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2021年08月18日06:10

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さよならの夏

NHKBSのドラマ「ライオンのおやつ」全8話を観終えた。

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余命少ない三十路前の女の子が最期をホスピスで過ごす物語であった。主演の土村芳(つちむらかほ)ちゃんはそれまで脇役や単発出演で才覚を放っており、彼女が主役となっただけでそれは嬉しかった。命を削っていく難しい役どころを好演しておりました。かわいい女優さんです。いいドラマでした。お疲れさまでした。

三日前の夜は逗留していた家内実家で夕飯を馳走になってから帰宅したため、家路についたのは夜8時を過ぎてであった。すると自宅マンションからすぐ近くにある今年三月末に閉店した自宅も兼ねる酒屋兼コンビニの横に救急車が停まっており、ほどなくしてサイレンを鳴らして走り出していた。
そこには男やもめのこのふたりが住んでいたはずである。

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もうすぐ傘寿を迎える元オーナーで父親の老人男性と50歳前後になるその息子だ。
このお店住宅街の真ん中にありながら道幅の広い旧道にあるため近隣は通りがかりの車による需要が多く、砂漠のオアシスのごとき繁盛店であった。
なれどオーナーが高齢化とともに認知症の気配が出てきたのと、元々腎臓に持病を抱えていた息子の容態がかんばしくないため廃業を余儀なくされたのであった。
周囲からは閉店を惜しまれたりときに店を閉めるていたらくを責められていたりしていた。

それからおよそ五か月経過した昨朝。このオーナーの急逝の訃報をこの店の元パートで僕とLINEで懇意にしていた女性のY子さんから連絡を得てたいへんたまげた。

店を閉めてからというものこの元店兼家屋にはひと気がなく男やもめどもだいじょうぶか?と心配していたのは僕だけではなかった。
先日の救急車を見た際すぐに懸念されたのは息子の持病の悪化であった。それまでにも入退院を繰り返しており健康不安を抱えていたからである。

だが亡くなったのは息子ではなく父親のほうであった。
Y子さんから聞いた話である。オーナーは閉店して意気消沈したのかふさぎ込んで床に就くことが多く、半分寝たきりであったという。
死因は身体のあちこちに血栓が生じており、それにより脳血栓が引き起こされたというのが解剖医の見立てだとあった。そうであれば寝たきりにより身体を動かす機会を失った末の落命とも考えられる。

であれば閉店による気落ちが結果死につながったと言えよう。そう思い僕もいたたまれなくなり言いようのない悲しみに覆われた。店の命脈が故人の命脈でもあったわけである。

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僕も家内もここに越してきて17年になり、その間この店には世話になった。たいへん近いため、食材を切らした際にはこの店をそれこそ冷蔵庫がわりに利用していて便利であった。そのため閉店してからのこの五か月は不便した。それにも慣れた頃の訃報である。

元来人付き合いが苦手なタイプの親子であり、以前僕もおせっかいを焼いたのが悪いのであったがそのことでちと嫌な思いもさせられた。商売人のくせに人を寄せつかない頑なさがオーナーにはあった。

店のつくりの問題もあったが、自身らが引退しても人を雇って店を存続させるといった考えを持ち合わせていなかった。そうしてくれればという期待が周囲にもあったものだった。結果論であるが、そうしてでも店を存続してさえいればオーナーも以前同様健在であったかもしれないと思わされた。

ままならぬは人生。それでも歩まざるを得ないのもまた人生である。とかく生きるということの難しさを思わされる今回の訃報であった。
Y子さんによれば葬儀は内々で行われるとあった。この親子に親戚づきあいがあったのであろうか。息子一人の野辺送りになるのではないかと懸念している。
お店につきあいのあったY子さんは葬儀が済んで落ち着いてから改めてあいさつに行こうと言っており、その際のごあいさつに僕も便乗したいと考えている。病気を抱えた息子もいちどきの訪問のほうが負担も小さかろうと思う由だ。ようすを見守りたい。

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わが家のあさがおもピークをすぎた感じになってきた。長雨後の今日から晴天になりそうで朝から風が強い。秋風を感じる。一曲。



アラン・パーソンズ・プロジェクトの名盤「ヴァルチャー・カルチャー」から最後の一曲。邦題は「それでも陽は昇る」。故人のご冥福をお祈りします。

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