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2015年05月15日15:12

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ベルトラン・ド・ビリー指揮都響のデュティユーとブラームス

(5月13日 東京文化会館)
五月の爽やかな風のようなブラームス。ド・ビリー指揮都響の交響曲第2番
は「ブラームスの田園交響曲」と呼ばれるこの曲の理想的な演奏のひとつだった。
冒頭動機から綿密に組み立てられた曲は流れが無理なく自然で、ブラームスが
得意とする対位法の旋律のからみあう様子もよくわかる。どの楽器も突出する
ことなくバランスがよい。ヴァイオリンの響きは柔らかく、ヴィオラ、チェロの
響きも木目調で心地よい。8台のコントラバスの低音もしっかりと鳴る。特に木
管の響きがクリアで、ド・ビリーは他の楽器とのバランスには細心の注意を払い
木管群が際立つように指揮していた。具体的には第2楽章の中間部や、第4楽章の提示部最後の弦のピチカートの上で木管群が8分音符で動きを見せる部分など。金管では第1楽章コーダでのホルンのソロ(首席の有馬純晴)が見事だった。
きわめて見通しがよく、柔らかく美しい響きのブラームスだが、しかしそれは軟弱というものでは決してない。弦と管が激しくぶつかり合う第1楽章の長い展開部や第4楽章のコーダでは力強さと輝かしさがみなぎる。
パリ生まれのド・ビリーだが、長年ウィーンでウィーン放送響と培った経験と彼自身の資質が結びついた確固たるブラームス像が根本にあるに違いない。隅々まで目配せの効いた「ウィーンのブラームス」とでも呼びたいような流麗でさわやかな演奏はオーソドックスであると同時に新鮮で洗練されており、そこにド・ビリーの実力のほどがはっきりと示されていた。
 デュティユーは、ド・ビリーがウィーン放送響と一緒にウィーンで多数の作品を紹介しその名を広めたド・ビリーにとって思い入れのある自国の作曲家で、今回は1959年ミュンシュ指揮ボストン交響楽団で初演された第2番「ル・ドゥーブル」が演奏された。タイトルの「ル・ドゥーブル」は「分身」という意味で、指揮者を囲む12人の小管弦楽とオーケストラの対話やコントラスト、ステレオ効果が見どころ聴きどころになる。無調もあるが旋律やハーモニーもある。
ド・ビリーの指揮は繊細で高貴。ミュンシュの録音のような情念は少ないが、清潔感が感じられる響きが印象的で、第2楽章のチェンバロが活躍するところは前衛ジャズの即興のようでもあり、また終楽章では前半のダイナミックと後半の消え入るような静かな部分とのコントラストや変化の過程が美しかった。
ド・ビリーの指揮はこれからもさまざまな作品で聴きたいと思わせるものがある。ウィーン古典派、ロマン派はもちろん、オペラも演奏会形式でよいから味わってみたいものだ。
写真:堀田力丸/提供:東京都交響楽団

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