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2020年02月29日23:24

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元気のGに込められたもの〜物語を血肉にするというコト

本日から4回に亘って、アニメ「ガンダム」シリーズに込められているであろうメッセージを通して、物語を見るとはこういうコトではないのか、という私なりの思いを綴っていきます。

 昨年のコトになりますが、「劇場版ガンダム GのレコンギスタI 飛べ!コアファイター(以下Gレコ。TV版も含める)」を見ました。
 ストーリィやTV版で見慣れたメカ、キャラ達の活躍以上に、私は「作品の中に込められたメッセージ」を改めて私なりに感じ取るコトとなりました。

 Gレコの世界観は、多くのガンダム作品の舞台である宇宙世紀の後の時代であるリギルド・センチュリー(以下RC)を舞台としています。
 RCの地球人類は、エネルギィを自ら生み出さずに地球宙域の国家トワサンガから軌道エレベータ、キャピタル・タワーを経由してもたらされるフォトン・バッテリーに頼っています。
 さて、TV、映画を問わずGレコを見た方もこの説明を読んだ方も
「こんな不便なシステムによって地球のエネルギィを賄っているのは何故なのか?」
 そう感じたコトと思います。

 その理由は、一年戦争に端を発する様々な作品で描かれた数多の戦乱などによる環境汚染や、資源の浪費を原因とした宇宙世紀の行き詰まりにありました。
 その結果として、宇宙世紀末期にはタブーである食人すらも行われました。
 主人公ベルリの友人ノレドやライバルのマスク(ルイン)やマニィは、食人に供された人間の末裔、クンタラとして宇宙世紀終焉から1000年以上が経った劇中においても今なお差別を受けています(*1)

 この様な物質文明による環境汚染や資源の浪費、差別構造の発生を起こさないためのシステムが、フォトン・バッテリーを地球外で生産し地球に送り届けるシステムです。
 また、それに加えてGレコの世界においてはスコード教という宗教が存在し、スコード教には科学技術の発展を禁じたアグテックのタブー(*2)という教えがあります。
 スコード教もまた、フォトン・バッテリーの供給システムと共に物質文明の発展を止めるため作られたものでした。
 この様に、物質文明や環境問題に対しての批判的な視点が、Gレコの設定には込められていたのです。

 作品の根幹を成す設定のみならず、劇中の敵対組織となるキャピタル・アーミィの存在も、私には何処か示唆的に感じられました。
 キャピタル・アーミィはキャピタル・タワーを維持・防衛する組織であるキャピタル・ガードとは別に作られた軍事組織で、劇中ではベルリ達の海賊部隊からの救出を名目としてタワーを擁する国家キャピタル・テリトリィ外へと戦闘に向かっています。
 この様は、2003年のイラク戦争後の自衛隊のイラク派遣などによる日本国憲法の平和主義の形骸化を思わせてなりません。

 話をフォトン・バッテリーに戻します。
 フォトン・バッテリーはトワサンガ経由で宇宙からもたらされますが、それを生産していたのはトワサンガではありませんでした。
 フォトン・バッテリーは、金星周辺に存在するヴィーナス・グロゥブに住む人間達の手で作られてトワサンガから地球に運ばれていたのです。
 しかしながら、その結果としてヴィーナス・グロゥブ民の中には宇宙線や宇宙の低重力に晒され、遺伝子が突然変異を起こした人間、ムタチオンになる者が現れています。

 悪化した地球環境を戻すためとはいえ、この世界の構造を今振り返ってみると、私には地球を中心とした搾取の様にも思えました。
 物質文明の進行を止めるために自らその役割を背負ったとはいえ、ヴィーナス・グロゥブ民はムタチオンになる危険性という犠牲を払っているのですから。
 Gレコで起こった事件の元凶であったクンパ大佐(*3)が兵器の設計図であるヘルメスの薔薇の設計図を流出させた理由は、人類に活力を取り戻すコトだけではなく、もしかしたらこの搾取構造を破壊するコトもあったのではないでしょうか。

 この世界の構造に対して、主要人物であるアイーダが好意を抱いていたMSパイロットのカーヒルはフォトン・バッテリーの技術の開放を訴え、アイーダはベルリに対して宇宙に太陽光発電パネル(*4)を設置すればイイとも発言していました。
 彼女達の訴えた通りの行動が現実に行われていれば、物質文明を再び進行させてしまうコトは明白です。
 しかしながら、ヴィーナス・グロゥブ民の犠牲を考えれば、地球でのエネルギィの自給自足が成立すれば彼らは解放されます。

 果たして地球環境の維持のためにRCの世界の構造を維持するコトと、地球環境を破壊してでも社会構造を改めるコトとどちらが正しいのか?
 コレについての明確な回答は、劇中では為されていませんでした。
 その理由は富野監督が視聴者、中でも若い世代にそれを考えていってほしい、もしくは考えられる様に成長してほしいという願いをGレコに込めたからであるのは様々な媒体での発言から明白です。

 奇しくもGレコから一年後に放送された「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ(以下鉄血)」シリーズにても、地球を中心にしてスペースコロニーや火星の労働力や資源を搾取する格差社会の構造が描かれていました。
 火星生まれの主人公三日月やオルガ達は、民間軍事会社CGSを乗っ取って鉄華団を作り、搾取から逃れる道を模索しようとしました。

 一方、世界を実質的に支配する武力組織ギャラルホルンの一員であるマクギリスは、社会構造を変えようとして同組織の象徴であるMS(*5)ガンダム・バエルを奪取しクーデターを起こさんとしました。

 また、鉄血にはそれだけではなく現代社会に必要なメッセージが込められている描写も見られました。
 次回はソレに触れたいと思います。

<続く>

*1:構造としては現代日本の部落差別に近いと思われる。
*2:アグテックのタブーは既存の技術を使うコトは禁じていない。
*3:クンパは作品のラスボスではない
*4:奇しくも、本作より過去に作られた機動戦士ガンダムOOシリーズの世界観では、コレによってエネルギィを賄っている。
*5:モビルスーツ。一応解説すると、ガンダムシリーズに共通して登場する人型兵器の総称。
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