続々・春の暴君

昨日の昼ご飯はこれだった。



はまぐりのボンゴレスパゲティである。ひな祭りだったので中国産のはまぐりを買ってきたものの、お吸い物にはしないでこれにした。それにしても小ぶりながら中国産は１２粒ほどで税別３９８円だったのに対し、国産のものは大粒ながら３粒で８００円近くしており高額だった。産地はどこだったのであろうか。

年一度しか作らないボンゴレながらちゃんとできた。半ドンで仕事をあがった家内とふたりで食べた。ごちそうさまでした。

一昨年昨年とこの時期に日記に書いた学生クラブ時代のＯＢの暴君Ｔさん、今年も登場である。今回ついに似顔絵ながらモンタージュの登場である。



実物は切れ長の眼と眼光がもっと鋭く狂気を宿らせており恐ろしい。
ある日の昼にまたもこの人が部室にやってきた。手になにやら袋をぶら下げていてそこからＴさんがおもむろに出してきたのが犬缶猫缶鳥の餌そして金魚の餌であった。
そしてＴさん一・二年生の現役学生であった僕らにこともなげにこう言ったのであった。

「これらを味見するのだ〜！！！」。

ああまたもこの人暴挙に出たなと思いつつ命令に従い僕らはじゃんけんをさせられそれぞれが「食べたい」缶詰やら餌を手元に寄せて食べ始めたのであった。僕が当選したのは猫缶だった。ご丁寧にプラ製のスプーンも用意されていたのでそいつで缶詰肉をひとさじ救って口に運んだ。



これがたいへんに生臭く魚肉の腐ったようなにおいであった。そのくせ味がまったくの無味であったので口内でよけいに生臭さが引き立った。いやこれはやはり人間さまの食うものではなかった。

僕がなかば泣きそうになりながら食べているのにＴさんは至極ご満悦であった。そして僕に対して「どうだ？うまいか？」と訊くので彼の機嫌を損ねないよう「絶品です♡」と答えた。するとＴさんそうかそうかと言いながらじゃあ俺様も一口と言って猫缶を僕から奪い取り一口運んだ。

当然旨いはずもないのでＴさんむせてせき込んでしまった挙句、僕の睨みつけながら、

「きさま！ウソついたな！こんなのマズくて食えねえじゃねえか！」

と怒り出したので、僕は恐怖で狼狽しつつもこう返事した。

「いえ、いまは猫の気持ちでお答えさせていただきましたので…」

そう答えてしまったのでこれはまあ逆鱗に触れるだろうなあと覚悟していたところ、Ｔさんあっさりとそうかそうかじゃあ仕方ねえなと笑ったものだった。そしてこう続けた。

「いいか！落語も登場人物の気持ちになって演じることがたいせつなのだ！ヨシ〇を見習え！わかったか！」。

褒められてもぜんぜん嬉しくなかった。
他の皆はめいめい他の「ごちそう」を食べていた。狂人Ｋさんは犬の缶詰を、同期のＮくんは鳥の餌を、もひとり同期のＴくんは金魚の餌をあてがわれた。
犬缶も猫のそれ同様に生臭くて無味であったようだ。鳥の餌も無味ながらけっこう香ばしくてこれはそこそこ行けますとＮくんそれを食い続けておりああこいつはやっぱり鳥の脳みそ以下だったなと思わされた。
いちばん生臭くてひどかったのがやはり金魚の餌のようだった。Ｔくん絶句して脂汗をながしていたものだった。

これだけで済まないのが暴君流であり、なんとＴさんいちおうながらひととおり自分でも各餌を試食して「楽しんで」いたのであった。ここがこの人のすごいところであった。
さにありながら最後には

「おまえら俺様にこんなもん食わせやがって！全員この後処刑してやるから覚悟するのだ〜！！！！！」。

もう無茶苦茶であった。この後は皆しゃべる言葉を指示通りにしろと言われて、僕はお公家言葉でしゃべれと言われ、Ｋさんはペリー提督に成り代わって古代の英語でしゃべれと言われていた。ＮくんはＭ７８青雲語でしゃべれと言われていてそんなもんしゃべれるはずなかろうと思いきや、Ｎくんそれをしゃべっていた。ああこいつもＫさん同様き〇がいなのかと思わされたものだった。ちなみにＴくんは体言止めでしゃべれといわれていちばん話すのに難儀していた。

　

その日の夕方は皆で歌舞伎町に繰り出し、Ｔさんのおごりでしこたま飲み食いさせてもらった。これはご褒美なのか体罰なのかよく分からなかったが皆べろべろのお腹ぽんぽんになったのであった。

動物の餌を食わせるなどは今ではいじめになるのであろうか。当時の僕らでそうはならなかったのはＴさん自身もそれらを試食したところにあったのと、やはりつまりは結果的に皆でいっしょに楽しんだからであったと言えよう。到底よその部活ではありえない僕らは破綻して若者同士であった。あれはあれで楽しかった。もう猫缶は食えないけど。獣医の女傑Ｍさんは猫缶食べたことあんのかなあ？。一曲。



今日は午前中に時間あるからまたりんごのジャムでも作るとしますか(*´ω｀*)。