(5月9日 東京オペラシティ・コンサートホール)
第2楽章スケルツォが面白かった。飯守泰次郎は東京シティ・フィルのインタビューで「ゲルマン民族的な舞踏音楽のリズムがそのまま出て、他の楽章に対して大きなコントラストを成していることが、ブルックナーの交響曲の特別な魅力になっているのです。」と語っているが、その言葉通り思い切りドイツの田舎風に表情豊かに強調したスケルツォ主題にはごわごわとした質感があり、それが素朴で重々しく味があった。
もうひとつ素晴らしかったのは第4楽章のコーダ。これまで出てきた主題が渾然一体となって輝かしく終わるところ。テンポをやや落として重心低くし、東京シティ・フィルの金管を始め弦も木管も渾身の力を振り絞って総奏するところは盛り上がった。
ただ、全体的には以前の東京シティ・フィルのやや粗い部分が残り、先月聴いた高関健の常任指揮者就任コンサートのような洗練された響きではなかったことが残念だ。ブルックナーの8番が持つ、精神的な世界、現世を超越したような世界を味わうには、霊的な感性が不足した音色。ホルンの不安定さもいまひとつだった。
ソロカーテンコールがあるなど聴衆の反応も熱かったが、フライング気味のブラヴォはいただけない。さきごろのヤノフスキベルリン放送響の8番の静寂までは求めないが、もう少し余韻を味わいたかった。
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