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2019年08月20日07:36

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総力戦につよい日本

日本の製造業、米中を焦らせる「模倣ができない職人技」=中国メディア
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=97&from=diary&id=5752897

どんな分野であれ,日本人は細かいところにも工夫をします。IHもこの一つです。典型例は,昨今,話題となっている高純度フッ化水素です。これも,エリートだけが優秀ではダメです。末端の工員さんも,高い技量とモラルが求められます。

まず,技術開発や企業化においては,”名人戦”型と”総力戦”型を区別して考えなければありません。”名人戦”型とは,一人またはごく少数の優秀な人間は,あまりレベルの高くない大多数の人間を統率するだけて対応できる分野です。この典型例は,ビルゲイツやスティーブンジョブスが引っ張ったIT系やヘッジファンド系です。一般的に,この型は水平分業型が多いです。”総力戦”型は,自動車産業,コンビニ,宅配など,国民一人一人のレベルが相当高くない(消費者の性向も含めて)と対応できない分野です。この型は垂直統合型(または摺合せ型)が多いです。

新技術の開発および企業家においても同様で,”名人戦”型が有効な分野と,”総力戦”型が有効な分野があります。よく,マッキンゼーなどのコンサルタントが”悪魔は細部にやどる”という言い方をしますが,”総力戦”型は,細部にやどる悪魔を退治することが鍵となります。これをおこなうためには,大勢の人が協力し,幾多の試行錯誤を繰り返さなければなりません。これには,かなりの人材と資本を集中させる必要があります。

次に,”名人戦”型をめざすか,”総力戦”型をめざすかには,national characterも深くかかわってきます。日本人は,”名人戦”型を苦手としていますが,相互間の信頼が重要な”総力戦”型は,得意です。Francis Fukuyamaの”Trust”(申し訳ありません,邦題を知りません)などによれば,アメリカ人も,本来は,”総力戦”型が得意なnational characterと見なしています(名人戦が得意なのは移民1世,2世が多い)。

さらに,”名人戦”型が有利が,”総力戦”型が有利かは,時代や技術の動向によっても変わってきます。ナポレオンの時代を例にとれば,アウステルリッツの戦いあたりまでは,ナポレオンによる”名人戦”が非常に有効でした。しかしながら,ワテルローの戦いになると,プロイセン参謀たちによるチームワークにもとづいた”総力戦”にナポレオン軍は,勝てなくなってしまいました。この状況は,渡辺昇一先生が「ドイツ参謀本部」に詳しく記述されていますので,詳細は,そちらを参照してください。

逆に,技術の変化により,”総力戦”型よりも,”名人戦”型が有利に変わった例も数多くあります。その典型例がコンピュータです。コンピュータは,かつては,”総力戦”型でした。各モジュールや工程ごとに設計部が必要でした。たとえば,CPU設計部,論理回路設計部,基板設計部という具合に。論理回路設計部などには,カルノーマップを駆使して,論理回路の規模の最小化を行うことができる名人がいたものです。今では,HDLなどのDAソフトウェアの進歩により,ごく少数の優秀な人が,HDLを駆使すれば,あとの工程は,コンピュータソフトウェアにより,マスクパターンを生成できます。さらに,LSIの製造も請け負ってくれる所が数多く存在します。こうなると,日本企業の強みは,失われてしまいます。ナポレオンに翻弄されたオーストリア軍の将軍みたいなものです。

さて,「日本の存在感が全くない」というのは,上記の”名人戦”型については,まさに,そのとおりでしょう。中国人たちは,”名人戦”は得意ですから。ただし,AI、スパコン、宇宙が”名人戦”型であるかどうかは,私は疑問に思っておりますが…。

”名人戦”型の勝利に酔いしれているうちに,プロイセン参謀本部のシャルンホルトのように,”総力戦”型が有利な分野の研究開発を,目立たないように進めていくことが今後の日本のとるべき技術戦略であると考えています。

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