信じていなかったと思うよ。アイコン（イコン）だよ。

　催眠、暗示、呪術、シャーマニズム、いろいろなバリエーションと呼び名がありますけれど私は呪術という呼び方が好き。「きれいない言葉」じゃないから。
　アマビエはわかりやすい呪術。アイコンですもんね。
　私たち21世紀の教養ある人類が妖怪とか神とかをべつに信じていないように、昔の人もそれなりの付き合い方だったのだと推察します。アイコンに過ぎないけれど、気持ちを落ち着かせるのに役立ちます。
　似ているものはいくらでもありますよね。たとえば、亡くなった人を偲ぶアイコンがあります。お墓や位牌や形見など。アイコンを大事にしたい気持ちが起こるのって、べつに死んだ人が西方のどこかの地で生きていると信じているわけではありません。とっくに無機物に還ってどこにもいないと知っているけれど、私たちの心の中では生きている頃の認識を保存しておきたいのです。できればビビッドな形で。

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■掛け軸店から広まったアマビエ　言い間違いで生まれた？
(朝日新聞デジタル - 06月06日 14:45)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=6109926

　新型コロナウイルスの感染拡大のなかで、一躍大人気になった「妖怪アマビエ」。そもそもどんな妖怪で、なぜ人気が出たのか。調べるうちに、浮かんできた意外な事実とは？

　Q　疫病よけの言い伝えがある「妖怪アマビエ」が人気だね。どんな妖怪なの？

　A　アマビエは江戸時代の弘化3（1846）年、肥後国（ひごのくに）（熊本県）の海中から現れたとされる半人半魚の妖怪だ。「もし疫病（えきびょう）が流行したら、私の姿を描いた絵を人々に見せよ」と言った、と伝えられている。

　Q　どうして急に人気になったの？

　A　新型コロナウイルスが国内で広がり始めた2月末、妖怪掛け軸（じく）の専門店がアマビエのイラストを描いてSNS上に投稿したのがきっかけといわれているよ。漫画家らも独自のイラストを投稿して注目を集めたんだ。お菓子やぬいぐるみを作る人も現れ、啓発用に厚生労働省まで使った。

　Q　江戸時代も、さぞかし人気者だったのだろうね。

　A　実はそうではないらしい。アマビエは、京都大学付属図書館が持つ瓦版だけにしか残っていない。同じように疫病の流行を予言する妖怪はもっと古くからいて、記録も多く残っているので、そちらの方が人気だったようだよ。

　Q　それは意外だ。どんな妖怪なの？

　A　18世紀後半には登場していたらしいけど、自分の姿を写して広めるように言い始めたのは、女性の顔に竜の体、剣の尾を持つ「神社姫（じんじゃひめ）」（1819年）が最初らしい。

　その後は人の顔を持つ牛の妖怪「件（くだん）」（クダベ）が登場し、1843年には3本足の猿のような「アマビコ」が流行した。アマビエは、このアマビコを写し間違えたもの、という説が有力なんだ。

　Q　昔の人は、妖怪の力を信じておったのかな。

　A　近代医学が発達する前、原因が分からない災厄と闘うには人知の及ばない力にすがるしかなかった。妖怪には人々の疫病への恐れと、退散への願いが込められていたんだ。それは現代でも変わらないのかもしれない。（渡義人）

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（超耳）

　神社姫じゃあちょっと怖すぎるからね……。

　文法用語でいう宣言文（declaration statement）もわりと呪術っぽいと思うんですけど、どうでしょう。「お礼を言います」という言葉自体がお礼になっているというアレですけど。「待ったのに相手がなかなかありがとうって言わない」と子どもが思うアレ。
　呪術が今でも衰えることなく社会にあまねく存在しているのは、私たちが心をコントロールするための知恵だからかも。自己暗示あるいは備忘の知恵。私たちの心ほど強く最後まで頑迷に残り続ける理不尽もないですから。
　アマビエは長く残るアイコンになるかもしれないなーと思っています。
　だるまとか熊手とか破魔矢とか豆まきとかの呪術と並ぶものになるかなーならないかなー。
　新聞の地域版でほのぼのニュース「幼稚園児　健康ねがい　アマビエえがく」みたいなヘッダが躍るようになっても不思議じゃない気がします。

　関係ないけど、アマビエの耳の位置のあれってなんなんでしょうね？
　ひし形の中になにかの文様が描かれている。水木御大はキラメキを表す漫符に変換したようで【画像２】、それに倣っているファンアートも多いですよね。でも多数はヒレかな。エラでもツノでもなくヒレが頭部にくっついているのは奇妙ですけど。キメラ系のモンスターデザイン（魚＋べつの生き物の場合、上半身なり頭部なり魚の特徴を入れてヒレをつけることがある）からの流入なんでしょうかね？