ自分の身近な仲間達の状況を見ているだけの局所的な感情論に過ぎないと痛感する。それはラルターフの台詞
『君はもっと現実を直視しなきゃならん。でなきゃその甘さは死ぬまで直らない』に集約されるのだ。
正義とは何か?を視聴者はシビアに突き付けられる。

ドナンの元を訪れたクリンは、一向に聞く耳を持たない父親に苛立ちつい『独立派は専用のCBアーマーまで開発しているんだ』、つまり、それだけ彼等は本気なんだと言い放つ。
クリンが出て行くとドナンが電話で
『感謝なんてとんでもないよ大佐』みたいな台詞のシーンがあり、建物を後にするクリンにも、目付きの鋭い男が意味ありげに尾行する。
どちらもほんの一瞬の短いシーンなんだけど、口を滑らせたクリンの一言を聞き逃さないドナンは直ちにフォン・シュタイン大佐に連絡を入れ、クリンを尾行したって事だ。この辺の細かい描写は一流の映画を観ているかの様でもある。
結局クリンは尾行されたまま独立派のアジトに行ってしまい、連邦軍の強襲を受ける。サマリン博士は撃たれて連れ去られ、虎の子のダグラムも強奪されてしまう。
そこに、独立運動に参加しようとやって来たロッキーとキャナリーに鉢合わせし殺されかけるが、川に飛び込み難を逃れる。

それからダグラム奪回。連邦軍の基地で調査されていたダグラムを、基地に潜入したクリンがコクピットに乗り込む。
時を同じくして、奪回が不可能なら破壊してしまおうとやって来たロッキー達とも鉢合わせし、トレーラーを強奪してダグラムと共に脱出する。
まぁこの辺は幾ら何でも都合が良過ぎだ。父親は連邦側の最高権力者であるから最も奥まった場所にいるのだが、そのドナンの元に毎回易々と入り込んでしまうクリン。ゲリラ側の最新鋭CBアーマーという軍の最高レベルのセキュリティーを簡単に突破して潜入するとか、ロッキー達の潜入をも簡単に許し、あまつさえトレーラーも強奪される。一連の事件は大規模な基地での話だから、当然ながらCBアーマーはもちろん装甲車両や武装ヘリが無数にいるはずで、それらの追撃を逃れるのは絶対と断言できる程に不可能だ。最後は燃料備蓄エリアに突入して炎上。その隙に急遽用意した小さな船にダグラムを載せ代えて脱出する訳だが、上空からヘリに追跡されてるであろう状況で有り得ない話だろう。勿論『マンガ』なのだから多少の矛盾は当然なんだけどね。流石にちょ〜っといただけないね。

第10話では、船に何時の間にか積んであった箱を開けると銃や無線機があり、メンバーそれぞれが装備する。『Eガン』なるダグラム世界特有の銃器であり、ヘアバンド状の無線機を各自が付けて、ここでようやく『馴染みの姿』となる。
1人フェスタだけは『火薬の匂いが好き』って理由で、通常火薬のマシンガンを選ぶ。せっけくEガンを紹介してやったバックスは機嫌を損ねるかと思いきや、眉一つ動かさずに言う。
『自分の命を守る為の武器は、相性の良いヤツに限る』
これが次元大介の声で言われるんだからシビれるね。
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