ｴｱｺﾝ

　猛暑である。そんなある日、父の部屋のｴｱｺﾝが寿命を迎えた。『おい、冷えねぇぞ。』仕方なく扇風機をあてがう。しかし、連日の猛暑を鑑みるにこのままでは生命の危機がある気がする。価格.comとか見ても12畳以上用はずば抜けて高い。どうするかな。某Yｵｰｸｼｮﾝで見てみるが、此処で落とし穴が。12畳用以上になると殆どが単相の200Vである。今ついているのが100V用なので電気工事無しの方向で行きたい。熾烈な入札競争の末、大枚20,200円で10畳用を落札する。結局送料が高いので取りに行ける範囲で探した訳である。千葉なら大した事ないだろう。そしてﾄﾞﾂﾎﾞに嵌る。…何でこんなに混んでいるんだよ！唯一信用できる情報源である『翔んで埼玉』では自動車なんて走っていなかったぞ！？一気に400年程進化したとしか思えない街並みに驚きつつ出品者様宅に到着する。お土産までご用意頂いており、唯々申し訳ない。単身赴任終了に付き取り外してきたとの事。ｾﾙﾎﾞ號に積み込み高速代をｹﾁって下道で帰宅する。玄関まで持ち込んだ所で力尽きる。そして翌朝『非鉄屋に売りに行くだか？』と、父。ﾏﾃｺﾞﾗぁ！訳を話すと、感動するかと思いきや『手伝うで直ぐ付けてくれ』ああ、そうですか、そうですよね。夕方帰宅したら付けるよ。そして夕方。今迄頑張っていたｴｱｺﾝのﾎﾟﾝﾌﾟﾀﾞｳﾝを始めるが一向に冷媒が戻った気がしない。試しに配管緩めてみると力なくｶﾞｽが抜けて終了。…冷媒、何処に行っちゃったんだ？こりゃ冷えないわな。全て撤去して背板を壁に取り付ける。あ、水平器が無い。物差しで左右の高さを測り配管出口側にやや傾斜させて取り付ける準備をする。あ、配管配置逆じゃねぇか。巻ﾃｰﾌﾟ再利用出来ないかな？と、解き始めるが劣化しているのでどうしようもない。仕方ない、巻ﾃｰﾌﾟを買ってくるしかないか。巻きﾃｰﾌﾟを外しておく様に依頼してﾎｰﾑｾﾝﾀｰへ。穴埋めの粘土もなかったな。『ｴｱｺﾝ配管の包帯とC4みたいな粘土くれ』。そして帰宅。室内機の配管位置を直して巻ﾃｰﾌﾟを巻いてゆく。柔整師として鍛えた包帯巻きの技術が生きる。室内機の取り付けである。父に室内機を保持して貰いながら配管穴を通す。長い配管だな。足りないよりは良いが、その分冷媒を長く循環させるからあまり良くはないねぇ。室内機を取り付け室外機を運ぶ。絶対無意識だよね？気付かなかったんだよね？父が軽い方を持った事が偶然である事を祈りながら2階に運び上げる。配管が長いので今までの室外機位置よりも遠くの広い場所に設置出来る。げっ！ｺﾝｾﾝﾄの形が違う。L型かよ。20Aだったのかな？じゃあ下駄なら15Aだから問題ないな。壁の電源工事をするか。こんな事もあろうかと、以前解体屋に行った時に入庫していた電設屋の車内にあった電材を買ってあったのでｺﾝｾﾝﾄの在庫を出してくる。化粧ﾊﾟﾈﾙもあったな。さて、高圧側のﾊﾞﾙﾌﾞを開けるか、と、ｶﾞｽ漏れの音！ﾏｼﾞ！？直ぐにﾊﾞﾙﾌﾞを閉じ音のした場所を父と探す。勿体ないがもう一度ﾊﾞﾙﾌﾞ開放、凡その場所が特定出来たので折角巻いたﾃｰﾌﾟを切開する。ｷﾞﾌﾞｽ切るみたいだな。被覆された配管を触診して行くと…あった。おかしな場所発見。被覆を剥がすとｷﾝｸしている低圧配管。だから中古の配管再利用するのは嫌なんだよなぁ。配管ｶｯﾀｰとﾌﾚｱﾂｰﾙと接合金具は全て黒柴山荘に持って行ってしまってある。ﾎﾞｲﾗｰの燃料配管工事終わった時に持って来ておけば良かった…仕方ない、取りに行くか。『やる事ないからついてくわ』父と片道25ｷﾛの道のりをｾﾙﾎﾞ號で走る。『何処にあるか判るだか』そりゃ自分の作業場だからねぇ。ﾏｲﾐｸひごのかみさんに頂いたLED懐中電灯で工具類を探し出す。接合金具は金属ｺﾞﾐ回収の時に何かに使うかも、と分けておいたので直ぐに見つかる。しかし、本当に使う日が来るとは…恐るべし、『こんな事もあろうかと箱』。帰宅しｷﾝｸした配管部分を切断し真鍮のﾅｯﾄを通してﾌﾚｱ加工する。接合金具で繋いでｷｯﾁﾘ締める。漏れるなよ。祈る思いで高圧ﾊﾞﾙﾌﾞを開ける。漏れている気配はない。真空引きしなければならないがﾎﾟﾝﾌﾟを持っていないのでﾏｲﾐｸさんのお兄さんである某電設屋社長に聞いておいたﾊﾟｰｼﾞを行う。どうかな？漏れてしまった分が勿体なかったが、冷媒はｷﾞﾘｷﾞﾘ必要量残っていた様で稼働するｴｱｺﾝ。嗚呼良かった。こうして作業は無事終了。
　そして次の日の夜。父が私室に来る。『こんな暑い部屋に居るだか？涼みに来るか？俺の部屋、涼しいぞ』…喧嘩売ってるのか？