≪鯨波戦争≫
桑名藩主松平定敬の一行は､慶応4年3月30日桑名領柏崎の勝願寺に到着。会津藩が主戦派に転ずると定敬も同調。主戦派に藩論を統一した後､勝願寺を野戦本陣とした。その兵力はおよそ360名ほどで､兵を雷神･致死･神風の各隊に分けた。
柏崎の南2�劼坊瀁箸陵彙呂�ある。柏崎の町に入るには必ず通らなければならない。また鉢崎から鯨波に至る海岸部に沿った街道である。
新政府軍本隊(薩摩､長州､加賀､高田など6藩)約2,500人は黒田･山県両参謀の指揮で､閏4月21日に高田を進発して海道を進んだ。
そのうち先鋒として進撃してきたのは長州藩一小隊､加賀藩一小隊､高田藩一小隊､薩摩藩四番小銃隊であった。兵力はおよそ1000人､途中で兵を二手に分け､黒岩口､谷根口へ向かう部隊と､主力は閏4月26日夜には鯨波の手前の青海川にまで達した。
一方同盟軍は水原陣屋から会津萱野隊と浮撃退で100､衝鉾隊が200､出雲崎から市川勢が60(実際には戦いに参加しなかったという説がある)､そして桑名諸隊が4隊で360､合わせて660の軍勢がイサザ川(前川)の手前に布陣し､さらに砲3門を向山と小河内山に据えて新政府軍の来襲に備えた。
現在国道8号線が通り開削されたが､鯨波駅の南側は当時丘陵地で向山と呼ばれた。この山を背に雷神隊は鯨波の嫁入坂､松浦秀八の致死隊は広野嶺､町田老之丞の神風隊は大河内に堡塁を築いて守った。衝鋒隊200人が黒岩口､会津､浮撃隊､水戸兵が谷根口の守備についた。また現在御野立公園になっている鬼穴岩の山上に桑名藩軍事総督服部半蔵が司令部を構えた。
新政府軍は前川の対岸､現在の龍泉寺あたりに北から加賀藩､薩摩藩､高田藩､富山藩､長州藩という並びで布陣し､その背後､妙智寺の境内を挟むように大砲5門を設置した。※ストリートビュー
26日夜､立見鑑三郎は他の桑名藩の隊長と大雨のなか､小河内山(現在の御野立公園付近)に登り､敵の動きを偵察したが､敵兵の動きはないように見えた。※ストリートビュー
閏4月27日の朝四時頃､鯨波方面でにわかに喊声があがり敵兵が襲撃してきたことを知った。
戦いは銃撃戦と砲撃が中心だった。銃火器で優勢な新政府軍は雨霰のように銃弾と砲弾を撃ち込んだ。対する桑名兵は地理的な優位性を生かし山上から大砲を的確に撃ち込んだ。西洋式軍備を整えたが､実戦での使用経験のない加賀藩兵は恐怖にかられミニエー銃をやみくもに撃ちまくった。しかし弾切れがはじまると､隙をついて町田老之丞率いる神風隊が斬り込みをかけた。加賀兵は多くのけが人と5人の死者を出した。桑名兵は､深追いすることを避け､退却した。
立見鑑三郎率いる雷神隊は､イサザ川(前川)の浅瀬を渡り薩長軍･高田藩兵を抜刀して急襲した。薩長の武士出身でない兵士たちは浮足立ったが､高田藩兵が薩長兵を応援し踏みとどまった。雷神隊は敵中に突出することを避けて撤退した。
新政府軍長州藩報国隊と薩摩兵が､同盟軍側守備を突破し進出した。新政府軍の攻撃を受けた松浦の桑名藩致人隊が劣勢となり､立見ら桑名藩兵は鯨波から一旦兵を後退させ､雷神隊･浮撃隊と共に､小河内山･嫁入坂を拠点に築いた堡塁に身を潜ませた。服部半蔵も司令部を小河内山に上げ､山頂から銃撃をおこなった。
次々と突撃をかける薩長藩兵の先鋒は暴風雨の中､一旦東の輪まで進み番神堂に肉薄した。立見ら桑名藩兵は深く入り込んで進撃してきた薩長軍を横射した。雨足が強まる中､激戦となったが､白兵戦となると長州や薩摩の農民や商人上がりの兵士は､武士の振う刀に恐れをなし､到底太刀打ちできなかった。同盟軍側が優勢を維持していた。
新政府軍の後続部隊の高田兵･加賀兵は鯨波の浜より鬼穴の前まで進出したが､高所に陣取った桑名兵の銃撃に苦しめられ､先鋒に続き進むことができなかった。薩長藩兵は不利な状況を知り､兵の疲労が大きく､七つ刻(午後4時頃)になり､長州の軍監三好軍太郎が青海川以西までの撤退を命じた。
鯨波の緒戦は最初桑名藩兵が苦戦したが､弱冠22歳の立見鑑三郎の指揮で新政府軍を撃退し､夕刻となって同盟軍は番神堂に退いた。
このときの様子を山県有朋が広沢真臣に宛てた書簡では高田兵を褒め､加賀兵を臆病と罵っている。
この戦闘で､長州が戦死2人･負傷7人､高田藩が戦死3人･負傷8人､加賀藩が戦死5人･負傷24人を出した。一方同盟軍では桑名藩が戦死1人･負傷8人を出している。
この戦争でなくなった新政府軍側戦死者は､柏崎招魂所に葬られている。
新政府山道軍が雪峠で旧幕府軍を破り小千谷に進駐､また別働隊が会津預領の小出島陣屋を攻略した報が伝わると､旧幕府軍は退路をふさがれることを恐れ､妙法寺村の超願寺に向けて撤退を始めた。桑名軍は超願寺で態勢を整えた後､5月9日に長岡へ入る。
