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2020年03月16日20:43

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液体

1926年の本日3月16日マサチューセッツ州オーバーンで起こった

歴史的な出来事は、ロバート・ハッチングズ・ゴダード氏、

アメリカの発明家・ロケット研究者。の日記に

非常に簡潔な文章で記されます。

「液体推薬を使用するロケットの最初の飛行は

昨日エフィーおばさんの農場で行われた。」

人間の腕位のサイズでのロケットは、2.5秒間に41フィート上昇。

これは、液体燃料推進の可能性を実証した重要な実験でした。


しかし1929年の実験では、多くの野次馬が集まり、消防署に通報される事に。

新聞記者に対しゴダード氏は大事にしないように依頼しましたが、

地方紙は「月ロケットは238,799.5マイルの目標を失った」と、

月を目指したロケットが失敗して空中で爆発という内容の記事を掲載。


実際はロケットの残骸は落下の際地面に激突した為で、

予定の高度に達し、実験は成功。

ゴダードは事実を説明したものの、

マサチューセッツ州内でのロケット発射実験が禁止される羽目に。

それでも、ロケットの研究に興味を持った

チャールズ・リンドバーグ氏の推薦により新たな資金援助を得、

UFO騒ぎで有名になるニューメキシコ州ロズウェルに

実験場を移す事になります。

第二次世界大戦時、ゴダート氏はアメリカ海軍のために

ロケット工学の研究を実施、しかし海軍は研究価値を理解できず、

艦載機を短距離の滑走で発艦させるための

補助ロケットを作製させたのみ。

大戦中にゴダード氏は喉頭癌を発病、

大戦終了間際の1945年8月に62歳で死去。

考案・発明した特許は214個に及ぶものの、

ほとんど死後に与えられたものです。

1960年に、合衆国政府はそのすべてをゴダード未亡人から

100万ドルで買い取ります。


先進的過ぎた研究は、マッドサイエンティスト扱いされ、

嘲笑の対象になります。

1920年の論文「高々度に達する方法」で、

ロケットは真空の宇宙空間でも推進できるとの主張に対し、

ニューヨーク・タイムズ紙は、物質が存在しない真空中では

ロケットの飛行が不可能なのは「みんな知っている」、

「高校程度の知識を持っていないようだ」と酷評。


ゴダード氏は科学者やメディアから受けた不当な評価のため

他人を信用しなくなり、死去するまで研究は単独で行う事になります。

彼の死後、ロケットの重要性が認識されるにつれ

ゴダード氏の業績が脚光を浴び、

1959年に設立されたゴダード宇宙飛行センターは彼にちなんで命名。

1969年に、アポロ11号の月着陸の前日、

ニューヨーク・タイムズ紙は49年前に発表したゴダードへの社説を撤回。

ゴダードの実験を「より進んだ実験と調査」と、

「17世紀のアイザック・ニュートンの実験結果を確認し、大気中と同様に

真空中でもロケットが飛行できることは明確にいま実証された。

過ちを後悔する」との社説を発表します。


傲慢な科学者や批評家の虎の衣を借るマスコミは

多くの科学者を権利無く裁いてきました。

ゴダート氏の場合、その魔女裁判の為、

ドイツのウェルナー・フォン・ブラウン氏と正反対の道を歩みます。

ブラウン氏は軍の信頼を得、マスコミの干渉無く、

多くの有能な学者や技術者をまとめ、

数年で宇宙空間に届くロケットを完成させます。

戦後、アメリカで月ロケットに関して決定的な役割を演じます。

本来なら、アメリカ人で、ブラウン氏に先んじて液体ロケットを打ち上げた

ゴダート氏の役割だったはず。


アポロ11号が月に到達した時、SF作家のアイザック・アシモフは

すでに世を去ったゴダードに向かって、

「ゴダードよ、我々は月にいる」という言葉を送ります。

生きている間にこの言葉を聞きたかったんじゃないかなあ、

などと月を見上げてみる訳です。
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