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2020年09月21日05:25

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《作家は構造不況業種で大半が貧乏であるという構造》

《作家は構造不況業種で大半が貧乏であるという構造》
山本冬彦さんの記事より

《画家として美術界をどう生きていくのか》

美術界で生きていくことがいかに厳しいか、美大の時代への対応がかなり遅れていることを書いてきたが、ならば若い作家や美大生は自ら美術界でどのように生きて行くのかを真剣に考える必要がある。その際に一番大事なことは自分が卒業後どのような進路をとるのかを明確にすることである。美大の学科がまだ日本画、油彩、版画、彫刻などになっていると思うが、それよりも大事なのは自分が卒業後「芸術家コース」、「ビジネスコース」、「カルチャーコース」のいずれを選択するかである。
美術で生きていく訳ではない「カルチャーコース」や「ビジネスコース」でも就職してしまう人は除いて、プロの作家として美術界を生きて行こうとしている「芸術家コース」と「ビジネスコース」の人を対象に、美術界の厳しさと、環境の変化をふまえもう少し詳しく書いておきたい。

《作家は構造不況業種で大半が貧乏であるという構造》

作家の中には国際的にも評価され、ものすごい価格で売買される人もいて、それが作家への夢を追う人を増やしていると思うのだが、冷静に現状を見てみると、作家業と言うのは構造不況業種であり、一部の人気作家以外は貧乏であるという構造をまず、説明しておきたい。

美術界を一つの市場と考えた場合、作家は生産者、画廊が販売者、購入者が消費者と言うことになるが、生産者である作家や作家の予備軍は美大から毎年のように続々と量産される。一方消費者である購入者については、大口ユーザーである美術館や企業はあまり購入しなくなっているし、個人ユーザーは誰も育成していない。一部に活況を呈している現代アートの購入者はアートが好きと言うより投機の対象として見ている人が多いことは何度も述べてきた。従って、アート市場というのは膨大な生産者がいる一方、消費者はごく少数しかいないという意味で異常なほどの生産過剰体制にあり、構造不況業種といっていい状況だ。
これを解消するには生産者を減らすか、消費者を増やすしかないのだが、当面美大はなくならないし、購入者が増えるとも思われないので、構造不況の状態が今後も続くものと思われる。従って、「芸術家コース」を選ぶ人にとっては受難の時代がますます厳しくなると覚悟した方がいい。このコースを選んだ人は昔の芸術家と同様、絵は売れないもの、作家は食っていけないものという前提で、いかにして作家として生きていくか、好きな絵を一生描いて行くにはどうすれば良いかを考えておく必要がある。時代やユーザーに迎合せず自分の求める芸術作品を作り、生前理解されなくてもいつかは評価されるという覚悟が必要になる。しかし、霞を食って生きていくことはできないのだから、支援者やパトロンを見つけるとか、生計を立てる手だてを別途持つとか、どこかでのたれ死にするかもしれないという覚悟を持つとか、それぞれの生き様を考えておくべきだ。
一方、「ビジネスコース」を選ぶ人は、生きているうちに評価や人気が出ないと意味がない訳で、普通のビジネスマンや起業家同様の戦略を立て先述を練る必要がある。今流行のいわゆる現代アート系の作品を描くとか、公募展やアートフェアへ積極的に参加するとか、とにかくマスコミに出て名前を売るとなどのマーケテイング戦略や広報作戦が必要になる。また、自分をアピールするプレゼン能力やコミュニケーション力を持つこと、学芸員・評論家・有力コレクターとの人脈構築、それにきめ細かなファンサービスも必要になる。
いずれにしてもプロの作家と呼ばれるのは芸術家コースを選んだ中で生き残った真の芸術家とビジネスコースで生き残った成功者という一握りの人だけなのだ。真の芸術家として生きて行くには現実の苦労は覚悟しなければ行けないし、ビジネスコースとして生き残るにもアート以外の才能と努力が必要である。ところが大半の作家はビジネスコースの成功者は真の芸術家ではないと言って軽蔑したような態度をとるが、実は自分もなりたいがなれなかったというやっかみやひがみにすぎないことが多い。そのくせ、どこかでのたれ死にしても良いような覚悟で制作していること言うとそうでもないのである。昔ならは、このような人は早々にアート界から退場したのだが、最近はバイトやフリーターをやりながらこの世界にモラトリアムで留まっている人が大量に存在することが構造不況の最大の原因なのである。

一般的に総論として作家が貧乏な理由は、生産者の数に比べて消費者の数がきわめて少ないので、当然一人当たりの収入が少なくなるという構造的なものである。一方これを個別に見るともっと厳しい現実があるが、簡単な図式で説明する。たとえば作家が100人いて、マーケット規模が100あるとすると、一握りの有名作家・人気作家がマーケットの大半を持って行ってしまうため、残りの少ないマーケットをその他大勢の作家で分けることになるからである。従って、作家の世界も一部の超リッチ作家と多数の貧乏作家という2極化が起こっており、今後もますます激しくなると予想される。

若手作家が貧乏であるもう一つの理由はコストと売値の関係にある。従来は学生とか新人作家が発表する場合、作品の大きさにより号当たり日本画ならいくら、油彩ならいくらぐらいが妥当だという相場があり、その価格でないと高すぎるといって相手にされないのだ。そして、その販売価格は作家が制作するコストとは無関係で、材料費がどれだけかかろうが、制作に要した日時がどれだけあろうが、考慮はされないのが通例である。作家が高い材料を使い、何十日もかけて描いたのでそれをコスト計算すると価格はこのくらいでないと元が取れないと言っても、それをベースに発表価格を決めれば高くて売れないのである。つまり、若手作家や無名時代はコストとは無関係に売値が決まっているので、一定の評価ができるまでは原価割れで販売せざるを得ないというのが実態なのだ。従って、若手作家にはこの原価割れの時代をどう乗り越えるかがプロの作家として生きて行くかどうかの試練の時期で、この時期にほとんどの人がプロとしての道を断念するのである。これに対し人気作家となると原価の数倍、数十倍の市場価格で売れるので、作家は莫大な画料を手にすることができるのである。従って、画家というのは一握りの超リッチ作家と大多数の貧乏絵描きという極端な2極化構造になっているのである。 表示を縮小

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