新政府海道軍は28日､柏崎の妙行寺に本営をおいた。海道軍は町に入る際に民家に向かっていっせい射撃をくりかえしたので､住民に死傷するものがいたという。
鯨波の戦いは弱冠22歳の雷神隊隊長立見艦三郎の名を､一躍世間に知らしめることとなった。
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(Jタウンネット - 06月03日 11:10)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=241&from=diary&id=6105620
≪立見鑑三郎≫
弘化2年7月19日(1845年8月21日)〔生〕 - 明治40年(1907)3月6日〔没〕
激しい風雨の中､口火が切られた鯨波の戦いで､一躍名をあげたのが桑名藩一番隊･雷神隊隊長立見鑑三郎､若干22歳だ。
代々江戸定府の桑名藩士で､少年期より風伝流の槍術､柳生新陰流の剣術の使い手として知られるが､学問も極めて優れていた｡藩主松平定敬の小姓となり､後外交掛となって薩長の士とも交友｡その後幕府陸軍に出向。歩兵第3連隊に籍を置きフランス式用兵術を学ぶ。フランス人教官が舌を巻く程の軍事の異才を発揮した｡
桑名藩領の柏崎へ移ってからは､兵の信望が厚く､実績を買われて投票で雷神隊隊長に選ばれた。
桑名藩兵は北国街道を見おろす鯨波の北に位置する丘陵に､フランス様式塹壕を掘り抜き布陣した。これは立見鑑三郎が江戸で幕府陸軍に出向し､歩兵第3連隊に籍を置きフランス式用兵術を学んだことによって習得した戦法であった。国内の戦場で､初めて実戦で用いられたとされる。
(鯨波の戦い)
大砲･銃器の数と兵力数において圧倒的有利な薩長･加賀藩兵の新政府軍が戦国時代と変わらない戦法で攻撃してくるのに対して､5分の1の兵数の旧幕府軍は地形を生かし､塹壕を利用してゲリラ戦で戦った。未明に始まった戦いは新政府軍が夕方撤退し終止符が打たれた。この戦いで､雷神隊とそれを指揮する立見鑑三郎の名前が広く知られることとなった。
(榎峠･朝日山の戦い)
立見鑑三郎は鯨波の戦いの後､長岡方面に転じた。
5月9日､長岡藩執政河井継之助が､奥羽越列藩同盟に参加し､長岡城中で新政府軍に対する作戦の検討をおこなったが､立見は桑名藩家老の山脇十左衛門と共に出席した。ここで榎峠を奪還する作戦が立てられ､5月10日､奪還に成功する。
5月11日からは朝日山に攻防が移った。大雨のなか､長岡藩兵､会津藩兵､桑名の雷神隊が榎峠を駆け下りて､対岸から銃撃を受ける中､浦柄村を横断して､朝日山に登り陣地を設置した。立見はフランス式塹壕を造り銃撃を行ったが､その時の塹壕跡が今に残る。
長州騎兵隊仮参謀時山直八が奇策をめぐらして､頂上の同盟軍の陣地に迫ると､立見はこれを見破り､全軍に突撃を命じた。長州の時山が戦死すると､新政府軍は総崩れとなった。
しかし､5月19日､長岡城が落城すると､退路を断たれる恐れから､朝日山を放棄し栃尾に撤退した。5月22日には､桑名藩領の加茂にもどり､長岡藩河井継之助や､会津藩佐川官兵衛らと加茂軍議に出席した。
こののち､雷神隊を率いて越後国内を転戦した。8月2日には､西郷吉二郎が負傷し､後死亡した五十嵐川の戦いで､会津藩町野源之助とともに三条に布陣し､西郷吉二郎率いる薩摩藩番兵二番隊を撃退し新政府軍精鋭部隊の侵攻を防いでいる。
後､8月4日､同盟軍本陣のあった加茂で越後最後の戦いをしたのち､桑名藩兵をまとめて会津若松城に赴き､城下の戦いで敗走。出羽国寒河江の長岡山において最後の抵抗をするが､奥羽列藩同盟の中で最後まで抵抗していた庄内藩が降伏した後､明治政府軍に降伏した。
(戊辰戦争後)
降伏後､謹慎していたが､その指揮能力を評価され､請われて明治陸軍入りする。名前を立見尚文に改名し､西南戦争､日清戦争､日露戦争でも軍功を挙げる｡特に日露戦争では第8師団を率いて黒溝台､沙河という激戦を勝ち抜き､戦争の勝利に大いに貢献した｡これらの功績により､旧幕府軍出身者ながら陸軍大将にまで昇進した。
後に内閣総理大臣となった山縣有朋は､海道軍参謀として鯨波戦争を指揮したが､立見に翻弄され､また朝日山の戦いで奇兵隊を率いた友人の時山直八を立見に討ち取られるなど､散々煮え湯を飲まされたことから､立見を何かと避けていたという。
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